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残機  作者: 萩原巧佳
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産声

学校に行ったが誰も友達が出来ない。困ってしまった。周りに馴染めないということを今気が付いた。気が付けば周りには友達同士で話している雰囲気に自分が馴染めていない。今日から部活動見学になるのにどこに行くかも決まっていない。新入生として部活に入ろうとしたのだけどなかなか見つからない。

「あの、一君」

 声をかけてきた二人組がいた。

「あっ、椎名君」

 声をかけてきた青年は転校してきた頃似話しかけてきた子だった。

「まだ、部活入ってないよね」

「はい、入ってないです」

「よかったら写真部に入らない」

「写真部ですか」

「そう、誰も入る人がいなくてどうかな」

「見学してからでもいいですか」

「ぜひ来てよ」

 そう言われ、写真部の見学に連れていかれた。少し賑やかな廊下を通り過ぎると第七準備室と書かれた教室があった。そこに入るよう指示された。ボロボロのドアを開くと中は異様に綺麗だった。おしゃれなカフェテリアのようだった。

「あの、ここは何を撮るのですか」

「俺は彼女を撮ってる」

「はい」

「来て、彼女」

 なぜか軽快な音楽が流れてきた。演劇などに使うような音楽が。流れている最中部屋が暗くなり真ん中に明かりが灯る。ミラーボールが輝き始めて女の人が出てきた。

「由香が来ました」

 由香さんがモデルかと言うくらいに綺麗にポーズをとっている。いくつかポーズをして自分の美しさを表現し始めた。

「今日も私綺麗ですか」

「由香さん綺麗でっせ」

 なんというか写真部というよりはアイドルの推しかつをしているオタクをみているような感じがした。

「あの、これは写真部なんですよね」

「はい、そうです。美しいでしょ。俺の彼女」

「そうですね」

「ちょっと今から外に撮影行きましょ」

「では、一君ちょっとだけここで待っていてもらってもいい」

「分かりました」

 さっきまでここにいた二人はルンルンと軽快に足音を立てて部室を出て行った。一人取り残されて何をすればいいのかわからない状況だ。写真なんて撮ったことがないし興味もない、しかし部活に入らなければならないという状況に困っている。どうすればいいのだろうということを頭で考えても仕方がないのでとりあえずカメラはあるから写真を撮ってみようと思った。

 写真を撮るのは以外にもむずかしく、ピンボケなどが起きたり少しのずれで美しさが減ってしまうのが現実だった。被写体がないため上手くいくわけもなくなんとなく丁寧に撮影をしている。窓際に烏がいた。それを撮影しようとしたのだが以外にも上手くいった。綺麗に烏の目に焦点が合い翼の飛ぶ様子を鮮明に撮影できた。嬉しかったと思った。初日に撮影をして上手くいったというのがとにかく嬉しかった。誰かに見せたいと思っても誰もいなかった、寂しいな。

 「ただいま、今日も由香可愛かった」

「こちらこそありがとう」

「一君は写真撮れたかな」

 とても汗だくな様子で帰ってきた。血気盛んな男女がこちらに来る。少し味気ない気持ちにを押し殺されそうに。

「どう、上手く写真撮れた」

「一応、こんな感じです」

 さっき撮った烏の写真を見せてみた。少し小言で目の前にいる二人が話し始めた。何か問題があったのかと思ってしまう。不安になるが。

「すごくいいじゃん、これどうやって撮ったの」

「えっと、目の前にいたから撮ったっていう感じです」

「すごい、やっぱり君写真部に入ってよ」

「その前に、俺の事写真撮ってみてくれない」

「分かりました」

 少し時間が空き椎名君の写真を撮り始めた。幼いころ昆虫などの写真撮影をやっていたからなのか上手く撮ることができている。人を撮ったことはないがその経験が今に生きているのだということに。

「やっぱり、上手いや」

「今日から部員という事でよろしく」

「は、はい」

 半ば強引に写真部に入れられた。結局断ることもできず。しかし、ここで居場所というものが出来たという安心感も同時に襲ってきた。嬉しいということなのだろうか。誰かが必要としてくれているという現実もまた美しい物があるのかもしれないと。


 

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