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短編とかその他

天才科学者の人生は偽りで満ちていた

作者: リィズ・ブランディシュカ




 僕は子どもの頃から頭が良かった。


 いろいろな賞をとって天才だともてはやされてきた。


 科学者として何度も功績をあげて、出世。


 国の要人とも顔を合わせるようになった。


 そんな俺はどうやら、人類の夢を一つ叶えてしまったようだ。


 ついにタイムリープの方法を発見してしまった。


 さすがにこの発見には胸を躍らせずにいられなかった。


 今まで何をやっても、わくわくしたことはなかったけれど、これには達成感があった。


「おめでとうございます」


「素晴らしい発明だ」


「これで世界はより良くなりますね」


 たくさんの称賛の声は、最初は何も感じなかったけれど、自らが発明したタイムリープマシンのことを考えると、胸のうちがドキドキしていた。


 そのうち、にこにこした顔の者たちに囲まれるのも悪くないと思うようになった。


 しかし、さっそく実験に入ろうといった段階で、欲に目がくらんだ人間が妨害をしてきた。


 研究所に、武器を手にした者たちが乗り込んできたり、予算がおりなくなったり、同僚たちが失踪するようになった。


 そんなことが続いたため、実験どころではなくなってしまった。


「この力は、我々が手にするにはまだ早すぎたのだ」


 人類の夢だったタイムリープは次第に人々から、恐れられるようになった。


 けれど僕は研究をやめなかった。


 人々の努力を無駄にはできないと思い、無我夢中で研究を続けていた。


 実験に費用も資材も使えなくなったから、自分を実験台にして。


 そんなせいなのか、気がついたら、自分一人でタイムリープできるようになっていた。





 過去に戻った僕は、タイムリープの成功に喜んだ。


 けれどタイムリープを証明する事ができないのが問題だった。


 僕がおこなったのはファンタジーの力で、化学の力ではない。


 だから、仲間たちの苦労が報われなかった。


 そのため、僕は時間をかけて、また様々な方法でタイムリープの研究を進める。


 けれど何度繰り返してもうまくいかない。


 必ず邪魔が入った。


 なぜなのか分からない。


 ーータイムリープ研究は完成しないーー


 それはまるで、変えられることのできない運命みたいに思えた。


 強い意志で神様が定めているかのような。


 その内、僕は研究を諦めて、凡人として生きることになった。





 吹っ切れた後の人生は新鮮だった。


 今まで研究ばかりしてきたから、普通の子供らしいことなんてしてこなかった。


 最初の人生からずっと、勉強ばかりだったから。


 何十回もタイムリープした僕は、人生をうまくやっていくコツをほんの少し身につけていた。


 それは集団からはみ出ないこと。


 みんなと同じように過ごすこと。


 そうする事で、他の人間は僕を天才扱いしない代わりに親しみを持って接してくれた。


 最初の人生は何もかもにこにこした顔の人間しか身の回りにいなかったが、最後の人生には怒りや悲しみの顔も多くあった。


 タイムリープ研究を共同で行った仲間たちの思いは果たせなかったけれど。


 僕は人並みの生活を手に入れて、新たな夢を見つける事ができた。


 大きくなった僕は、小さな個人店を地域食堂を開いて、近所の人たちが集まれるような居場所を作った。


 その内、いい人も見つけて結婚。


 家庭を持って平凡な人生を歩んだ。






 俺はタイムマシンを開発した。


 邪魔をしてくる者たちはいたが数々の妨害をかいくぐり、完成させることができた。


 タイムリープ研究から横にはそれたし、数十年かかったが、死ぬ前に完成できてよかった。


 これで仲間たちの思いを果たせる。


 そう思っていたが、仲間たちはただ栄誉がほしかっただけだった。


 にこにこした顔のそいつらは、嘲笑の表情になって銃をしている突き付けてきたのだ。


 俺は仲間たちに殺されそうになった。


 今まで支えてくれたのは、励ましあってきたのは、偽りだった。全部俺の成果が目当てだったのだ。


 そこには、絆らしいものなんてなにもない。うつろな関係があるだけ。


 なんて無駄な人生だったのだろう。


 だから、俺は昔の自分に伝えることにしたのだ。


 どうにかしてタイムマシンで過去に戻って、愚かな者たちのために人生を使うなと。


 幼い頃お前をほめそやした連中は、お前のことなど見ていない。


 そんなうつろな声に全てを捧げるなんて馬鹿げている。


 人並みの幸せをつかんでくれ。


 だから、過去に戻った俺は、金で雇った者たちに様々なことをやらせた。


 何日か立った時、俺の体が消えていくのが分かった。


 きっと未来が変わったのだろう。


 この目で確かめられないのは残念だ。


 俺は自分の幸せを願いながら、目を閉じた。



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