11.作戦前夜
作戦前夜、商会で最終確認の会議が開かれた。
「明日の流れを確認するわよ」
シャルロッテが地図を広げる。
「午前6時、帝都を出発。午前7時半、襲撃予想地点付近に到着」
「商隊を装って、デロティア草を運ぶ。魔力遮断袋から普通の袋に入れ替えて、ヒポグリフをおびき寄せる」
「ヒポグリフが現れたら、レオンくんが薬草を奪って渓谷へ走る。カスパーたちはクロスボウでヒポグリフをけん制して、レオンくんが森に逃げ込む時間を稼ぐ」
「わたしは先に渓谷で待ち伏せ。ヒポグリフが来たら、確実に仕留める」
「他のスタッフは渓谷出口付近で待機。万が一に備えて、退路を確保する」
「以上よ。質問は?」
オットーが手を挙げた。
「会長、万が一ヒポグリフが複数いた場合は?」
「その場合は作戦中止。無理に戦う必要はないわ。命あっての物種よ」
「他には?」
誰も質問しなかった。
「よろしい。では、明日は早朝出発。全員、早めに休みなさい」
「「「はい」」」
会議が終わり、私たちは商会を後にした。
夕食を済ませた後、私は自室で最終確認をしていた。
剣、短剣、軽量化された鎧、万が一の治療薬・・・全て問題ない。
(やれやれ、魔獣の囮になるとは初めての経験だな・・・)
ヒポグリフは強大な魔獣だ。一歩間違えば、命を落とす。
しかし、シャルロッテは自信満々だ。
(……まあ、彼女の実力なら何とかなるだろう)
その時、扉がノックされた。
「レオンハルト様、よろしいでしょうか?」
執事のフリードリヒさんの声だ。
「どうぞ」
扉が開き、フリードリヒさんが部屋に入ってくる。
「お嬢様がお呼びです。館の食堂へおいでいただけますか?」
作戦前夜に何の用だろうかと思ったが、呼ばれたら行かなければならない。
「わかりました。すぐに伺います。」
フリードリヒさんと一緒に館の食堂に向かう。
「お嬢様、レオンハルト様がいらっしゃいました。」
「入りなさい。」
シャルロッテは食卓に座っていた。
食卓の上に優美な長剣が一振りとネックレスのようなものが置いてある。
「遅くにすまないわね。今回の作戦用に頼んでたものがぎりぎり間に合ったので渡しておこうと思ってね。」
言いながら、食卓に置いてあったネックレスのようなものを私の方へよこした。
「このアミュレットはね、持ち主の危機に一度だけシールドの魔法が展開する魔道具よ。」
「このような貴重なものよろしいのですか?」
「明日、キミに任せる役割は重要よ。万が一の時のために持っておきなさい。」
シャルロッテなりの心遣いだろう・・・珍しいこともあるものだ。
「ありがとうございます。そちらの長剣は会長用ですか?」
「そうよ。この剣が間にあったか倒す手段が決まったわ。」
「珍しい形の剣ですね。」
私が興味を示すと、剣を鞘から抜いて見せてくれた。
少しだけ反った細身で片刃の刀身、長さは通常の剣より若干長い。
「会長、ヒポグリフに接近戦を挑まれるのですか?無茶ですよ」
「お小言はたくさんよ。明日の私の活躍を楽しみにしておきなさい」
シャルロッテが胸を張る。
「・・・はい」
「まあ、いくつか方法は考えてあるから。渓谷に引きずり込んだらわたしたちの勝ちは動かないから安心なさい。」
(やれやれ、自信の根拠が分からない・・・)
「じゃあ、早く寝なさい。明日に備えて」
「会長もお休みください」
「ええ。おやすみ、レオンくん。」
私はシャルロッテの私邸を出て、自室へと戻った。
(てっきり、魔法で仕留めるものとばかり思ってたんだが、近接戦闘か・・・なにを考えてるんだか)
私は少し戸惑いながらも、ベッドに横になった。
(最悪の場合は、ばてた私でも盾くらいにはなれるだろう・・・これでも一応護衛騎士だからな)
半ばあきらめた気持ちで、私は眠りについた。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




