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銀獅子令嬢シャルロッテは華麗に笑う ~新興貴族令嬢と護衛騎士の冒険~  作者: 朧 李奏
3章 港湾都市オスティア怪事件編
24/26

24.オスティア総督 アントニオ・ダ・コスタ

 オスティアの総督府は、港を見下ろす高台に建つ白亜の建物だった。

 異国風の優雅な装飾が施され、広いテラスからは青い海が一望できる。

「ヴェルザー伯爵家のシャルロッテ様、お待ちしておりました」

 門番が丁重に迎え入れてくれる。

 私たちは案内されて、総督の執務室へと向かった。


 扉が開くと、30代後半の男性が立ち上がって出迎えてくれた。

「ヴェルザー伯爵令嬢、ようこそオスティアへ。私がこの地の総督、アントニオ・ダ・コスタと申します」

 総督のアントニオは南方系の容貌で、浅黒い肌に黒髪、陽気な笑顔が印象的だ。

 礼儀正しく、それでいてオスティアらしい開放的な雰囲気を纏っている。

「総督、お目にかかれて光栄です。こちらは私の護衛騎士、レオンハルト・フォン・ユーリヒ卿」

「ユーリヒ卿、ようこそ。どうぞおかけください」

 アントニオが椅子を勧める。


「ヴェルザー伯爵夫人からお手紙をいただきました。オスティアへのご来訪、大変光栄に思います」

「オスティアは素晴らしい都市ですね。ただ、町に少し活気がないような・・・」

 シャルロッテがそしらぬ顔で言う。

「ああ、最近ちょっとおかしな事件が起きてまして、その影響でしょうか」

「私たちは冒険者としても登録しておりますの。事情をお聞かせいただければ、総督のお力になれるかもしれませんわ。」

 シャルロッテの上品なものいいは、さすがに伯爵令嬢というべきか・・・彼女の外見(類まれな美女)も相まって、コロッと騙される男性は後を絶たない。


「ありがとうございます。じつは、過去2ヶ月で5隻の船が被害に遭い、乗組員と積み荷が消失しました。正直に申し上げて、総督として私も頭を抱えております。」

 ・・・どうやら総督も騙されたようだ。

「現地でも調査は進めているのですか?」

「ええ、もちろんです。兵士を派遣して海域を巡回させ、魔術師にも協力を仰ぎました。資料を持ってきてくれないか」

 アントニオが答えながら、文官に資料を持ってくるよう指示を出した。


「こちらがそれぞれの事件の資料になります」

「拝見してもよろしいですか?」

 シャルロッテがアントニオに微笑みながら言った。

「どうぞご覧ください。といってもあまり大した情報はありませんが・・・被害に遭った船は全て無傷で戻ってきますが、乗組員の姿はなく、積み荷も跡形もないということぐらいですね」

「生存者の証言はありますか?」

「一人だけおります。カルロという商人です。彼は幸運にも海岸に流れ着きました」

「ええ、彼には先ほど会ってきました。歌声について聞きました」

「・・・歌声、ですか」

 アントニオが眉をひそめる。


「実は、他にも似たような証言があるのです。近くを航行していた船の船員が、夜に美しい歌声を聞いたと」

「その船員たちは無事だったのですか?」

「ええ。彼らの船は被害に遭いませんでした。ただ、歌声を聞いた後、数人の船員が海に飛び込もうとしたそうです。幸い、他の船員が止めたので事なきを得ましたが」

「・・・歌声に誘われて海に飛び込む」

「セイレーンの可能性は考えられましたか?」

「もちろんです。しかし、セイレーンならば、犠牲者の遺体が見つかるはずです。それに、積み荷まで消える理由が説明できません。我々も兵士や冒険者をつかって、被害にあった船が通った航路にセイレーンがいないか調べましたが。存在を確認することができませんでした」

「・・・ふむ」

 シャルロッテが考え込む。


「総督、被害に遭った船の航路に共通点はありますか?」

「ええ、1つだけあります」

「全ての船が、この海域を通過していました。オスティアから南西へ約20キロの沖合です」

 アントニオが海図を広げ一点を指差す。

「この辺りには、小さな島がいくつかあります。無人島ですが、昔は漁師の休憩所として使われていたそうです」

「現在は?」

「今は誰も近づきません。この怪事件が始まってから、漁師たちもこの海域を避けるようになりました」

「その島について、何か噂はありますか?」

「特にありません。ただの無人島です。ああ、そういえば・・・」

 アントニオが思い出したように言う。


「数十年前、この島で魔術師が研究をしていたという噂があります。帝国の魔術学院から追放されたの魔術師ではないかいう話ですが、詳細は不明です」

「魔術師の研究......」

 シャルロッテの瞳が輝き始める。

「その魔術師の名前はお分かりになりますか?」

「残念ながら、記録には残っておりません。かなり昔のことですので」

 その後もいくつか私たちは質問したがそれ以上の情報を得ることはできなかった。


「総督、貴重な情報ありがとうございます。」

「いえいえ、お役に立てたなら何よりです。ヴェルザー伯爵令嬢もしよろしければ、今夜総督府でお食事でもいかがですか?」

「せっかくですが、先約がございますので申し訳ございません」

 シャルロッテはアントニオの食事の誘いを断り、私たちは総督府を後にした。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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