第1話:その造形、画(え)が壊れている
執筆活動始めました。
「……ダメだ。話にならない。画が完全に壊れているぞ」
銀色の薄型魔導端末を片手に、九条は氷のような声を放った。 目の前では、このダンジョンの主。二頭身のちび魔王ルルが、鼻の頭に泥をつけたまま、マントを翻して胸を張っている。
「へへん、見てよクジョー! 罠を掘ってたら水が噴き出したから、いっそ『流れるプール』にしてやったんだ! 暑そうだった冒険者たちに蒸しパンも配って、全員笑顔で帰してやったよ。これぞルル様流の最新防衛術だね。……えっ、なんでそんな顔するの?」
ルルは得意げに笑っていたが、九条の視線があまりに冷ややかなので、次第に声が小さくなっていく。
「……ぼく、もしかして魔王失格……?」
九条は無言のままルルに歩み寄り、その小さな頭を掴んで、クイッと強引に上を向かせた。
「いいか、ルル。お前の今のドヤ顔、眉の角度が2ミリ上がりすぎている。それでは視聴者に『傲慢さ』という不純なノイズが伝わる。お前が売るべきは、背伸びしたガキが必死に虚勢を張る『滑稽な愛らしさ』だ」
「な、なによそれ! オレ様はカッコいい魔王を目指してるんだもん!」
「黙れ。一級の造形には、一級の構図が必要だ」
九条は端末を操作し、魔法の照明をルルの背後から当てた。逆光によって、ルルの丸まった角と、引きずった大きなマントがドラマチックなシルエットを形作る。
「いいか。一過性のブームで終わる『消費』される可愛さなどゴミだ。私が作るのは、10年先でも通用する伝説の構図だ。泥だらけのまま、あごを引いて不敵に笑え。それが『守りたい、この笑顔』という最強の武器になる」
九条は端末の録画ボタンを押した。そこには、九条によって「演出」された、最高に生意気で、最高に愛くるしい「魔王の初陣」が収められていた。
その頃。 暗い部屋で、希望を失った瞳で画面を眺めていたエルナは、その動画に目を奪われた。 完璧な強さを誇示する有名配信者たちにはない、圧倒的な「純度」を持った何かが、画面越しに彼女の心を撃ち抜く。
「……あ、あ。この子……」
エルナは震える指で、初めてのコメントを打ち込んだ。 【応援しています。……次は、もっと深い穴を掘りましょう。コツを教えます】
「……来たな。最初の『ガチ勢』だ。不純物の一切ない、純粋なファンの熱量。これこそがこのダンジョンの維持費(魔力)になる」
九条は満足げに口角を上げた。
「さあルル。配信の続きだ。世界中を、お前の『造形』の虜にしてやる」
「……よくわかんないけど、クジョーの言う通りにすれば、オレ様最強になれるんだな!?」
二頭身の魔王と、偏屈なディレクター。 世界を塗り替える「推し活」の伝説が、今、始まった。
頑張って書いてみます。




