協議? お泊まりだよ!
健太の指示により、深夜の柳田家に彩乃は訪問することになった。
「また日を改めて」と言ったが、これからじゃないと駄目だと言われ、おとなしく従うことにーー
ここに来るのは、まだまだ先の話しのはずだったのにーー
まさかの事態に、驚く彩乃だった。 屋敷に到着した健太は、チャイムを鳴らす。
原作では、抜け道を使って入ってたのに、普通に入れることに彩乃は、安心感を覚えた。
「はーい⋯⋯健くん! 遅かったのね」
「ただいま! お母さん!」
「えぇ! 嘘でしょ!」
原作では、存在しないはずの母親の登場に驚く彩乃。 健太の後を追ってついた先は、応接間だった。 襖を開けると中にいたのはーー
「遅かったね! 彩乃ちゃん、こんばんは」
「健太、遅かったじゃないか。 みんな待ってたぞ!」
「お姉ちゃんも遊ぶ? みんなでカードゲームしてたの!」
秀五郎とことねと、そして何故か舞香がいたのだったーー
「⋯⋯それで桐原健太さんに連れられて、訪問した次第です」
「理解した。 確認後、対処しよう!」
「はい、おねがいします」
「彩乃ちゃん、話し終わった? 疲れたよね! おいで!」
秀五郎と健太の三人で協議している間、置き物の様にしていた、ことねが彩乃に抱きついた。 彩乃はことねに体を預ける。
ーー必死の山登り、柳田秀五郎との協議、疲労と緊張がピークに達していた。
そんな彩乃を、ことねは、お姫様抱っこで運んで行く。
「お先に失礼します。 おやすみなさい」
「ことね様は力持ちだな」
「⋯⋯親父、今の彼女の話しどう思う?」
すると、にこやかだった顔が変わり、深刻な表情を浮かべる秀五郎。
「俺は、嘘をついていると思った。 ⋯⋯本当のことを話していない奴の特徴が、彼女には全て該当した」
「儂もそうじゃが、すべてが嘘と言う訳ではあるまい。 しっかりと確認して、ことにあたらんとな。 使いよ!」
「はい! ご要望は?」
「桐原家の身辺調査、祠の警備配置」
指示を受けた使いは、任務を果たす為に飛び出して行ったーー
「はい、到着ですよ、彩乃ちゃん!」
「すごい! ことねちゃん力持ち!」
「ことねちゃん、布団の準備出来てるからね」
「すみません、突然来たのに、準備していただいて⋯⋯」
「こちらこそ、健ちゃんに呼ばれたんでしょ? 突然、呼んでごめんなさい」
時は戻り、今川先生と大人の女性について勉強した後、ことねは家に帰っていた。
「二人とも、ただいま! 遅くなっちゃた!」
「ことね様、次に出掛ける時は一緒に行きたいです!」
「ことね、おかえり! なにしてたんだ?」
「ふふ、私は、大人の女なの! 秘密なのだわ!」
ことねは、湊の方を向いて、口に人差し指を当て、ウインクとポーズを取る。
「⋯⋯どうしたんだ、ことね? 頭が痛いかのか?」
「大人の女は秘密と嘘だらけなの!」
「ことね⋯⋯駄々を捏ねても、お小遣いはあげないぞ!」
「ことね様、後で湊くんには説教しますから」
「美羽! なんでだよ!」
愕然とする、湊をスルーして、大人の女を演じたことねは、ご機嫌でした。
その後、三人で仲良く食事をして、のんびりしていました。 その時、健太からDMが届きました。 ことねは、湊に伝えます。
「健ちゃんが、今から家に来いだって。 彩乃ちゃんも行くからだって」
「こんな夜中に呼び出しか⋯⋯まあ仕方ないか」
「マイマイにも、連絡完了っと⋯⋯じゃ出掛け来るね! 美羽ちゃんと二人きりだから手を出し放題だね! でも⋯⋯私を一番愛してね!」
「おい!⋯⋯ちょっと待ってくれ、ことね! 誤解なんだ、俺はことねだけが好きだから!」
ーーこうしてことねは、柳田家にやって来ました。
「あれ、私、気絶していた?」
「お姉ちゃん! やっと、目を覚ました!」
「こんばんは、初めまして、柳田美月と申します」
「あ! こんばんは、桐原彩乃です⋯⋯」
彩乃は疑問に思った、どうして彼女は存在しているのかーー
ことねは、彩乃に向かって口に人差し指を立ててウインクした。
「なに? どうしたの? 体調悪いの?」
「彩乃ちゃん、大人女性には、秘密があるの! 細かいことは追求したら駄目!」
「な! 私だって、充分大人よ!」
二人が仲良くしている姿を、ニコニコしながら眺める柳田美月さんでした。
深夜の川端ことねの家で、川端ことねの顔をしたナニカは、いつものように、鏡の前で佇んでいました。 しかし、今日は様子が違いました。
「柳田秀五郎⋯⋯気付かれた⋯⋯すべて⋯⋯⋯桐原彩乃⋯⋯のせい⋯⋯」
鏡に向かって狂乱する姿は、満月と重なって、まるで狼のようでした。
「⋯⋯処す⋯⋯消す⋯⋯壊す⋯⋯潰す⋯⋯」
「ことね様! お静まり下さい」
「うるさい、うるさい!うるさい?」
「ことね様!お許しを!」
川端ことねを抑えていた、黒装束はことねを気絶させました。
「もうすぐ、時が来る、もう少しの辛抱です、ことね様」
黒装束は消え去り、後には倒れたままの、彼女だけが残されました。




