美紀子の過去の思い出
「調査の結果⋯⋯桐原彩乃の母親である桐原善子は、代々その村の中で悪霊払いを生業とする一家⋯⋯桐原家の子供として産まれた。 桐原の血を継ぐ者は、生まれた時から霊感が強く、悪霊の気配を感知出来るようだ」
「彩乃も、その血を引いているのか⋯⋯」
「そうだ。 産まれた子は、親の指導を受けて、悪霊を退治する方法を学ぶ」
「⋯⋯と言うことは、彩乃や舞香も指導を受けている訳だよな」
「ところが、彼女たちは母から、指導を受けていない」
秀五郎はそう言うと、手元にあるお茶を飲む。 その間、健太はその様子をじっと見つめていることしか出来なかった。
「なに⋯⋯理由は簡単だ。 桐原善子が教える義務を放棄しただけのことだ」
夏休みの昼間、善子といつも通り、のんびり景色を観ながら話しをしていたんだ。
ーーと言っても、のんびりとしていたのは、私だけだったね。
「美紀子! 最悪だよ! 修業とか、鍛錬とか、興味ないっての!」
「まあまあ善子、おばさんは善子の将来を考えて行動してるんだから」
「将来? ⋯⋯決めたわ美紀子! 私、ここを出て行く!」
最初は、いつもの愚痴だと思ってたんだけどね。 その日からあの子、毎日勉強するようになってさ。
それでさすがに、私や周囲が焦り出してね。 ある日おばさんーー美紀子の母さんと美紀子が大喧嘩さ。
「お前! この村から出さん! お前は一生この村で過ごせ!」
「はぁ! 意味わからない! どうしようと私の自由じゃない!」
「自由なんてお前にはない! この村から出たら後悔するに決まってる!」
最終的に、二人とも拳を振ってたよ。 さすがに私たちが、それは止めたけどね。
「あり得ないんだけど! なにが、『村を出たら後悔する』よ! もうここには居れないわね」
「はいはい、善子ちゃん落ち着いてのんびりしようさ」
「のんびりってね! ⋯⋯いいわね貴方はそうやってボーっとしてさ」
「だって、私には善子ちゃんがいるからさ。 ⋯⋯いつもなんだかんだ、いいながらこうやって一緒に居てくれるから」
「⋯⋯ふん。 別に家にいたら親がうるさいからだし、貴方のためじゃないわ」
口ではそう言ってたけど、彼女の顔の赤み具合は暑さや日焼けじゃないよーー
「まあ、なんだかんだ言いつつ善子は、ずっと私とのんびりしてたってこと」
「お母さん、そんな性格だったんだ⋯⋯全然知らなかったよ」
「でも、結局村から出てないよね? 気が変わったんですか?」
「ふふ、夏休みが終わって二学期になった時、都会から転校生が来てね⋯⋯」
「分かった! それがお父さんだ!」
舞香がそう言うと、美紀子は「正解!」と返したのだった。
「都会に出ることだけが自由じゃないんだよね」
「それなのに、私とお姉ちゃんは今は都会で暮らしてるね!」
「まったく、皮肉なのか、それともただの時代なのか⋯⋯」
「運命って思わない?」
ことねがそう発言すると、彩乃の目がガっと開いた。
「⋯⋯そうよ、そうよ! これは運命なのよ、さすが予定調和だわ! 原作がもたらした矛盾はこれで解決されたわ!」
「どうしよう、ことねちゃん。 お姉ちゃん、またおかしくなったよ⋯⋯」
「そっとしてあげて。 ⋯⋯しばらくすれば戻ってくるよ」
「⋯⋯そうして出来た二人の子、彩乃と舞香。 母は親への反抗か、自分意識か不明だが、除霊の術を教えなかった⋯⋯と言うことだ」
「親父、伝授しなかった理由は分かった。 しかし、彼女たちはなぜ、ここで暮らしているんだ?」
「⋯⋯聞いても、気分がいい話しではないぞ。 次に彼女に会ったとき、お前に動揺や同情が起こるからな。 健太⋯⋯気があるんだろ? 彼女に」
「⋯⋯それでも、俺は気になる。 聴かせてくれ親父!」




