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第32話 おびえたドラゴン

「グ、グオー! グオーグオー!」


 ダンジョンで宝箱を見つけて、守るドラゴンとどう戦おうと思っていたんだけど、アレは本当にドラゴンか不安になってきた。


 ドラゴンが僕に気づいたみたいだけど……。


「えっと……。えぇっと……」


 反応に困る。


 今のは何だったんだろう。


 咆哮……? いや、何だかもっと人の声で鳴き声を真似たみたいな感じがしたというか。


 とにかく、宝箱を守るドラゴンからは威圧感のようなものを感じない。


 あれって本当にドラゴンだよな?


「グ、グオー。グオオー」


「…………」


 うん。なんだろう。完全に威厳が足りていない。


 どちらかというと親しみやすさを感じてしまう。


 あのドラゴンならダンジョンの外にいても驚かない気がする。

 いや、実際にいたら驚くんだけど。


「グオ、グオ! グオグオ!」


 まあでもお宝を取られないように守っていることは確かだ。


 距離があるからか攻撃はしてこないけど、宝箱が僕に取られないようにしていることは伝わってくる。


 ドラゴンが守る宝箱を調べるためにも申し訳ないが、倒さないといただけない。


「えっと。探索してるから倒させてもらうけどいいかな?」

「グウウウ!」


 僕が敵意を明確に伝えたからか、先ほどよりも低い声でうなっている。


 それに、嫌って言ってる気がする。

 でも、ここはダンジョン。


 今までだって僕も命を狙われてきた。


「よっ、ほっ」


 どうやら、最終警告ということだったらしい。


 ブレスと長いしっぽによるなぎ払い攻撃。


 今回は僕から先にしかけた形になったけど、攻撃は単調。先ほどの謎の魔獣よりも弱い。


「グオッ! ぐおぉ……」


「よっとっと」


 うん。見切った。


 あまり戦い慣れていない感じがする。何だろう、僕がケガをしないように、あくまで本当に警告としてしか攻撃をしてきていない。


 当てる気がないような感じ。

 あまり激しくやって、何かに気づかれるのを恐れているような。


 でも、そこまではわからない。


 攻撃が見えたタイミングで僕はドラゴンの体をなぎ払った。


「軽っ」

「グワー。アあぁ……」


 まるでサーピィと相対した時のように、相手について知っていることと、相手の実力が合っていない感覚。


 見た目ほどの重さもなく、ドラゴンを軽々と飛ばしてしまった。


 ドラゴンはそのまま壁にぶつかると力なく倒れ込んだ。


 さらに、ドラゴンの体は小さくなると、ドラゴンの体を維持することすらできなくなったのか、女の子のような姿にまで縮んでしまった。


 僕の知るドラゴンは人に擬態することもあるって聞いたことがある。でも、逆ってこと?


「……グ……」


「生きてる?」


「……ぐ」


 気を失っているだけみたいだ。


 トドメは刺さないでおこう。

 なんだかトドメを刺すのは悪い気がする。


 お宝の方がガラ空きだから、そっちだけ確認させてもらうことにしよう。


「中は……。ん? あれ?」


 ほとんど入っていない。


 さっき宝石を拾ったから、もっといっぱいあるかと思ったけど、


「いや、底の方に何かある! ……これは、ぬいぐるみ?」


「……あたしのお友達のぬいぐるみ……。大切なお宝だけど、きみにあげる。あたし、負けちゃったから……」


「え」


 いつの間にか意識を取り戻していたドラゴンが、カベに寄りかかりながら言ってくる。


 ボロボロの、歴史を感じさせるぬいぐるみ。


 ドラゴンがぬいぐるみを大切にするイメージはないけど、でも、他にない唯一の宝物だということは、これしか中に入っていないことからもわかる。


 とても大切なものなんだろう。


「これは、もらえないよ。とても大切なものみたいだから」


 僕はぬいぐるみを宝箱の中に戻し、同じようにフタを閉めた。


 これでいい。


「でもっ!」


「あげるって言ってたけど、何だかとてもさみしそうだったから。それに、僕の求めていたお宝じゃないから」


「そ、そっか……」


 ちょっと安心したみたいでよかった。


 それにしても、僕がこんなにゆっくりしていても仲間のドラゴンが戻ってくる気配もやってくる気配もない。


 確か、もともとは目の前のドラゴン以外にも気配があったはず。


 ドラゴンの協力関係というのは薄いのか、それとも……。


「……でも、あたし……」


 我に返ったようにドラゴンは再び怯え出した。


 まずい、あんまりじっと見ていたから、怖がらせてしまったのかもしれない。


 震え出したドラゴンに大丈夫なんて言っても信じてもらえないだろう。


 なら、


「きみはここで何をしていたの? 物としてのお宝の代わりに、きみの経験というお宝を教えてくれないかな?」


「それなら、いいけど……」


 周りを確認するように周囲の様子をうかがってから、ドラゴンは立ち上がって僕の方まで歩いてきてくれた。


 ドラゴンならお宝を溜め込んでいるはずと思って来たけど、何もなかった。


 伝承が正確じゃないってことは知ってたけど、ここまで違うとは思っていなかった。


 なら、サーピィのように話を聞くというのが僕たちのプラスになるはず。


 ドラゴンはぬいぐるみを取り出し、大事そうに抱きしめると、少し落ち着いた様子で僕を見てきた。


「それは」


「あっれー? 何してんの?」

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