合流
アレックが翼をしまってラックの前に座った時、ラックは歓喜を表情をなるべく出さないようにするためにかなりの努力をした。
努力はあまり報われることは無かったが、不自然なほどではなかった。
「もう朝ごはんは食べたみょ?」
なるべくなんでもないように装うのが大変だった。
「いいや。」
ラックは鞄の中からパンと卵、先ほどとった木の実のあまりを出した。
「パンでいいかにゃ?」
アレックの答えを聞き終わらぬまま、ラックは火を焚き、上に両手の平ほどの大きさの鉄板をのっけた。今まで一度も使ったことは無かったものだったが、手馴れたように準備をした。
「俺はフィツだみょん。君は?」
ラックは自分でも驚くほど自然に偽名を使った。それに、ラックは普段『俺』なんて使わない。使える場がかなり少なかったからだ。
「俺は・・・分からない。」
アレックは少し考えて少し顔を横に振りながらそう言った。
「何が?」
「自分が誰なのか、何故ここにいるのか。」
ラックはその言葉を聞いてアレックは記憶喪失になっているのではないかと考えた。小さい頃に読んだ本に記憶喪失のことが書いてあり、ラックは興味をひかれて覚えていたのだ。
「そっか。名前も分からないのかにゃ?」
アレックはゆっくりと顔を縦にふった。
ラックは青空を見てから言った。
「じゃあ、俺が呼び名を決めていい?
ほら、名前がなかったら呼びづらいみょ?」
アレックは不思議そうな目をしてラックを見た。
「呼び名がないと困るくらい一緒にいないだろ。」
ラックは危うく自分がここに来た理由を言い出しそうになった。
が、抑えた。
その時、ラックは忘れていた朝食のことを思い出した。
パンの上に焼いた卵と軽く炙った赤い木の実をのせてアレックに差し出した。
「ほら、できたみょ。あったかいうちに食べて。」
「・・・ありがとう。」
アレックが受取ったのを見て、ラックは突然こう言った。
「じゃ、これから『ヴォー』って呼ぶにゃ。
強き者っていみだみょん。 」
アレックはパンを飲み込んで
「別にいいけど。」
とだけ返した。
ラックはほっとして小さなため息をついた。
そして、彼なりに緊張しながらずっと考えてきた言葉を言った。
「一緒に旅に出ないかにゃ?」
これならきっとそう怪しくないだろうと考え出した最上の案だった。
だが、言った後にラックは急に恥ずかしくなった。
「もちろん、嫌ならいいんだけど。
俺ってずっと一人だったから。寂しくなって。誰かと一緒でもいいかな~って。
それに君、翼、持ってるでしょ?
自分以外に翼持ってる人がいるだなんてぜんぜん知らなかったんだ。」
アレックはラックの目をじっと見てから口を開いた。
更新遅れました。。。
ちょっといつもより長くなりました。。。
ご愛読ありがとうございます。