悪夢の始まりの入学式! 眠いしヒマだなぁ~
ーー翌朝
「ことね、起きて。 遅刻するよ」
「もう、食べられないよ~むう」
聞き慣れた優しい声に目を開けると、エプロン姿の湊がいた。
「うぅ⋯⋯好き、あと五分寝かせて~」
「⋯⋯そんなこと言って。 その五分が三十分になるんでしょ」
「じゃあ、代わりに抱きしめて!」
「⋯⋯はいはい、起きようね!」
彼は呆れた様に急かすが、ことねは本気だ。 彼女は今、のんびりした朝が愛おしかった。
頭のどこかでわかっている。 学校に行けば、彼女がいるーーこの世界のヒロインが。
「⋯⋯湊は私のものなんだから、絶対に渡さないもん⋯⋯」
「はいはい、わかったから行くぞ!」
そして、二人で朝のひと時を過ごした後、学校へ向かう。 新生活の始まりである。
「うぅ⋯⋯まだ? 校長、喋りすぎじゃあない?」
「ことね、静かに。 入学そうそう怒られちゃうよ」
入学式の最中、後列の席で寝ぼけることね。 制服のリボンが少し曲がっているのに気づかず、うつらうつらと、まどろんでいた。 目の前の光景に違和感を覚えるが、考え込むでもなく、ただぼんやりしていた。
そしていつの間にか夢の中へ落ちていくのであったーー
「新入生代表 川端ことね!」
「はい」
司会者に呼ばれ、川端ことねは前に立つ。 この場で新入生として学校に従順するのが常だ。 しかし、彼女は違った。 緊張しているのかーー違う、まるで彼女はこの学校と言う、世界に対して反抗しようとしているのだ。
「初めまして皆さん、私の名前は川端ことねです。 今日は皆さんに挨拶と、お伝えしたいことがあります。 私は次にある生徒会選挙に参戦し、生徒会長になります! そして、私が生徒会長になったあかつきには、この学校の規則を変更します!」
川端ことねの突然の発言に響めく会場。 ある者は隣と見渡したり、また別の者は彼女を馬鹿にする始末。 会場は混沌の場へと変化したのだ。
「生徒諸君、落ちついて下さい⋯⋯川端さん席にお戻り下さい」
司会者がそう周りを宥めたり、川端ことねを退場させようとする。 しかし、彼女は聞く耳を持たず、続けてこう言ったのだった。
「生徒会長の私による支配。 逆らう者は全員退学! もちろん先生方も対象です。 そう貴方達はみんな私の駒になってもらいます!」
川端ことねの発言に冗談だと言うことは出来たはずだーーしかし、会場から笑いの声が消え、代わりに漂う雰囲気は恐怖であった。
これが後に伝わる悪夢の日々の始まりだったーー
「であるからして、私はこの学校でやりたいことリストをですね100個ぐらい書いて来たので読みあげますね」
「倉石さん、席にお戻りください」
「え~そんな⋯⋯この日のために夜しか寝ないで書いたのに⋯⋯そうだ!掲示板に貼ろ!」
ことねが寝ている間に新入生の代表の挨拶が終わったようだ、隣にいる、湊に話しかける。
「ねえ湊、式って⋯⋯こんな感じで終わるの?」
「いや多分特殊だと思うよ⋯⋯」
「ふぅん、これなら私も難しいこととか考えなくて済むね~」
ことねは学校が終わった後のことを、のんびりと考えてるのであった。
放課後、入学式が終わり下校する生徒たちの中に彼女はいた。 ーー桐原彩乃この世界の主人公である。
「⋯⋯違う⋯⋯」
彼女がつぶやく声は、他の生徒たちの声で聞こえで消えたのであった。




