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銀獅子令嬢シャルロッテは華麗に笑う ~新興貴族令嬢と護衛騎士の冒険~  作者: 朧 李奏
3章 港湾都市オスティア怪事件編
20/26

20.海の怪事件

 夏の日差しが強くなってきた頃、帝都では特に大きな事件もなく、平穏な日々が続いていた。

 私はシルバーレーヴェ商会の執務室で月例の報告会議を見守っていた。


「会長、今月の売上報告です」

 オットーが書類を差し出す。

「前月比で10%増です。魔力遮断容器のライセンス料も順調に入っています」

「・・・悪くないわね」

 シャルロッテが書類に目を通しながら、やや退屈そうに答える。

「帝都の治安状況ですが、特に目立った事件はありません」

 情報担当のイゼル・ハルトマンが続けて報告する。

「つまらないわね・・・」

 シャルロッテが露骨にため息をつく。

「会長、つまらないとは・・・平穏なのは良いことではありませんか?」

 商会の交渉担当ヨアヒムが常識的な意見を述べる。

「退屈なのよ。商会の経営は順調、帝都は平和、もう少し刺激的な何かが欲しいわ。帝都を揺るがすような大事件でも起きればいいのに!」

「会長、それは不謹慎では......」

 商会の幹部たちは皆苦笑した。

(......相変わらず、不謹慎なことを平気で言う)


「会長、実は一つ、気になる報告が入っております」

 オットーが咳払いをしながら言った。

「帝都から南へ馬車で3日ほどの距離にある港町、オスティアからの情報なんですが・・・」

 帝国の南部、海に面した大規模な港湾都市だ。

「オスティア、貴族の保養地として人気の町ね」

「その通りです。温暖な気候と美しい海岸で知られており、多くの貴族が別邸を構えています。ヴェルザー伯爵家も別邸をお持ちですね」

「ええ、祖父が保養用に購入したものよ。私も何度か訪れたことがあるわ。陽気で開放的な雰囲気の町で、帝都とは全く違う空気だったわね」

「最近、この港町で奇妙なことが起きているという情報が入りました」

 オットーが報告書を取り出し、シャルロットに渡した。


「港を出港した船が、人員も積み荷も失った状態で戻ってくる。船だけが空になって漂っているそうです」

「......人員と積み荷だけが消える?」

 私は思わず口を挟んだ。

「ええ。乗組員も乗客も、全員行方不明です。船だけが、まるで幽霊船のように港に戻ってくる」

「私の方でも、同様の報告が上がっています。少なくとも、過去2ヶ月で5隻の船が被害に遭っているとのことです」

 イゼルも同様の情報をつかんでいたらしく、重ねて報告する。

「オスティアは保養地としてだけでなく、海路貿易の拠点でもあるのよね?」

「ええ。帝国では数少ない大規模な港湾都市で、海路貿易で栄えています」

「海賊の仕業とは考えられませんか?」

 カスパーが護衛隊長らしい意見を述べる。


「海賊なら、船ごと奪うはずです。わざわざ人と荷物だけ奪って、船を返す理由がありません」

「魔獣の可能性はありませんか?」

「それも考えましたが、海の魔獣が船を襲う場合、船体に傷が残るはずです。しかし、戻ってきた船には戦闘の痕跡がほとんどないとのことです」

「......ふむ」

 シャルロッテが顎に手を当てて考え込む。

「人と荷物だけが消え、船は無傷で戻る......まるで、全員が自ら船を降りたかのよう」


「現地でも原因は不明のままだそうです。このままでは、海路貿易自体に支障が出そうです」

 イルゼが報告書をめくる。

「保養地としての雰囲気も、事件の影響で暗くなっているとか......」

「......これは面白いわね」

 シャルロッテの紫色の瞳が輝く・・・私は嫌な予感がした。


「行くわよ、オスティアへ。この事件、面白そうだわ」

「しかし、会長。オスティアは帝都から3日もかかります。商会を長期間空けるのは・・・」

「オットー、何のためにあなたがいるのよ。商会は通常業務に支障はでないでしょう?それに、オスティアには別邸があるし、久しぶりに保養も兼ねていいじゃない」

「保養、ですか?」

「ええ、ここの所私は働きすぎだわ。商会の売上は右肩上がりだし、ちょっと休暇をもらうわよ」

 彼女の保養とはトラブルに首を突っ込み引っ掻き回すことなのだろうか。


「気を付けて行ってらっしゃいませ」

 オットーが諦めたように言う。

「レオンくん、準備しなさい。明日出発するわよ」

「・・・はい、わかりました」

(・・・やれやれ、またか)

 私はため息をついた。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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