原作では破滅の運命の悪役はーー
理想学園の建て直し後の始業式、登壇には新生徒会長ーー倉石瑞稀が立っていた。
「⋯⋯前生徒会長の川端ことねは、この学校の生徒たちの自由を奪った、私達にとっては罪人です。 ⋯⋯しかし、私は思いました。 彼女は孤独な一人の女性だったと。 ⋯⋯もしかしたら、構って欲しかっただけではないかと⋯⋯」
倉石瑞稀の発言を誰もが、黙して聴いていた。 「そんな訳がない、アイツは唯の悪役女性だ」と、思う者もいたが、なぜか彼女の冷徹な顔を思い出していた。
ーー川端ことねの顔はいつも悲しそうだったとーー
「⋯⋯私があの時、なんとかしていれば⋯⋯私はわかっていたのに⋯⋯」
復帰した保健室の先生ーー今川幸子が呟く。
ーー彼女を昔から知る者として、もっと彼女に構ってあげればよかった。
でも私は当時、あの子といた頃の記憶を思い出したくなかった。
最愛の彼との別れを思い出してしまうからーー
ーー私は、すべてを忘れる様に、我が子のことだけを考える日々を送った。
思い出したのは、彼女の顔を見た時ーー入学式の演説の時だった。
「本当に、私は駄目なお姉さんね⋯⋯」
帰り道、高坂湊と桐原彩乃はお互いに、なにも言えずただ歩いていた。
ーーただの孤独な一人の女性⋯⋯か。 ⋯⋯俺は、なにやってたんだろな。 いつも、近くにいたじゃないか! なぜ、気付かなかったんだろうーー
「湊。 仕方ないわよ。 川端ことねは、湊に対して酷いことをしていたわ。 少なくとも湊は充分頑張ったわよ⋯⋯」
「彩乃。 ありがとう」
二人はまるで、孤独を埋め合うように抱きしめ合うのでした。
「めでたし、だね彩乃。 さあ、成仏の時間だよ」
「はぁ、成仏? なんで私が成仏するのよ」
「え? だっているんでしょうーー二人の貴方が。 『私』は成仏したよーー彩乃も成仏しよ?」
ことねは、今にも泣き出しそうな表情で彩乃を見ますーーまるでこれからお別れをするみたいに。
「ことね? 二人ってなに。 光になって空に消えた?⋯⋯なによそれ」
「だから、ね。 大人しく彩乃に体を返してあげて」
「嫌よ! 私は私なの! せっかく覚醒したのに」
「もう。 ⋯⋯湊も説得して、体を返してって」
「そんな話し、知らないわよ! なによ! 私は消滅しないわ!」
彩乃は逃げるように帰っていきました。 残ったことねと湊は笑います。
「彩乃はまだ別れたくないみたいだね。 しょうがないな⋯⋯」
「まあ、焦ることもないさ。 それよりも帰ろうぜ!」
二人は手を繋いで帰り道を歩くのであった。
「え? 二人? 私は二重人格なの? そうなの私? 答えなさいよ私! 知らない振りをしないでよ! 私!」
「ことねお姉ちゃん。 またお姉ちゃんが一人でぶつぶつ言ってるの」
「もう、困るよね。 ⋯⋯私も頑張って説得したんだけど、彩乃が全然言うことを聴いてくれなくて、多分ね今、もう一人の自分と会話しているんだよね」
「この前も『右手が疼く』とか『覚醒したこれが私だ!』とか一人で騒いでて、心配だよ」
「大丈夫。 私がなんとかするから、安心して舞香」
「ありがとう! ことねお姉ちゃん!」
ことねは、舞香との電話を切り、夜空を見上げる。
ふと、鏡に視線をやると鏡の中には私がいた。
「ありがとう『私』。 これからは、私だけで頑張るからね」
「ことね! ご飯だぞ!」
「うん。 湊、大好き」
「俺もだよ、ことね」
「ねぇ、湊は私と『私』どっちの私が好き?」
「⋯⋯意地悪な質問だな。 両方に決まっているだろ!」
「ありがとう、湊。 私、嬉しいよ『私』を肯定してくれて」
ことねは、湊に抱きつくと静かに涙を流すのでした、それを湊は黙って受け止めます。 そして、二人は結ばれたのでした。




