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原作では破滅の運命の悪役女性! ⋯⋯でも色々違う気がします?  作者: Masa(文章力あげたい)


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4/11

桐原彩乃の戸惑い

 夜の住宅街のとある一軒家の部屋の中、一人の女性ーー桐原彩乃がノートを見ながら、悩んでいた。 彼女は今日の一日の出来事を、信じられない気持ちで過ごしていたのだ。 


 「どうして? ここまで、原作とまったく一緒だったじゃない! なんで今日は違うの!」

 「⋯⋯お姉ちゃんどうしたの? いつもブツブツうるさいけど、今日は一段と変だよ?」


 隣の部屋から心配した、妹の舞香がやって来たが、相手をする気持ちにはならなかった。 動揺する気持ちが彼女の心を支配する。 今の彼女の心にあるのは、恐怖だった。


 「こんなはず⋯⋯そうよこんなはずは⋯⋯」


 そう言いながら、彼女は一心不乱にノートの文章を読む。 ーー彼女が記憶を取り戻した時に書いたノートを。


 

 『理想学園』と言う題名の小説があった。 彩乃の前世はその本を読んだ記憶がある。 何回も読み直し、高坂湊の境遇に涙した。 


 そして彼を、悪役生徒会長『川端ことね』の支配から救い出し、そして学校を救うと言う展開に喜んでいたことを思い出す。


 小説では、学校は彼女によって支配され、私たち生徒は川端ことねの駒の扱いを受けていた。 先生たちは、校長も含め、何故か彼女に媚びる態度をとるのだった。 一部反抗する先生もいたが、次の日には居なくなってしまった。 代わりに別の何者かが当たり前の様にいたのだ。 

 

 ーーそれはまるで、最初からその存在、その人がいなかったようにーー


 次第に彼女に逆らう者は居なくなった。 生徒たちは逆らうと次は自分も消えてしまうと理解したのだ。 


 そして、川端ことねを筆頭に学校は支配されたーーすべては彼女の理想のために。


 しかし、それに反抗する女性が一人いたのだ。 それが私『桐原彩乃』だった。


 最終的に、全校生徒の前で川端ことねと桐原彩乃は対決ーー見事に桐原彩乃が勝利を納めるのだが、それは本当の『理想』と言う名の化け物との始まりでしかなかったーー


 

 私は中学生のある日、突然記憶を思い出した。 突然流れてくる前世記憶、ヒロインである私の宿命、これからの人生の恐怖などが、押し寄せて来た。 私はその恐怖にうずくまることしか出来なかった。


 嫌だ! なんで私が? 怖い! 嫌だ! どうしよう? 頭の中小説の展開が浮かび、離れない。


 誰かに相談したい、でもそんなことを言ったところで、病院送りにされて、頭のおかしい奴扱いされるだけで事態は変わらない。 私は心の中で叫んだ「お願い誰か助けてよ⋯⋯」と。


 いつまで、俯いていたのかわからない。 気持ちはまったく落ち着いてはいなかった。 それでも、私は気付ば新品のノートに書き殴るように思い出した小説の展開を書いて行く。 涙で前が霞んでも書き続けた。


 やがて出来たノートを大事に抱え込み、私は気絶するのだった。 気がつくと部屋の布団の中にいたーーいつの間にか家に戻っていたのかーー手には書いたノートを持っていた。  


 しかし、書いていた時の焦燥感がなくなっていて、何故か心が暖かい。 不思議に思いながらも、私は頑張ろうと思ったのだった。


 それからはノートを確認しながら、原作と同じ従順を辿っていった。 すべて上手く行く、私は出来ると言い聞かせながらーー しかし今日、私の予想は裏切られたのだ。

 

 「川端ことね! ⋯⋯なによアイツのあの態度!」


 私が恐怖していた対象ーー川端ことねは、ことごとく原作と違う行為をしていた。


 入学式の時、私は彼女を見つけた時、心臓が止まりそうになった。 彼女が私の宿敵。 これからなんだ、私の学校生活は! と思っていたのにーー 彼女は高坂湊にべったりとくっつきながら歩き、席も隣に座ったのだ。 式の間も居眠りする彼女。


  そして一番衝撃だったのは、彼女が新入生代表ではなかったことだ。 


 原作では彼女は、あの場で全校生徒や先生たちに宣戦布告をしていたのに、出て来たのはまったく知らない女。 そして、その本人は「湊~スキ~」とか言いながら高坂湊に寄りかかっていた。


 その後のクラス分けでも、一緒のクラスになって喜んだりしてーーこれじゃまるで私が馬鹿みたいじゃない!


 「こんなの、許すはずないわ! 川端ことね! ⋯⋯明日貴方の本性を暴いて見せる!」

 「大丈夫? お姉ちゃん? 病院に行く?」


 月明かりの空の下、街の夜は静かにふけて行くのであった。

 



 

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