『理想の信者』1
明日は学校の入学式。 制服姿の私は鏡の前に立っていた。
『川端ことね。 いよいよ明日だ! ⋯⋯神よ、もうしばらくお待ちください!』
「⋯⋯お嬢様、明日は学校です、もうお休みになられては、いかがでしょうか⋯」
ーーあの日から、すべて変わってしまった。 私に取り憑いてるコイツのせい?
いいえ、違うわ。 すべて私が自分の意思で決めたこと!
だけど、その呼び方は求めてなかった。 彼の態度が私を苛立たせる。
「貴方はいつから私に意見を言える存在になったの? 貴方は私の駒なんだから! ⋯⋯ねえ、そうでしょう?」
「⋯⋯その通りです、申し訳ございませんでした、お嬢様⋯⋯」
どうして昔みたいに、怒ってくれないの? 湊は私のことが嫌いになったんだね。
でも大丈夫。 この戦いが終われば、湊とまた元通りになるから。
「始まるわ、私の戦いが。 ⋯⋯そう、すべては私の理想の為に!」
理想学園入学式。 私は新入生の代表として演説する。 そこで私は宣言するの!
「初めまして皆さん、私の名前は川端ことねです。 今日は皆さんに挨拶と、お伝えしたいことがあります。 私は次にある生徒会選挙に参戦し、生徒会長になります。 そして、私が生徒会長になった暁には、この学校の規則を変更します!」
ふと、前を見ると、私の方を見て笑い出す先輩達。 面白い冗談だと思っているのかな? ーーこの人達にはわからせないとーー
『ハハハ⋯⋯いいだろう! 力を貸してやろう』
「生徒会長の私による支配。 逆らう者は全員退学! もちろん先生方も対象です。 ⋯⋯そう貴方達はみんな私の駒になってもらいます!」
この悪霊の力は特別だ、言霊が洗脳のように伝わる。 私を馬鹿にしていた人達は、恐怖で顔が強張ってる。
私はその様子に爽快感を覚えたのだった。
「この度は、ご入学おめでとうございます⋯⋯川端ことね様!」
「まあ、そんなにかしこまらないでいいわよ、校長」
「いえ、こうして私共やこの『理想学園』があるのは貴方の力があってこそですから」
「ふふ、正確には私の親がだけどね。 まあ、悪い気はしないわね」
ーー本当、いい気分だわーー
私は、目の前にいる男に微笑む。 ーー彼は私が送り込んだ、操り人形だ。
ほら、上手いこと私のことを褒めてくれる。
「ところで、先日の入学式でお話しされていた件ですが⋯⋯」
「あれね。 素晴らしいでしょう、もうすぐこの学園のすべてが変わるわ!」
その時だった。 校長室にあの女が現れたのはーー
「校長先生、お話しがあります」
「今川先生! ⋯⋯どうかされましたか?」
「どうしたもこうしたもありません! 川端のことです! 彼女を処分してください!」
「⋯⋯あまり大きな声を出すな」
私を処分だなんて物騒な言葉を話すのは誰なの?
私は心の中で不思議な快感を感じた。 私を責める相手を求めていたのだ。
「ふふ、面白い! 誰が誰を処分するですって?」
「川端! 貴方なにをしているの? ここは、校長室よ! 貴方が腰掛けているのは校長の椅子です。 今すぐ立ちなさい!」
「まあ、おっかない、おばさんだこと」
「誰がおばさんですって! 私はまだ三十も超えてない!」
「今川先生、落ちついてください」
今川先生ーー何故か彼女を見て、懐かしい気持ちが込み上げて来た。 昔、彼女とは会ったことがあるのかな?
私は、スマホを手に取り調べ始めた。
「川端、今は先生と話してる最中でしょう!」
「はいはい、待ってくださいね⋯⋯ありました。 すみません、お待たせしました。 ⋯⋯今川幸子さん」
「なんですか、突然!」
「今川幸子⋯⋯シングルマザーですか、小学生の息子さんがいらしゃるようですね」
「⋯⋯なによ。 そんなの今は関係ないでしょう!」
今川幸子ーー彼女は私の母の知り合いだった。




