憑依? ただいま! 会いたかったよ!
ここは理想学園の地下。 ここで生活するを送っている、一人の男性がいました。
彼ーー高坂湊は、自分がどれくらいの間、この場所にいるのかわからなくなっていました。 日差しの入らない、この場所で彼はただ生かされているのです。
彼の頭の中に、彼女ーー桐原彩乃のことが浮かびます。 彼女が入院している病院に行き、彼女に会うことが、彼の生きがいになっていたのです。
今頃、どうしているだろうか? 俺のこと心配してくれているかな?ーー
そう考えていた時、部屋のドアが開きます。 そして、中に入って来たのは、自分にこの生活をさせている女性ーー川端ことねでした。
「ここの生活には慣れたかしら?」
「⋯⋯」
「また頭の中で、桐原彩乃のことを考えているようね」
「⋯⋯」
「⋯⋯ねえ、ここから出れる方法を教えてあげるわ」
「⋯⋯方法⋯⋯」
高坂湊の心に一瞬、希望が芽生えました。 しかし次の言葉で消え去りました。
「桐原彩乃のことは忘れなさい」
「⋯⋯」
「なに? 簡単なことでしょ? ⋯⋯貴方は私の駒。 忘れたの? 貴方のせいで私が今、こうなっていると言うことを」
川端ことねは、当然の事実を告げる様に、高坂湊に擦り寄ります。
「ねえ、湊⋯⋯寂しいよ。 私がそばにいるのに、別の女のことを考えるなんて」
「⋯⋯!」
「そう、貴方は川端ことねのお世話係。 ⋯⋯川端ことねから離れられない」
「⋯⋯これ以上、お嬢様のマネをするな! ⋯⋯悪霊ごときが!」
高坂湊の発言を聞き、川端ことねーー悪霊が、彼に向かって笑いだす。
「ハハハ。 残念だったな⋯⋯高坂湊。 今は、私がこの体の主だ!」
それからしばらく地下の中で、川端ことねの笑い声が続くのでした。
「いいか、美羽! 絶対に食費はメモを取るんだぞ! 後夜遅くに、湊くんを起こして『夜食が食べたいですわ』とか言うんじゃないぞ!」
「もう、パパったら。 わかっておりますわよ。 夜食は自分で作りますわ!」
和馬は頭を抱えた。 娘は最近、自炊を覚えてしまったたらしい。
しかも、食欲は更に増しているようで、食費はこちらが出しているが、材料を勝手に使われて、湊くんが困っているのではないかと心配だった。
「⋯⋯とにかく、迷惑をかけるんじゃないぞ。 気おつけてな」
「はい! しっかりと、ことねの世話をいたしましてよ!」
二人が話している姿を、ことねは微笑みながら見ていました。
ことねにとって今回のお泊まりは、大成功でした。
お祭りの雰囲気も、屋台の食べ物も美味しかったし、花火も綺麗だった。
でも、それよりもことねが嬉しいのはーー
「ことね! 家に帰るのですわ!」
「ふふ、⋯⋯わかったよ、美羽ちゃん」
「バスがもうすぐで来ますわ! 今ならダッシュで向かえば間に合いますわ!」
朝の日差しの中を、あの時の様に二人で競走しながら、帰るのでした。
「おかえり。 二人とも、そんなに息を切らして⋯⋯元気だなぁ、お前たち」
「湊! ただいま! ずっと会いたかったよ!」
「⋯⋯毎日電話でずっと、話してただろ。 寝落ちする時は通信を切ってくれ」
「え! 湊の声を聴きながら、寝るのが最高なのに⋯⋯でも今日からは必要ないね! だって生の湊がいるんだもん!」
そう言うと、ことねは湊に抱きつくのでした。
「ふう、湊くん、ただいまですわ。 ⋯⋯さっそく台所を借りますわね」
「コラ! なに、お手洗い感覚でご飯を作るつもりだ! ⋯⋯もう作ってあるから一緒に食べようぜ」
湊がそう言うと、美羽は嬉しいそうにかけて行きました。
ーーアイツ、変わったな。 いままでは、ことねの前では食事のことなんて一言も話さなかったのに。 本当にことねと仲良くなったんだなーー
湊は、それが嬉しくて微笑みます。
「あ! しまった!」
「どうしたんだ、ことね?」
「湊の負担の軽減のために、おとなしくしておこうと思ったのに⋯⋯忘れてた!」
「負担軽減?」
「そうだよ! 美羽ちゃんのお父さんから聴いたんだ! ⋯⋯湊、大変だったんだよね。 だから⋯⋯寂しいけど、スキンシップは控えめにするね⋯⋯」
「え! ちょっと待って! そんなことないぞ、ことね!」
その後、湊がことねのスキンシップが好きだから、今まで通りでいいと伝えると、喜んで、湊を抱きしめることねなのであった。




