宿命? 仲良くなり過ぎる二人
休憩の昼前、ゲームセンターにて、瑞稀は対戦型のゲームをしていた。 相手は機械ではなく私と同じ人間である。 パンチを連続で繰り出し、必殺技の爆裂拳を繰り出すが、相手にガードされてしまった。
ーーコイツ出来る、思わぬ強敵に瑞稀の腕が震えた。
その後も応戦は続き、ドローの最終決戦へ。 瑞稀はここで勝負を仕掛けた。 ジャンプからの斜めキック! 相手は退けぞる。 やったか? 瑞稀は勝利を確信した。 その時、相手が退けぞりの姿勢で、ダブルキックを繰り出した。 瑞稀は不意を突かれ、ノックダウン。 負けてしまった。
勝負に負けた悔しくさはあるが、手汗握るバトルを体験した瑞稀は、対戦相手に握手を求めるために、相手の元に向かう。 しかし、そこにいたのは瑞稀の、クラスメイトの川端ことねだった。
「え! 委員長! こんなところで会うなんて⋯⋯」
「こんにちは、川端さん」
二人の間に気まずい、雰囲気が流れる。 実は二人とも、同じクラスなのに、タイマンで話したことがなかったのだ。 この前の体育大会だって彼女は、司会をしていたから、力を合わせて何かをした訳ではない。
川端ことねは、困っていた。 何故なら原作では彼女は、登場しない。 しかし、彼女の立場はどう考えてもモブにしては、目立ち過ぎている。 しかも、ことねにとって彼女は、委員長と言う印象しかない。 そんな彼女がここでなにをしていたのだろうか?
「えっと⋯⋯委員長、今日はいい天気ですね」
「⋯⋯川端さん、すごい闘いでした!」
「闘い? ⋯⋯ああ、委員長も見てたんだね」
「握手してください、川端さん!」
「え? うん、わかった!」
こうして、満足する瑞稀と、理解出来ていない、ことねの二人は握手するのであった。
「やっぱり! あのシーンは熱かったよね! みずちゃん! さすがわかってる!」
「ことねちゃんこそ! 推しの魅力を理解しているね!」
数時間後、街を歩く二人は、初対面のぎこちなさはなくなり、お互いに意気投合していました。
「特に雨の中、颯汰が逃げ込んだのが、前世で読んだ小説で、美咲を捕まえる場所だった所!」
「本当に運命って感じだよね~。 ねえ、美咲のイラストが、絵だけ見たらかわいいシーンなのに!」
「小説を読んだ後だと、ホラーに感じるよね~」
もはや、意思が繋がりすぎて、話し方も、声のトーンも、同じになっていました。 瑞稀はことねの目を見ます。 ことねの目は、優しくて、温かい瞳をしていました。 そして何より私のことを、まっすぐに見ていました。 もっと、ことねと仲良くなりたい。 そのとき、瑞稀はいい提案を思いつきました。
「ねえ~ことねちゃん! 学校の部活決まってる? よかったら、私が創設する部活に入らない?」
「いいね! どんな部活か当て見せるね! のんびり推活部でしょう!」
正解と言わんばかりに、瑞稀は、ことねに抱きつくのでした。
『ようこそ! のんびり推活部へ』
「ことねと、倉石! いつの間に仲良くなったの?」
「ことね様! 今からでも、遅くありません! ここから離れましょう! 奴は腹黒です!」
「男は俺だけか⋯⋯これが俗に言うハーレムなのか?」
『そして、こちらが、顧問の今川先生で~す』
「今川で〜す。 よろしく!」
『みんなでのんびり、活動しようね~』
瑞稀は笑いました。 作戦成功! 見事、部活を創設することに成功するのでした。
「⋯⋯お嬢様、倉石瑞稀は、引き篭もりになったようです⋯⋯」
「あらあら残念、せっかく面白いと思ったら、あっと言う間に終わったわね」
夜の部屋で、いつものように鏡を見ながら応える、川端ことね。 以前より部屋が暗く感じるのは、気のせいなのか、それともーー
「さて、邪魔者も居なくなったことだし、生徒会長の主任の挨拶でも考えましょか」
すべては、彼女の思惑通りに進んで行くーー誰も彼女を止めることは、出来ないのだろうか?
「⋯⋯うう⋯⋯舞香? ⋯⋯泣いてるの?」
「⋯⋯お姉ちゃん? お姉ちゃん!」
「⋯⋯頭が痛い! ここは⋯⋯病院?」
「頭を打って、ずっと意識が戻らなかったんだよ! もう寂し思いをさせないで!」
「舞香! ごめんね。 ⋯⋯もう大丈夫だから」
今はまだ、目覚めたばかりの彼女が、川端ことねを倒す、宿命にあるのだが、それはまだ先の話。




