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13.ヒポグリフ討伐

 幾度目かの曲がり角を曲がると、開けた場所に出た。

 シャルロッテが剣を抜いて立っていた。

 片刃の長剣の刀身が魔力を帯びて青白く光って見える。

 尋常ではない魔力の量がその刀身に感じられる。

 おそらく、私が渓谷に到達する前から魔力をため続けていたのだろう。


「ほら、これが欲しいんだろ!」

 私はデロティア草の革袋を前方へ放り投げた。

 革袋は地面に転がり、中からデロティア草がこぼれ落ちる。

 私は予定通り、横の岩陰に身を隠そうとした。

 ヒポグリフはデロティア草を見つけ、一瞬そちらに意識が向いたが、その視線はすぐにシャルロッテの方へ向いた。

「ッ!」

 ヒポグリフがデロティア草ではなく、シャルロッテに向かって跳躍する。


 おそらく、デロティア草への執着より、とんでもない魔力をため込んでいるシャルロッテへの警戒が上回ったのだろう。

「会長!」

 私は岩陰へ隠れるのをやめ、シャルロッテの方へ取って返した。

 シャルロッテとヒポグリフの間に割って入るためには普通に走ったのでは速度が足りない・・・

 とっさに渾身の力を込めて地面を蹴り付けるように間合いを詰める・・・地面が抉れ、私は急加速を得てヒポグリフの前へと踊りでた。

 ヒポグリフの前で急制動をかける。

 刹那、ヒポグリフのばかでかい鉤爪が私に向かって振り下ろされた。

 私は剣を鞘のまま抜き、剣先と柄に両手を当て受け止めた。


 ガキィィィン!


 凄まじい衝撃が私に伝わってきて、両足が地面に深く沈む。

「ぐっ......!」

 何とか受け止めた形だが、ヒポグリフの力は想像以上だ。

 受け止めた剣の鞘は砕け、刀身にもひびが入り始める。


 防ぎきれないと思った、その瞬間——首元のアミュレットが光った。

 透明な障壁が展開されて、ヒポグリフの鉤爪が障壁に押し戻される。

 鉤爪が弾かれ、ヒポグリフの動きが止まった一瞬・・・


「シッ!」

 シャルロッテは気合とともにその場で剣を振り抜いた。

(いくらなんでも間合いが遠すぎる、届かない)

と思っ直後、刀身から巨大な青白い刃が飛んだ。

 溜めに溜めた魔力を込めた、一撃必殺の刃がすさまじい速度でヒポグリフに向かって飛んでいく。

 ヒポグリフは障壁魔法に弾かれた直後で硬直して動けない・・・一閃。

 幻獣の鷲の頭部と馬の胴体の接合部分を飛ぶ斬撃が薙いだ。

「ギャ......」

 ヒポグリフの声が途切れ、巨大な頭部が地面に落ちて胴体が崩れ落ちた。

 静寂が訪れる・・・我々の勝利のようだ。


「・・・終わったわね」

 シャルロッテが剣を鞘に納めながら言った。

「はい・・・なんとか終わりました」

 私の剣は鞘がほぼ砕けた状態だが、何とか佩くことができた。

 腕がまだ痺れている。ヒポグリフの攻撃は、想像以上の威力だった。

「レオンくん、大丈夫?」

 シャルロッテが私の方を見ながら言った。

「問題ありません。多少痺れていますが、すぐに治ります」

「......そう。でも、助かったわ。キミが奴の動きを止めてくれなければ、あんなにきれいに首を落とせなかったわ」

 シャルロッテが笑顔で言う。

「役にたてたようでよかったですよ」

「アミュレットも役に立ったわね」

「ええ。アミュレットのおかげで助かりました」

 私は素直に言った。

「アミュレットのおかげじゃなくて、わたしのおかげでしょう!」

 シャルロッテはそう主張するが、そもそも危険な接近戦でなく魔法で仕留めれば、私も身を挺して守る必要もなかったのだ。


 その時、渓谷の出口からオットーたちが駆けつけてきた。

「会長!レオンハルトさん!ご無事ですか!」

 オットーが息を切らせながら叫ぶ。

「ええ、無事よ。ヒポグリフは討伐したわ」

 シャルロッテがヒポグリフの死骸を指差す。

「......見事です。しかも、首を一撃で......」

 カスパーが感心したように呟く。

「胴体も翼も、ほとんど傷がついていませんね」

 オットーがヒポグリフの死骸を確認する。

「会長......これなら予定通り大丈夫そうですよ」

「ええ、できる限り傷を最小限に抑えれたわ。レオンくんのおかげよ」

 シャルロッテが満足そうに言う。


 私は2人の会話に違和感を覚えた。

「会長・・・どういうことですか?」

「ヒポグリフは幻獣と言われるほどの魔獣よ。その希少性は図書館で一緒に調べたレオンくんならわかるわよね?」

「ええ、数百年単位で目撃情報がないようでしたね。」

「その通り。それでね、貴族の中にはね希少な魔獣の剥製をコレクションしている変態がいるのよ。そういった輩からするとヒポグリフの剥製は喉から手が出るほど欲しがる代物よ。莫大な金額で売れるわ」

「・・・それで、魔法を使わなかったんですか?」

 私は声が低くなるのを自覚した。


「もちろん、危険になったら魔法を使うつもりだったわよ。でも、死骸が焼けたり焦げたりしたら価値が下がるでしょう?だから、なるべくきれいな状態で仕留めたかったのよ」

 シャルロッテが当然のように言う。

「つまり、会長は最初から剥製にして売ることを考えていたと?」

「当然でしょう。せっかく討伐するんだから、最大限の利益を得ることを考えないとね。」

「・・・・」

 私は言葉を失った。

 シャルロッテが魔法を使えば、もっと安全に倒すことが出来ただろう。

 だが、安全な手段ではなく、危険が伴う手段を選択した。

 安全よりも利益を優先して・・・

「レオンくん、何か言いたそうね」

「......いえ」

「言いなさいよ。どうせお小言でしょう?」

「......利益より安全を優先すべきだと私は思います」

 私は抑えた声で言った。

「魔法を使えば、もっと安全に倒せたはずです。なぜそうしなかったんですか?」

「だから、最大の利益を得るためよ。商会の会長としては当然の行動だと思うけど?」

「それは分かっています。しかし・・・」

「しかし、何?」

 シャルロッテが私を睨む。

「......会長の身が危険に晒されたんですよ。利益より、安全を優先すべきでは」

「キミがちゃんと守ってくれたじゃない。」

「・・・・」

 私は言葉に詰まった。


 確かに、結果的には成功したが、、もしアミュレットがなければ・・・

「文句があるなら、はっきり言いなさいよ」

 シャルロッテが挑発的に言う。

「いえ、もういいです」

 私は諦めて視線を逸らした。

(やれやれ、これ以上言っても無意味か・・・)

 シャルロッテと私の周りで、イルゼとマルタ、アンナ、レオニーが、気まずそうに視線を交わしている。


「さあ、ヒポグリフを丁寧に回収しなさい。傷をつけないように注意してね」

 シャルロッテがカスパーに指示を出す。

「承知しました」

 カスパーが護衛部隊に指示を出す。

 私はため息をつき、馬にまたがり帰路についた。


拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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