3.レオンハルト、シャルロッテと手合わせする
シャルロッテはヴェルザー伯爵邸ではなく、帝都の中心街に所有している邸宅に住んでいる。
伯爵邸は帝都郊外にあり商会の業務を行うのに効率が悪いからだ。
邸宅は帝都中心街の広大な敷地にある豪奢な作りの館だ。
シャルロッテが帝都で商会を立ち上げた際にヴェルザー伯爵夫人が買い与えたものだ。
邸宅を管理しているのは、シャルロッテが伯爵家に住んでいた時代から仕えているスタッフだ。
私は護衛に異動して以来、シャルロッテの私邸の敷地内にあるスタッフ用の住居に住んでいる。
手合わせの準備のためいったん私室にもどり準備を整える。
まあ、いつも騎士服を着用しているので準備といっても手合い用の木剣を用意するくらいだ。
私は訓練場に向かった。
配属以来シャルロッテとの手合いは定期的に行っている。
訓練場でしばらく待つと、シャルロッテがやってきた。
「またせたわね、始めましょうか」
シャルロッテは戦闘服姿も様になっていてかっこいい。
男性の中でも高身長(190cmくらい)の部類に入る私より、ほんの頭半分低いくらいの身長に、腰高で足の長い体格。
女性的な曲線を持つ体つきは、戦闘服でも際立っているし、歩く姿も無駄がなく優雅だ。
お互いに木剣を構えて、立ち合いが始まる。
鋭い斬撃が襲ってくる。シャルロッテは生まれつき身体強化魔法《フィジカルドライブ≫が常に発動状態の体質だ。
実をいうと私もそうである。
これはかなり稀な例らしいが……騎士団では、身体強化魔法ができることは最低限の能力なので、魔法が使えない私にとっては幸運なことだった。
シャルロッテの攻撃が続く。
フェイントを駆使した巧みなコンビネーション、強さと速さ、さらに華麗さを兼ね備えた斬撃が絶え間なく襲ってくる。
シャルロッテの剣技は一流だ。
彼女の年齢を考慮すると天才といってもいいだろう。
シャルロッテの攻勢を防ぎながら、捌き、反撃する。
彼女も私の動きに対応し、剣で受け、カウンターを狙う。
スピードではシャルロッテに軍配が上がるが、力では私の方が上だ。彼女の攻撃を跳ね返すように捌くと、数十回に一度わずかに隙ができる。
「ハッ!!」
生じたすきを見逃さず、呼気とともに彼女の剣を巻き上げる。
シャルロッテの手から木剣がはじけ飛ぶ。
今回の立ち合いは、私の勝ちで終わった。
この半年、立ち合いでは、私がやや勝ち越している。もっともシャルロッテが魔法を使用していれば、とても太刀打ちできないだろう。
「やるわね。なかなか勝たせてくれない」
「いえ、あなたが本気で戦えば私など足元にも及びませんよ」
「まあいいわ。夕食にしましょう。明日に備えて英気を養わないとね。キミの分も用意してあるから。食べていきなさい」
「いえ、私は自室でいただきますので・・・」
「明日の偵察を万全に行うためよ。つべこべ言わずについといで」
……やれやれ言い出したら聞かないから仕方ない。
「では、いただきます」
「まったくキミは上司の厚意くらい素直に受けなさい」
(厚意なら、ゆっくりさせてくれよ。一緒にいると気が休まらないじゃないか)と思ったが口に出すほど私はバカではない。
素直に従って、解放されたら明日の準備をするとしよう。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




