21.港湾都市オスティアへ
会議が終わり、私はシャルロッテの邸宅に戻った。
執事のフリードリヒさんが出迎えてくれる。
「レオンハルト様、お疲れ様です」
「フリードリヒさん、明日から会長とオスティアへ行くことになりました。準備をお願いします」
「承知いたしました。すでにお嬢様からご指示を受けております」
「オスティアには、ヴェルザー伯爵家の別邸がございます。そちらを拠点にされるとのことです」
「別邸の管理人に連絡は?」
「ええ。すでに伝達魔法で連絡を入れております。管理人のマルコが、お嬢様のご到着を心待ちにしているとのことです」
「マルコ......異国風の名前ですね」
「ええ。オスティアは南方の影響を強く受けた町です。住民の多くは陽気で開放的、帝都とは全く異なる雰囲気ですよ」
「わかりました。では、準備をよろしくお願いします」
私は自室に戻り、旅支度を始めた。
3日間の旅路と、現地での活動を考えて荷物を整える。
ただ、保養地ということで、あまり物々しい装備は避けた方がいいかもしれない。
その夜、シャルロッテに呼ばれて館の食堂へ向かった。
「レオンくん、明日からの旅程だけど、馬車で3日かかるわ。途中、街道沿いの宿に泊まりながら進むわよ」
「護衛はどうしますか? カスパーたちも同行させますか?」
「いえ、今回は私とキミだけよ。保養地に大所帯で行っても目立つだけだし、機動力が落ちるわ」
「・・・二人だけですか」
「何? イヤなの?」
「いえ、そういうわけでは......」
「オスティアには別邸があるし、現地にヴェルザー家のスタッフもいるから」
「・・・わかりました」
「オスティアは本当に美しい町よ。青い海、白い砂浜、陽気な人々......帝都の堅苦しい雰囲気とは大違いだわ」
「会長は、オスティアがお好きなんですか?」
「まあね。子供の頃、祖父に連れられて何度か訪れたわ。あの開放的な雰囲気は嫌いじゃないのよ」
確かに横紙破りな彼女には格式ばった帝都は息苦しいのかもしれない・・・いや、どこにいても変わらず自由な気がする。
「とりあえず、明日は早朝出発よ。早く休みなさい」
「わかりました。では、失礼します」
私は一礼して、食堂を後にした。
(......オスティアか。どんな町なんだろう)
翌朝、私たちはフリードリヒさんの手配してくれた馬車で帝都を出発した。
馬車には私とシャルロッテ、そして御者が一人、荷物は最小限に抑えてある。
「さあ、出発よ」
シャルロッテが馬車に乗り込む。私もその後に続いた。
馬車が動き出し、帝都の門をくぐる。
馬車は順調に進み、初日の夕方、街道沿いの宿に到着した。
宿は小さいが清潔で、食事も悪くなかった。
翌日も同じように進み、二日目の夜も街道沿いの宿で過ごした。
そして三日目の午後、風景が変わってきた。
街道沿いの建物も、だんだんと明るい色調になっていく。
「レオンくん、気づいた?」
「何がですか?」
「建物の色よ。帝都は灰色や茶色の石造りが多いけれど、南に行くほど白や黄色、赤の建物が増えるのよ」
シャルロッテが窓の外を眺めながら言う。
「確かに......」
「気候が温暖だから、明るい色が好まれるのよ。それに、南方の文化の影響も強いわ」
「南方の文化、ですか」
「ええ、オスティアは帝国の町だけど、南方諸国との交流がさかんだから、文化も混ざり合っているのよ」
シャルロッテが楽しそうに語る。
「食べ物も、帝都とは全然違うわ。魚介類が豊富で、オリーブオイルやトマトを使った料理が多いの」
「・・・この匂いはなんですか?」
「潮の香りよ。もうすぐ海が見えるわ」
言いながら、窓から外を眺める。
しばらくすると、青く広がる水平線が見えてきた。
「あれが海か・・・」
私は初めて見る海に、思わず声を上げた。
青く広がる水平線、打ち寄せる波、光を反射してきらめく水面。
「レオンくん、海を見るのは初めて?」
「ええ、帝都育ちなので」
「まあ、帝都は内陸部だから、帝都生まれの人は海を見たことがない人が多いでしょうね」
馬車は海沿いの道を進む。
街道沿いには、白い壁にオレンジ色の屋根を持つ家々が並んでいる。
人々の服装も、帝都とは違う。明るい色の服を着て、陽気に話している。
「......雰囲気が全然違いますね」
「でしょう?」
更にしばらく進むと、港湾都市オスティアが見えてきた。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




