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2.シャルロッテの興味

「それでは本日の報告をします」

 オットー・クラインが口を開いた。

 彼はシルバーレーヴェ商会の番頭で、シャルロッテが不在でも商会を回せる有能な男だ。50代前半、落ち着いた物腰で部下からの信頼も厚い。


「まず、商会業務の報告から。南方からの香水の入荷が完了しました。帝都の富裕層から好評で、既に半数が予約済みです」

「良いわね。次の入荷も手配しておきなさい」

「承知しました。あと以前にご指示いただいた、南方産の化粧品についてもリサーチを続けております。どうも帝国の化粧品に比べ女性の肌に良いようでこちらも販売できればすぐに帝都で評判になりそうです」

 シャルロッテは満足そうに頷く。


「それから、海路で西の島国から入手した食材ですが、貴族や富裕層の間で評判になっています。ただ当社は海路貿易の直接手段がないため中間業者を通しての仕入れになっているため原価は高めになっています」

「それは仕方ないわね。帝国自体が陸路編中なんだから・・・」

 シャルロッテが呟く。


 ここ、ザルツヴェーデ帝国は、大陸中央に位置し、大陸公路の要衝を押さえる強国だ。

 陸路交易だけで莫大な利益を上げているため、北部の海路開発はほとんど進んでいない。

「陸路で十分利益が出ていますから、仕方ありませんな」

 交渉担当のヨアヒム・ベッカーが応じる。

「他社と同じことをしてもダメでしょう?いずれ必ず直接海路貿易をわが商会で行うわよ」

 いずれ陸路貿易は限界に達し海路貿易が必要になる・・・シャルロッテの持論だ。

 確かに一理ある。だが、帝国全体が陸路重視の今、一人で海路に投資しようとするとは……やはり変わり者だ。


 オットーが続ける。

「冒険者ギルド・商会ギルドから、いくつか情報が入っています。北部での盗賊騒ぎ、魔獣の目撃情報、それから貴族間の商取引トラブルなど」

「ふむ、盗賊騒ぎは騎士団に任せましょう。貴族間のトラブルは勝手に潰しあいをしてくれれば理想的ね。魔獣の目撃情報についてはわたしも聞いているわ。ちょっと気になるのよね」

 シャルロッテが興味を示す。


 これは直接商会の業務ではない。シャルロッテ個人が「興味を引く」事件やトラブルの情報だ。

 商会の情報網とは別に、シャルロッテは独自の情報源を持っている。そこから上がってくる情報や、商会経由で入った情報の中から、彼女が「面白そう」と判断したものに冒険者として首を突っ込む。

 商会に利益が出ることもあるが、単純に事件解決で終わることも多い。


 あくまで「シャルロッテ個人の興味」が優先なのだ。

 シャルロッテは椅子に座り、書類に目を通しながら聞いている。

 商会の業務報告は淡々と処理し、「興味を引く情報」については目を輝かせる。

 そ表情は、絵になるほど美しい。


 貴族令嬢としては珍しい肩口で切りそろえられた、つやのあるプラチナブロンドの髪、絶世と言ってもよいほど秀麗な顔立ちと、知性と覇気を感じさせるアメジストにも似た瞳、立ち居振る舞いも洗練されている。

 容姿だけなら、傾国の美女といってよいだろう。


「魔獣の被害の状況を教えなさい」

「かしこまりました」

 情報担当のイルゼ・ハルトマンが頷く。30代後半の女性で、帝都の社交界と商人ギルド、両方に顔が利く有能な人物だ。

 商会の情報担当として、商業情報や市場動向を収集・分析するのが彼女の役割だ。

 シャルロッテ個人が持つ情報網とは別系統だが、時折情報が重なることもある。


「被害にあっているのは把握している範囲で、ホフマン商会・ゲルバウム商会・ウーシュルディッヒ貿易などですね」

「なるほど、それと私の知っている情報を加味すると……」

 会議は続き、最終的に「魔獣の目撃情報」に首を突っ込むことになった。

 今のところ商会に直接被害はないが、シャルロッテが興味を持ったのだ。

 そして……


「レオンくん、キミはどう思う?」

 なぜか、私に意見を求めてくる。

 しかも「レオンくん」呼びだ。

 他のスタッフには「オットー」「イルゼ」と呼び捨てで命令口調なのに、私だけ「レオンくん」「キミ」と呼ぶ。

 私は騎士団所属なので呼び捨てにしづらいのか……高慢なシャルロッテにしては配慮してくれているつもりなのだろう。


「魔獣被害にあった商会の被害状況から、それなりに強力な魔獣と考えられますね。しかし、目撃内容があいまいで、何の魔獣か特定ができません。一度偵察をしてくるべきだと思います」

「そうね……では私とキミで魔獣の目撃地点の偵察を行うわよ。出発は明日、用意しておくように。オットー私がいない間の商会の運営は任せたわよ」

「かしこまりました。商会のことはつつがなく執り行いますので、偵察お気をつけてください」

 会議が終わり、スタッフたちが退出していく。


 私も執務室を出ようとすると、後ろからシャルロッテの声がした。

「レオンくん、少し待って」

「はい」

 振り返ると、シャルロッテが書類を片付けながら、こちらを見ていた。

「昼食前に、少し手合わせに付き合いなさい。偵察の前に体を動かしておかないとね」

「わかりました」

 私は一礼して、執務室を後にした。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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