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銀獅子令嬢シャルロッテは華麗に笑う ~新興貴族令嬢と護衛騎士の冒険~  作者: 朧 李奏
3章 港湾都市オスティア怪事件編
26/27

26.いざ、上陸

 翌日、シャルロッテは一人で町へ出かけると言い出した。

「レオンくん、今日は一人で行ってくるわ。キミは別邸で待機していなさい」

「しかし、護衛として……」

「大丈夫よ。町中を歩くだけだから」

「それに、キミは昨日歩き回って疲れているでしょう? 休んでいなさい」

「……わかりました」

 私は渋々頷いた。

(……まあ、確かに町中なら危険はないだろう)


 シャルロッテが出かけた後、私は別邸で太刀の手入れをしたり、軽く体を動かしたりしていた。

 久しぶりの一人の時間だったので、持参した本を読んで時間をつぶした。

 夕方になり、シャルロッテは両手に小さな包みを持って帰ってきた。


「レオンくん、これキミの分よ」

 シャルロッテが包みを一つ渡してくる。

「これは?」

「耳栓よ。特別製の」

 包みを開けると、小さな耳栓が入っていた。

 だが、普通の耳栓ではない。魔力を帯びているのがわかる。


「魔法がかかっているんですか?」

「ええ。音を遮断する魔法ね。歌声対策よ」

「普通の耳栓に魔法工房で魔力付与してもらったのよ。音だけじゃなく魔力も遮断するようにね」

「・・・なるほど」

「ただし、音も聞こえにくくなっちゃうけど、魔力の遮断はおそらく例の歌に有効なはずだから仕方ないわね」

「よく考えましたね」

「わたしは思慮深いのよ。島へは明後日の朝、出発よ。マルコが船を手配してくれたわ。明日の早朝出発することになるわ」

「わかりました」

 その夜、私は自室で装備を最終確認していた。

(……なにがおこるかわからないから気を引き締めていかないとな)

 私は覚悟を決めて、ベッドに横になった。


 翌日の早朝、私たちは港へ向かった。

 マルコが手配してくれた小型の漁船が、桟橋に停泊している。

「お嬢様、レオンハルトさん、こちらがベネデットです」

 マルコが、40代ほどの頑健な男性を紹介する。

「ベネデット、よろしく頼むわ」

「おう、任せな。船は小さいが大船に乗ったつもりでいてくれ」

 ベネデットが豪快に笑いながら言った。

 シャルロッテはベネデッドにも耳栓を渡してた。

 船頭が歌声に誘われて、いなくなってしまっては目も当てられない。


「お嬢様、これを」

 マルコが小さな袋を手渡す。

「これはなに?」

「魔法の照明弾です。万が一の時は、これを空に打ち上げてください。すぐに救援の船を向かわせます」

「ありがとう、マルコ。もしいなくなった船員達を見つけられたら使うわね」

 シャルロッテが袋を受け取る。

「じゃあ、出港するぜ!」

 ベネデットが帆を張り、船がゆっくりと港を離れる。


 朝日が海面を照らし、波がきらきらと輝く。

 船は順調に進み、やがてオスティアの町が小さく見えるようになった。

「お嬢様、あれが『忘れられた島』だ」

 ベネデットが指さす方向の先に、小さな島影が見える。

 岩だらけの荒涼とした島で、植物はほとんどない。


「・・・不気味な場所ですね」

「ええ。近づくにつれて、魔力の気配が強くなっているわ」

 シャルロッテが真剣な表情で島を見つめる。

「2人とも、耳栓を着けなさい」

「今からですか?」

「ええ。聞こえてからじゃ遅いでしょ」


 私達は耳栓を着けた。

 音が少しこもったように聞こえるが、お互いの声はある程度聞こえる。

 船が島に近づいていく・・・だが、予想に反して、歌声は聞こえてこなかった。

「……おかしいわね」

「何も聞こえませんね」

「これだけ島に近づいてるんだから、そろそろ何かあってもおかしくないのに・・・」


 その時、島に人影が見えた。

「おい、誰かいるぞ!」

 ベネデットが警戒の声をあげる。

「・・・あれは」

 私は目を凝らした・・・女性の姿が見えるが、どこかおかしい。

 肌が青白く、髪は海藻のように揺れている。


 そして、その口が開いた。

 歌声が――聞こえる・・・

 確かに歌声は聞こえているが、耳栓が歌声の魔力を遮断しているようだ。

「効いているわね」

「あれが、船を襲っている犯人にちがいないわ」

「人間・・・ですか?」

「セイレーンのような歌声を持つ人間はただの人間じゃないわね」

 シャルロッテが鋭く見据える。

「ベネデット、船を島の反対側へ回して!」

「おう、了解だ!」


 女性らしき人影は追ってくることはなかった。

 私たちの船が島の岸辺に到着した。

「島から離れて待機してちょうだい。ただし合図をしたら迎えにきて」

「わかった。気をつけてな……」

 ベネデットに見送られながら、私たちは船を降り、岩場を登って島に上陸した。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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