10.予行練習と事前準備
翌朝、私たちは再び帝都北部へ向かった。
今日は実際に襲撃予想地点から渓谷まで、全力疾走する練習だ。
「レオンくん、準備はいい?」
シャルロッテが馬上から私を見下ろす。
「はい。いつでも」
私は軽量の鎧を着用している。アンナが用意してくれた、走りやすいように調整されたものだ。
「では、ここから15分後にスタートよ。わたしは先に渓谷の奥で待ってるわ」
シャルロッテが馬を走らせ、先に行ってしまう。
(……やれやれ)
15分後、私は全力で走り出した。
最初の1キロは平地を全速力で駆ける。
足が地面を蹴るたびに、砂利が飛び散る。
私の全力で走った速度はせいぜい馬より多少早いくらいだ。
次の2キロは緩やかな上り坂。ペースを落とさないように、足を動かし続ける。
私は心肺機能も強化されているので息が上がるのはまだ先だ、余裕はある。
その先の1キロは森の中。木々の間を縫うように走る。
枝を避け、岩を飛び越え、ひたすら前へ進む。
最後の1キロは下り坂。渓谷への入口が見えてきた。
(もう少しだ・・・)
渓谷に突入し、足場の悪い砂利道を全力で駆ける。
ここから蛇行した渓谷を走り抜ける。
8キロ先、シャルロッテが待っている場所まで、あと少しだ。
そして、ようやくシャルロッテのいる場所に到着した。
「……はぁ……はぁ……」
私は膝に手をついて、荒い息をついた。
「お疲れ様。タイムは11分50秒ね」
シャルロッテが懐中時計を見ながら言う。
「・・・とりあえず、なんとかなりそうですね。」
「上出来よ。ただ渓谷に入ってからのヒポグリフのスピード次第では速度を落とすことも考えないとね。」
シャルロッテが満足そうに頷く。
「……もう一度やりますか?」
「ダメよ。今日はこれで終わりにしましょう。疲労を残したら本番に支障が出るわ」
シャルロッテがあっさりと言う。
「明日以降は、軽い調整だけ。本番までに体調を整えなさい」
「……わかりました」
(やれやれ、ヒポグリフの速度を気にしながらの逃走は神経を削られそうだな・・・)
私はため息をついた。
その後、5日間は準備に費やした。
商会のスタッフたちが、着々とそれぞれの準備を進める。
イルゼはヒポグリフの最新の目撃情報を収集し、出没パターンを分析した。
「午前8時から10時の間に出没することが多いようです。おそらく、朝に狩りをする習性があるのでしょう」
ヨアヒムは冒険者ギルドへの申請を完了させた。
「大型魔獣討伐の申請は受理されました。ギルドからの報酬は期待できませんが、他の冒険者が邪魔に入ることはないでしょう」
アンナは装備品を揃え、リストを作成した。
「レオンハルト様用の軽量鎧、デロティア草、魔力遮断袋、治療用ポーション、全て準備できております」
マルタは治療用のポーションを用意した。
「万が一に備えて、高品質のポーションを用意しました。これなら、重傷でも応急処置ができます」
カスパーは護衛部隊の訓練を行った。
「護衛部隊5名、万全の態勢で同行いたします。クロスボウの訓練も完了しました」
オットーは全体の進捗を管理し、シャルロッテに報告した。
「全ての準備が整いました。明日、出発できます」
「よろしい。全員、よくやったわ」
シャルロッテが満足そうに頷く。
私はこの5日間で軽い調整を続けた。
まあ、調整といっても軽いランニングと剣の素振り程度で、現在体調は万全の状態だ。
(......明日が本番か)
私は今回の作戦では使用予定のない剣を手に取り手入れを行った。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




