次は
「ヴォー!早く!こっちだよ!」
ラックは『焼き菓子専門』と書かれた店の前にいた。
「急いでー!」
ラックはアレックのほうへ駆け寄り、腕をつかんで引っ張った。
「ほら、行くみょ。」
「俺は外で待ってるよ。」
アレックは街の景色を見ていたいらしく、付いて行こうとはしなかった。
「えー。一緒行ってみようみょ。いい香りするみょ。」
「待ってるから」
ラックはふてくされた様子だったか、分かった、と言って先ほどの店の中へ入っていた。
ラックが入っていった店の中はクッキーをはじめとしてマドレーヌ、パイ、ケーキ、プディングまであった。表の『焼き菓子専門』ではあまり客が来なかったのかもしれない。
「いい香りだにゃ。」
「いらっしゃいませ。お客様のお好みは何ですか?」
長い赤毛を後ろでひとつに結っている女性が店員のようだ。
「うーん・・・。お菓子ならみんな好きなんだけど・・・。
強いていうならクッキーかにゃ。 」
「クッキーですか!ではこちらの商品などいかがでしょうか?」
店員が差し出したのは一般的なバニラクッキーだった。
「チョコレートクッキーとか無いですか?俺そういうのが好きなんだけど。」
「それでしたら・・・」
店員は違う棚の中にあるクッキーを取り出した。
「こちらはいかがでしょうか?
原産地までこだわった材料で当店で最も優れた技術を持っている者だけに作らせたものです。もちろん味は絶品、口の中でとろけるような味わいがお楽しみいただけると思います。」
見た目ではハッキリとした他の商品との違いは分からなかったが、ラックはそれを買うことにした。
「じゃぁ、これ、3袋下さい。」
「3袋ですか!?」
1袋でも普通の人が1週間で食べきるほどの量である。
3袋は店員にとって衝撃的な数だった。
「うん。おいしそうだし。おすすめなんでしょ?」
「ええ、もちろん。」
「いくらですか?」
「えっと、、、合計で3000フランになります。」
ラックは安くない値段にも物怖じせず、すぐに代金を支払った。
「またのご来店をお待ちしています。」
十分に成長したラックにとっても3袋分のクッキーというものは大きな荷物になった。
アレックは大きな荷物でほとんど前が見えていない状態のラックが現れても気にすることは無かった。
「ヴォーも一枚いる?」
ラックがアレックにクッキーをひらひらと見せながら訊いてもアレックは上の空だった。
何か考え事でもしてるのかにゃ?
ラックはその時そう思ったが、アレックが何を考えているのか、訊くことはできなかった。
夜中の更新となってしまいなした。
眠いです。。。