第九十八話 バトルロイヤル
体育祭は、午後になった。
お昼ご飯を食べて、またログインする。
家族が応援に来て、一緒に食べるみたいなことがないから、いつも通りのお昼ご飯だった。
「弓組は、1年の中では1位みたいだね」
「全体でも11位なら、頑張っている方じゃないかな」
まずまず健闘しているんじゃないだろうか。
惜しいところもあったけど、十分という気もする。
やはり、この年代だと、1年生まれが違うだけで能力に差が付くようだ。
31歳と32歳なら、ほぼ差はないんだろうけど。
競技は、午前中の予選で勝った種目の決勝が行われることが多い。
一応、素手で戦う徒手競技や鍵開け競争なども行われて、そのまま1位が決まっていた。
そして、残る種目があとひとつになる。
最終種目のバトルロイヤルだ。
「さあ、田所さん、ついに残る種目も最後のひとつになりました」
「このバトルロイヤルには、各クラスの最強プレイヤーがエントリーされていると聞きますので、注目したいですね」
この時点で、1年弓組みは全体で十位だ。
優勝すれば、結構上がるんだろうか?
「砂緒ちゃん頑張って!」
「程ほどに頑張るよ」
わたしは、観客席を離れて、フィールドに向かった。
最後の競技だけあって、みんなが注目している。
選手がフィールドに集まると、瞬間的に転送が行われた。
ランダムで3グループに分かれたんだろう。
30人参加だから、1グループ10人でバトルロイヤルだ。
ルールでは、4人以下まで減ったら、そこで予選終了のようだ。
「…………」
さて、どうしようかな。
みんな体操服だから、どんな職業とかスキルとかは、あまりわからない。
強いて言えば、三年生の身体が、やっぱり大きいということだろうか。
ゲームだから、身体の大きさは関係ないのかな?
それとも、身体が発育するにつれて、脳も発達している?
バトルロイヤルの鉄則は、戦わないことだ。
なるべく戦わないようにやり過ごすしかないかな……。
円の中に参加選手が集められる。
杖を持っている人が少ないから、魔法使いは少ないようだ。
魔法使いは、火力は高いけど、耐久力に難があると思われているんだろう。
タンク型で耐えるか、バランスのいいアタッカーか。
そういう作戦が主流のようだ。
わたしは、なるべくみんなから離れるように初期位置を調整した。
みんなも同じで、円の外側で背後を取られないように位置する。
誰でもそうするよね。
そうなると、わたしの敵は右の人か左の人か。
「最終競技、バトルロイヤル、初め!」
「さあ、バトルロイヤルが始まりました!」
「え?」
すると、いきなり自分のいる位置が変化した。
みんなが中央に集められている!
乱戦をしろという思し召しなんだろう。
わたしは、サッとバックステップして距離を取った。
乱戦に巻き込まれないように……あれ?
残りの9人全員がわたしの方を見ている。
まさか……狙い打ち!?
ずるくない!?
「おーっと! 学園ランキング一位の一橋選手を全員で攻撃かー!?」
「悪いな1位!」
「最初はもちろん、お前がターゲットだよ!」
「バトルロイヤルは、一番強いやつを最初に全員で倒すのが鉄則だぜ!」
「…………」
そういうつもりなら……。
迫ってくる9人が集まるのを見る。
ここだ!
「ユニットオン」
わたしは、パワードスーツを着込んだ。
「!?」
「やらせるか!」
「全弾発射!」
3つのオプション装備を全て撃ち切る。
範囲ビーム攻撃の高圧波状粒子砲。
ジェネレータ出力を上げて、いいダメージが出るけど、燃費が悪い。
連続範囲攻撃の密集型ミサイルポッド。
自動追尾なので命中率が高く、全て固定ダメージなので、安定した火力が魅力だ。
肩に背負った反物質陽電子キャノン砲。
キャノン砲といってもビームや弾が出るわけではなく、敵のいる地点にエネルギーの爆発を起こして、周りを巻き込むみたいな武器だ。
そして、手に持ったビームガン。
正式な名称はなんていうのかわからないけど、これを何発も乱射していく。
そして……爆発が収まると、そこに残っていたのは2人だけだった。
きょとんとしている。
「Bグループは一橋選手が圧倒! 3人が勝ち抜けです!」
わーっと歓声が聞こえた。
でも、これで、次の決勝ではパワードスーツが使えないだろう。
ジェネレータの出力を強くしているので、タンクの回復が間に合わない。
決勝でも、まずわたしを倒そうという作戦だったら困るな。
そう思っている内に、他の2グループの試合も終わっていた。
どちらも4人ずつ勝ち残っているようだ。
休息の時間はなく、すぐに決勝戦開始となった。




