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銀獅子令嬢シャルロッテは華麗に笑う ~新興貴族令嬢と護衛騎士の冒険~  作者: 朧 李奏
3章 港湾都市オスティア怪事件編
23/26

23.魔性の歌声

 翌朝、私たちは港へ向かった。

 シャルロッテは動きやすい服装をしている。

 オスティアは日差しが強いので肌の露出は控えめだ。

「・・・本当に活気がないわね」


 それでも、港の市場では魚介類や南方の果物が売られており、商人たちが声を張り上げている。

「新鮮な魚だよ! 今朝獲れたばかりだ!」

「南方のオレンジ! 甘くてジューシーだよ!」

 帝都の市場とは違い、陽気で活気があるが、その奥に、どこか不安の影が見える。


 私たちは、被害に遭った船の船主を訪ねるため、港の一角にある商館を訪れた。

「失礼します。カルロ商会の方はいらっしゃいますか?」

 商館に入り受付係員の男性に尋ねた。

「カルロ商会はもう廃業しましたよ。カルロさんは、あちらの酒場にいるかと・・・船を失って、商売が続けられなくなったそうです」

 受付の男性が同情的な表情で言う。

「わかりました。ありがとうございます」

 私たちは酒場へ向かった。


 昼間だというのに、酒場には何人かの客がいる。

「カルロさんはいますか?」

「・・・俺がカルロだ。何の用だ?」

 奥の席から、40歳ほどの男性が振り返った。

 日焼けした顔に、疲れた表情・・・かつては商会の会長として有能だっただろう男が、今は酒に溺れている。

「少し、お話を伺いたいのですが」

「話? 何の話だ?」

「貴方の船が襲われた件についてです」

「・・・・・」

 カルロが黙り込む。

「もう、話したくない。あの日のことは・・・・」

「ああ、やだやだ。船を失ったぐらいで、酒におぼれてるなんて。船員や荷物を探そうって気概がないのかしら」

 暗い表情のカルロに、シャルロッテが横から辛辣な言葉をかけた。

 カルロの顔が赤くなる。酒のせいではなく、怒りによって・・・


「俺だって探そうと思ったさ。でもな、苦楽を共にした仲間が全員いなくなった。荷物もすべてなくなった。積み荷の賠償で金もすべてなくなった。俺に何ができるっていうんだ。」

 カルロは立ち上がってまくし立てた。

「行動に移さないから、何も変わらないのよ」

 シャルロッテが追い打ちをかける。

「私はシャルロッテ・フォン・ヴェルザー代わりに調べてあげるから、さっさと知ってることをしゃべりなさい」

「あんたが、あの帝都の銀獅子か・・・」

 どうやらシルバーレーヴェ商会とシャルロッテのことを知っているらしい。

「あら、わたしのこと知ってるのね。とにかくあんたが知ってることを話しなさい」

 カルロは毒気を抜かれたようで、ポツポツと話し出した。


「......あの日、俺の船は南方への航路を進んでいた。天候も良く、順調だった」

「それが、夜になって......歌声が聞こえてきたんだ」

「歌声?」

「ああ。美しい、女の歌声だ。まるで、天使の歌声のような・・・いや、それ以上に甘く、誘惑的な」

 カルロが遠い目をする。

「乗組員たちが、次々と甲板に出て行った。俺も、歌声に引き寄せられるように・・・気がつくと、俺は海に飛びんでた。ただ飛び込み方が悪かったようで、気を失ったらしい」

「他の乗組員は?」

「全員、俺と同じで海に飛び込んでたようだ・・・俺は運よく海岸に流れ着いた。数日後船は帰ってきたが、船には誰もいなかったし積み荷のなかった」

「積み荷も消えたいたの?」

「ああ。船倉を確認したが、何もなかった。まるで、最初から何もなかったかのように・・・俺は商業ギルドやオスティアの兵士に必死に状況を訴えた。だが、誰も信じてくれなかった。気が狂ったと思われたようだ」


「それで、商会を閉じたと・・・」

「ああ。もう、海には出たくない。あの歌声を思い出すと・・・体が震えるんだ」

「なるほどね・・・あんたの船の後も同じようなことが起こってるんでしょ?」

「ああ、俺の話を馬鹿にしてたやつも次々に同じ目にあったようだ」

 カルロは吐き捨てるように言いまた酒をあおりだした・・・これ以上の情報は聞けそうにない。

「情報ありがとうございます。」

 私はカルロに礼を言い酒場を後にした。


「レオンくん、どう思う?」

「歌声で人を誘い出す・・・海の魔物セイレーンの歌声にはそのような効力があるとききますが・・・」

「うーん、セイレーンの歌声には確かに魔力があるけど、セイレーンの仕業なら誘い出した後に船員を襲ってるでしょう。ちょっと違う感じよね。それに、積み荷まで消えるというのは不可解だわ」

 シャルロッテが考え込む。


「誰かが、意図的にやっているということですか?」

「可能性はあるわね。人を誘い出す能力を持つ何かを使って、船員をどこかに連れて行っている」

 シャルロッテが顎に手を当てる。

「そして、積み荷も奪っている・・・目的は何かしら?」

「レオンくん。オスティアの総督府に行ってみましょう。ヴェルザー家から連絡を入れてあるから総督に会えるはずよ。」

 さすがヴェルザー伯爵家というべきか、総督からもっと有益な話が聞けるかもしれない。

 私たちは総督府へと向かった。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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