捜索! 山頂の祠へ
彩乃は山頂へ向かう山道を、歩いていました。 山のどこかに祠があるはずーー
原作では、忘れられた祠に大昔、封印された悪霊が、川端ことねを操っている黒幕の正体だった。
しかし、現在のことねはどう見ても、操られている様には見えなかった。
ーー今頃、あの祠がどうなっているか、調べなきゃーー そう彩乃は思い、一人で山頂を目指します。 リュックは背負っていますが、登山をする格好を彼女はしていませんでした。
道中で転んだのか、彩乃の体は既に、汚れていました。 道中も見落としがないか、確認するために、周りを観察していました。
ーーしかし、彩乃は後方は気にしていませんでした。 彼女の後ろを気付かれない様に、見守る黒装束がいることをーー
「お散歩楽しいな~。 夏休みは、何をしようかな? 美羽ちゃんと買い物へ行ったり、みずちゃんとマイマイとゲームしたり、彩乃ちゃんとカフェでお話しするのもいいかも!」
ーーでもやっぱり一番は、湊とイチャイチャすることだよね!
ことねは、彩乃が登山をしていることを、知らずにのんびり散歩をしていました。
彩乃が敢えて言わなかったのは、彼女が物事を一人で抱えて込む性格だからですが、ことねが一緒について行ったら、探索が出来ないと、思われたからですがーー
そんな裏事情を知らない、ことねは、ぼんやり街を歩いていると、かわいい猫に出会いました。
「猫ちゃんかわいいね!」
ことねが、猫を撫でると、かわいく鳴いた後、ゆっくりと離れて行きました。
「ふう、癒されるね。 ⋯⋯原作では今頃、生徒会長になっているんだよね! しかも、生徒会のメンバー、私一人だよね! 大変そうだなぁ~、生徒会に入らなくてよかった!」
ことねは、近くのベンチに座ります。 そして、ぼんやりしているとーー
「あら、ことねちゃん! こんにちは!」
「こんにちは! 今川先生!」
「のんびりお散歩中? ⋯⋯ちょっとお話しいいかな?」
そう言うと、今川先生は、ことねの横に座りました。 そして、しばらくの間二人はお互いに、見つめ合いました。 その後二人は笑い合いました。
「本当に、かわいいわね、ことねちゃん!」
「え! ⋯⋯まさか先生! 私を狙ってます?」
「さあ、どうでしょうね。 ⋯⋯ところでお母さんは元気?」
「はい、毎日連絡を取ってますよ! ⋯⋯それがなにか?」
ことねが聞くと、今川先生は口に人差し指を当てました。
「大人の女は秘密が多いものなのよ、ことねちゃん」
「なるほど! 勉強になります! 私も大人の女を目指します!」
「ほほう⋯⋯なら、私の振る舞いを参考にするといいわよ!」
夕焼け空の中、しばらくの間、会話を続けた二人でした。
「暗くなって来ちゃった⋯⋯ でも山頂まで、もう少し!」
彩乃は、薄暗くなって来た道を、ライトで照らしながら、歩きます。
途中、祠はありましたが、目的の祠ではありませんでした。
山頂へと辿り着いたのは、日が完全に沈んだ後でした。 彩乃はあたりを見渡します。 管理する人がいないのか、雑草が伸び、石像が傾いていたりと、荒れ果てていました。 そして、ついに目的の祠を発見しました。
彩乃は、祠に近づき、様子を確認します。 ぼろぼろの祭壇に、今にも剥がれそうな札を目にした時、彩乃は確信しました。
ーーやっぱり、本当だったんだ! だったらなんとかしないと!ーー
彩乃が、祠に手をかけようとした、その時ーー
「桐原彩乃! 今すぐにここから離れるぞ! ⋯⋯ここは危険だ!」
「黒装束! 既に悪霊は復活して!」
「いいから! 早く!」
彩乃は黒装束の言う通りに、祠から離れました。 そして、黒装束ーーどこかで聞き覚えのある、男を見つめます。
「次は、私の番です! ⋯⋯貴方は何者ですか?」
「俺は、柳田健太。 ⋯⋯驚く所だろ、ここは!」
そう言うと彼は、フードを捲り、顔を現しました。
「⋯⋯とにかく、帰るぞ! お前には、色々聞かないと、いけないことがある!」
「はい、私も貴方に用がありましたから⋯⋯」
彩乃の言葉を聞き、驚く健太なのであった。
ーー夏の教室は地獄だ! いや、地獄なのは、今の状況かーー
周りを見渡せば、見えるのは、ゾンビの様な表情をした奴らばかりだ。 そんなことを考えている、俺も人のことは言えないが。
しかし、その中に一人だけ目の色が違う女性がいた。 俺は思い出す。 初めて彼女ーー桐原彩乃にあった日のことをーー




