『理想の信者』4
私は深夜、自らの気持ちを抑えられないでいた。
柳田秀五郎に高坂湊を軟禁したことがバレたのだ。
高坂湊は川端ことねの監視役ーーそれが、奔放に振る舞う私に課せれた条件だった。 監視役を軟禁していたら上から指示が来るのは当然のことだった。
私は、無敵ではなくなったのだ。
「柳田秀五郎⋯⋯気付かれた⋯⋯すべて⋯⋯⋯桐原彩乃⋯⋯のせい⋯⋯」
「⋯⋯処す⋯⋯消す⋯⋯壊す⋯⋯潰す⋯⋯」
「ことね様! お静まり下さい」
「うるさい、うるさい!うるさい?」
「ことね様!お許しを!」
黒装束姿の柳田美月に気絶させられる私。
薄れて行く意識の中で私は、地下で湊と話していたことを思い出す。
「ここの生活には慣れたかしら?」
「⋯⋯」
「また頭の中で、桐原彩乃のことを考えているようね」
「⋯⋯」
「⋯⋯ねえ、ここから出れる方法を教えてあげるわ」
「⋯⋯方法⋯⋯」
「桐原彩乃のことは忘れなさい」
「⋯⋯」
「なに? 簡単なことでしょ? ⋯⋯貴方は私の駒。 忘れたの? 貴方のせいで私が今、こうなっていると言うことを」
ーー貴方が他の女とイチャイチャしてるから私、憎くて堪らないのーー
「ねえ、湊⋯⋯寂しいよ。 私がそばにいるのに、別の女のことを考えるなんて」
「⋯⋯!」
「そう、貴方は川端ことねのお世話係。 ⋯⋯川端ことねから離れられない」
「⋯⋯これ以上、お嬢様のマネをするな! ⋯⋯悪霊ごときが!」
『ハハハ。 傑作だな! やってるのは全部お前の意思なのにな~』
ふふ、かわいい湊。 まだ、私のことを信じているの?
ーーだったらもう少しだけ、夢を見させてあげる。
「ハハハ。 残念だったな⋯⋯高坂湊。 今は、私がこの体の主だ!」
私がそう叫ぶと、湊が悲痛な表情を浮かべる。
ーーいいわ、そのままドン底に堕ちゃえ! ふふ。
次の日の朝、私はいつものように登壇していた。
「今日も一日、規律に基づく生活を送りなさい」
「⋯⋯あの生徒会長。 文化祭は行わないのでしょうか?」
ーーまだ無知な生徒が残ってたようねーー
「⋯⋯ひ、ひぃ。 私はただ疑問に思っただけで⋯⋯ 」
「⋯⋯そう。 貴方の頭の中は、随分と呑気な物のようね」
「⋯⋯入学したする前から聴いていたんです⋯⋯体育大会と文化祭は、この学校⋯⋯土地にとって、そして貴方にとっても大切な行事だと⋯⋯」
「くだらない、説明は終わったかしら? ⋯⋯そんなどうでもいい行事、この学校には必要ないの」
その時だった、あの女ーー桐原彩乃が私の視界に現れた。
「⋯⋯なんのつもりかしら、桐原彩乃」
「もうこれ以上貴方の好きにはさせない! みんな、やろうよ文化祭!」
「⋯⋯面白いことを言うわね。 かわいそうに。 この前、会った時に見逃してあげたから誤解したのね⋯⋯私に逆らっても問題ないと」
「川端ことね! 独裁もここまでよ! これ以上、貴方の好きにはさせないわ」
「ふふ。 桐原彩乃、貴方になにが出来ると言うの?」
「みんな! 文化祭やろうよ! ⋯⋯そして、取り戻そう私たちの学校を!」
『ぬ~力が抜けていく⋯⋯』
彼女から発生した正気が悪霊の力を弱らせる。 生徒達に正気が戻っていくーー
「⋯⋯今日の朝礼は以上よ。 今日も規律に基づく生活を送るように⋯⋯」
私は逃げるように、この場を去ることしか出来なかった。
ーーおかしい! こんなのおかしい! 桐原彩乃! 私は貴様を許さない!
私の心は既に、憑いた悪霊よりも禍々しかった。




