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残機  作者: 萩原巧佳
3/3

反抗期

写真部に入って少し時間が経過した。相変わらず、二人は互いに写真を撮り合っているため私は一人で外の写真を撮っている。味気ないというか味がない。外ばかり撮っていても何もないし。誰かを撮りたいと考えるがそのような人もいなかった。

 「すいません、ちょっといいですか」

 部室の外から声が聞こえた。ドアをゆっくりと複数回ノックした後。ドア外を確認してみるとそこには奈美さんを含め生徒会の面々が立っていた。

「なんでしょう」

 私はそう言いドアを開けた。見た感じ数人だろうか。かしこまった様子でこちらを見てくる。

「生徒会長の写真を撮ってほしいのですが、可能でしょか」

「可能ですが」

「今年で生徒会を辞める予定なので写真を撮っていただきたくて」

「そうですか、分かりました。少々お待ちください」

 奈美さんは生徒会長だったのか。今年で生徒会を辞めるということなので写真を撮りにきたというがどう撮ればいいのか分からない。人の写真を撮ったことがないのだから。少し緊張するのもあるが依頼されたからには真剣に取り組もう、そう思った。

「生徒会長を預けます、あとはよろしくお願いします」

「はい、分かりました。終わったらご連絡します」

 少し静かな部屋で二人きりになり違和感があった。家では二人きりになったことはあるが、学校、特に教室ではなかったからだ。こう見ると奈美さんって綺麗なのだということを再認識させられる。すごく素敵な方だと。

「では、そこに座ってください」

「はい」

「座ってとりますね」

 フラッシュをたき、撮影を始めた。いつも笑っている奈美さんとは対照的に今日は真顔だった。まっすぐこちらのレンズを見つめてくるため違和感があった。鼓動が少し早くなる。それもそうだ。生徒会長と二人きりなんてされて緊張しない人のほうが少ない。何かされたら叱られるのではないかという負担が頭の中を駆け巡った。嫌になりそうだ。

「では、これで終わりです」

「一君、ありがとね」

「こちらこそです」

 少し安心した様子で奈美さんがこちらに話しかけてくる。

「一君、学校に馴染めてる」

「なんとか、馴染んでます」

「そうなのね」

 本当はあまり馴染めていないという現実を奈美さんに伝えるわけにはいかない。余計に心配させてしまうから。いつも笑っている奈美さんが泣いている姿を見たくないというのもあったのだと思った。

「よかったら、一緒に写真撮らない」

「いいですけど、どんな風に撮るのですか」

「スマホでいい」

「いいですけど」

 そう言うと、奈美さんはおもむろにスマホを取り上げツーショットを撮り始めた。複数枚撮らさせられた。写真を撮ったら奈美さんは少し口角を日左に上げた。笑顔でこちらに話しかけてくる。

「ねぇ、また昔のように遊べないかな」

 こちらを猫の様に上目遣いで見てくる。それにこたえる答えなんてないから誤魔化すことしか私はできない。

「それはできないです」

「どうして、ずっと傍にいてほしい」

「私は、あなたの傍にいれないです。もう、愛おしい人が泣く姿は見たくないんです。親がそうでしたから」

 彼女はふとこちらを見てくるときに私の腕をぎゅっと握りしめてこちらに語り掛けてくる。

「君の隣に誰もいないから、君は寂しいって思っているの。あなたがいるから私は愛を学べるのに。」

「それでも、もう嫌なのですよ。これ以上傷つくのが」

「どうして、そんな風に私から離れようとするの」

 目を見ると左目から涙がこぼれ始めた。小刻みに揺れている手を自分で抑えながら。

「ねぇ、なんで私が今ないているか分かる」

「分からないです」

「私はね、あなたのことを大切に思っているから、それで泣いているの」

 少し、寂しそうにこちらの方に来て、優しく問いかけてくる。

 「本当の、事がききたい。あなたの」

「何も、思っていないですよ」

「本当に私のことを遠ざけたいの、それとも私を守りたいの。どっちなのか教えて」

「どっちもないです、単に自己満です」

 少しこちらに語りかけてくる。寂しそうだった。その様子を見て昔見たいに遊んでいたことを懐かしくも思っていた。

「じゃぁ、いいや。これから楽しみにしてくださいね。少しだけ権限使います」

「何を言っているのですか」

「もう、知らない」

 そういい奈美さんは足をドンドンと音を立てて部屋を出ようとした。

「あの、写真はどうするんですか」

「あっ、それだけは貰います。じゃぁね」

 なぜかイライラしている様子でこちらを見た後に怒りのアピールをしてその場をさった。何かに対して怒っているようだが私には分からない。


「どうして、一君はいっつもそうなんだろう、優しいのだけど、恋することを忘れてしまうのが嫌だな」

 

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