とある姫の一生〜旦那元気でずっと留守が最高〜
ラスボス討伐後。王城にて。
「わぁああ〜勇者万歳! 姫様最高!」
民主が熱狂している。世界は、平和になったのだ。姫こと私、シェヘラザードは、元勇者である旦那たちの方を振り向いた。
そう、旦那たち。
私は、四人の旦那と一妻多夫の生活を始める…。
★★
その夜。
「えー! しに痛い」
(おい! めちゃくちゃ痛いぞ)
「…姫様。ネットでも検索できないような、地方のスラングはお控えくださいませ」
「あいつら、俺を姫様だと知りながら、存分にまわしやがった」
「…一応、夫婦ですので…少し夜の営みが激しすぎたようですね」
私、シェヘラザードは、執事のジョニーに文句を言っていた。
三歳の頃からずっと一緒のジョニー。俺…コホン。私が、一目見て気に入った。王城の庭で倒れていた子供。
「初めての人がジョニーで良かった。」
「それは光栄です」
実は、私は結婚前に、
「ジョニー以外の男のとこに嫁にいくなんて!」
と、避妊具を使って抱いてもらってた。
四人の旦那たちは、割かし乱暴だった。
★★
三カ月後。
「…気分が悪いわ」
「姫様、お労しや」
私は、ジョニーに寄り添ってもらいながら、悪阻に耐えていた。
私は、若かったこともあり、光の速さで妊娠した。どさくさに紛れて、ジョニーも避妊具無しで抱いてきたので、五人の誰の子供か分からない。
…まぁ、どうでもいいか。
★★
その後、私は、常に妊娠している状態になった。父である王様が、四人の旦那たちに、
「女王は姫で、おまいらは種馬だから、精々少子化を解消するために励め」
と、言い放ったことにより、旦那たちは、私が妊娠していない時は、こぞって寝込みを襲うようになった。
…普段会わないから、燃えるのよね。
戦士だったウィリーは、脳筋でホントに馬鹿だけど、正義感と身体だけは強いから、騎士団長として大活躍してる。天職じゃないかしら。ただ、ウィリーに似た子も脳筋なんだけど…。
シーフだったライリーは、密偵長。スパイが上手すぎて、肝心な時にライリーが見つからない。だけど、私が呼ぶと犬みたいに走ってくるところがかわいいのよね。ライリーに似た子は、かくれんぼが上手すぎて、侍従たちが泣いてるから、そこはどうにかしないと…。
白魔術師だったルキウスは、研究室から出てこない。でも、たまに私の様子を見にきてくれて、悪阻に効く魔法を開発してくれたのは嬉しかった。白魔術の研究と、エリクサーの自作の研究をしているみたい。ルキウスの薬は、量産して国民の皆に行き渡るくらい安価。しかも、とっても効くから、国民に一番愛されてるのは、ルキウスかもしれない。ルキウスに似た子も、研究室から出てこないんだけど…。
黒魔術師だったタイラーは、召喚術を駆使して、世界を飛び回っている。いつも空からパトロールしてくれる感じ。陸のウィリーと、空のタイラー。この国の最強の軍隊なの。攻めてくる馬鹿はいないけど、魔獣は、いなくならないので、いつも適度に狩ってくれてる。タイラーに似た子は、タイラーと一緒にパトロールに行って、空から帰ってこない…。
そして、執事ジョニーに似た子は、私から四六時中離れない。年々執事が増える感じ。
★★
こんな感じで、いつも妊娠していた私だけど、悪阻に効く魔法のお陰で、妊娠しながら、臨月までバリバリ政務をこなせた。大きなお腹でどのパーティーにも出席して、社交を欠かさない私を、みんな奇異の目で見てたけど、女は寝てろって誰が言ったのよ?
★★
…そして、四十歳になった私。ピタッと妊娠しなくなった。
子供が、三十人もいたからそろそろ…と思っていたので、本当に嬉しかった。
旦那たちか焦って寝込みを襲いにくるのだけがアレだったけど…。
★★
孫が百人を超えて、名前を全く覚えきれなくなった頃。玄孫を抱いた私は、百歳を超えていた。
車椅子に乗りながらも、政務をバリバリこなす私。しかし、私の百五歳の誕生パーティーの日。
「ぐっ!」
私は、大好きなチョコレートケーキを頬張りすぎて、喉に詰まらせた。
…そのまま倒れて窒息死。
なんて素敵な人生なの。葬儀に来た親族がいすぎて誰が誰だか分からなかったけど。
天国に行ったら、五十で死んだジョニーがいて。
「遅い。遅すぎるよ。姫…」
花畑で幸せよ。私。