表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【邪祓師の腹痛さん一巻】@富士見L文庫より発売中  作者: 深川我無@書籍発売中
水鏡案件 その壱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/91

旅館㉓


「ありえないありえないありえないありえない」

 

 女将は部屋を出てからずっとぐるぐると回りながらつぶやいている。

 

 

「女将!! 警察と救急車を!!」

 

 しびれを切らした板前の三谷は女将の千鶴に向かって大声をだした。

 

 

 女将は立ち止まると三谷を睨みつけた。あまりの形相に三谷は言葉を飲み込む。

 

 

「わかってるわよ!! そんなのは後でいくらでもできる!! それより先代が死ぬなんてありえないのよ!!」

 

 

 女将は叫んでそう言うと親指の爪を噛みながら一階へと向かった。

 

 

 三谷も慌てて後を追った。こんな場所に独り残るなんて耐えられやしねぇ……

 

 

 

 

 女将が戻ってきたのを見て幸恵と妙子の顔にも緊張が走った。

 

「お、女将……どうでしたか……?」

 

 震える幸恵に代わって妙子が尋ねた。

 

 

 

「死んでたわ」

 

 

 

 女将は感情の籠もっていない声でそう言うと、妙子に警察と救急に電話するように指示を出す。

 

 

 

 妙子は黙って頷くと本館へと伸びる渡り廊下へ駆けていった。

 

 

 

「三谷さん。従業員を集めてちょうだい。幸恵さんもしっかりして。実の親が死んだわけでもなし……いつまでも座ってたら邪魔よ!!」

 

 

 

 女将の剣幕に幸恵はコクコクと頷くとふらつきながらも立ち上がった。

 

 

 三谷が他の従業員を呼びに本館へ向かうと、妙子が血相を変えて戻ってきた。

 

 

 

「妙子さん電話は済んだんですか?」

 

 

 女将が尋ねる。

 

 

「そ、それが……電話が繋がらないんです……」

 

 

 ええぇ!? と苛立った声を上げて女将は妙子を睨みつけた。

 

 

「まったく!! 自分でかけます」

 

 

 千鶴ドタドタと受付の黒電話まで駆けていくと受話器を取った。受話器からは話し中を告げる電子音がツーツーと聞こえるばかりだった。

 

 

「なんなのよ!!」

 

 

 

 

 

 

 女将は厨房に走っていくと、つまみ食いしていた庭師の坂東に向かって怒鳴った。

 

 

「坂東さん!! こんな時に何つまみ食いなんかしてるんですか!? たった今先代が死にました!! 電話が通じないの!! すぐに山を降りて警察と救急車を呼んできて頂戴!!」

 

 

「ぬあああい」

 

 

 坂東は口いっぱいに食べ物を詰めたままモゴモゴと返事をして慌てて勝手口から外に出て行った。

 

 

 

 軽トラの走り去る音を聞きながら女将は頭を抱えてつぶやく。

 

 

 

「どうしましょうどうしましょうどうしましょう」

 

 

 

 唐突に思い立って千鶴は再び別館へと向かって走っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ