第九十四話 パワーレベリング
「ここが未クリアの階層だネ」
17階層は、岩場だらけの荒野だった。
木とか草とかはまばらで、基本的には枯れている感じだ。
ウエスタンな感じ? ちょっと違う?
「リサちゃんとかいるのかな?」
「いるでショ」
「敵が強いと思うから、用心していこう」
周りに注意しつつ、歩き始める。
プレイヤーが、たくさんいる感じではなかった。
攻略を頑張っている人達は、どこかに集中しているのかな?
ボス部屋がありそうな場所とか。
「サボテンとかあるね」
「メキシコがモチーフなのかナ?」
メキシコと言われれば、そんな感じはする。
行ったこと無いけど。
「採取品だ」
岩場の影に光っている点がある。
神秘系とか取れたら、期待しちゃうんだけど。
「拾ってみよウ」
エミリーが光る点をまさぐる。
「なんだったの?」
「亜鉛だネ」
「亜鉛? 鉱物が取れるマップなのかな?」
「わたしも取ってみよう」
優が点を探る。
「えーとね、銅だって」
渋い鉱物が取れるんだな。
ミスリルとかそういうのじゃないんだ。
「わたしは……銀だ」
光点をまさぐると、手に引っかかる感じがしてゲットできる。
「やっぱり、鉱物が取れるんだね」
「やっぱりメキシコかな? 昔は銀がたくさん取れたらしいヨ」
「ふーん」
メキシコ料理とか、レシピがあるのかな。
わたしはそっちの方に、ちょっと興味がある。
「不遇だった鍛冶職人が息を吹き返すかもしれないマップだネ」
「鍛冶職人って不遇なの?」
「いい品物は中々できないし、鉱物が高いかラ」
ガチャやドロップでも、武器や防具をゲットできるからそっちに目がいきがちだ。
でも、安くて丈夫で性能がいい武具といえば、職人製の武具だった。
鍛冶職人の作る武具の良さは、何と言ってもステータスだ。
初期装備にはステータスがいくつ上がると書かれているんだけど、レア度が上がってくるとわからなくなる。
でも、鍛冶職人の作る武具はステータスが全部見えているものだった。
固定ダメージスキルだとステータスが重要になるから、ガンナーとかでは、鍛冶職人が活躍するかも知れない。
「このマップでたくさん鉱物が取れるなら、楽になるんだね」
「じゃあ、ドロップバーストのスキルを使おう」
「そうだね、敵をいっぱい倒すならやっておいた方がイイ」
イベントのお宝ダンジョンでゲットしたレアスキルだ。
「<ドロップバースト>」
三人でスキルを使う。
そこに、大きな蛇の姿が見えた。
かなり大きい、ジャイアントアナコンダだ。
「敵は1匹だヨ」
「やろうか」
「チャーチル!」
バンとエミリーの戦車が弾けて、ウォークライがかかる。
アナコンダは、こちらに気がつくと、戦車を威嚇していた。
「サトちゃん!」
サトちゃんが、ぴゅんぴゅんとレーザーを出す。
ちょっと……弱そうだった。
わたしも、手に持った長銃を撃つ。
大きくて長細くて、ちょっと怖い。
ズキューンと音がして太いビームが出た。
でも、ダメージは全然だ。
「ユニットだけじゃ無理かな?」
アナコンダがチャーチルを攻撃すると、一撃でへろへろになる。
まぁ、いわばレベル1でこんなところにきたら、そうなるよね。
毒は効かなそうだけど。
「<スピリットスートム>」
風の精霊がたくさんいるので、これを使った。
アナコンダが弾けて消える。
すると、ぴこんぴこんと10レベルくらいユニットがレベルアップした。
「おおっ! これこれ、これだヨ!」
「すごいねぇ」
「ちょっと気持ちいいね」
そうだ、ヤキニクも出しておこう。
「ヤキニクオン」
すると、ボンテージ姿の小さなサキュバスみたいなペットが現れた。
「なんだ、オレ様の力が必要になったか?」
「きゃーっ! かわいい! これ砂緒ちゃんのペット!?」
かわいいもの好きの優がかぶりつくように見る。
「生意気だよ、かわいくない」
「なんだと、チビスケが!」
こんなに小さいチビにチビと言われても、何も思わない。
「すごいしゃべるんだネ」
「それだけがセールスポイントだと思う」
「強いの?」
「戦うの初めてだから、わかんない」
どうせだから、一緒にレベル上げをしよう。
「チャーチルにヒールするね」
「お願イ」
「<ヒール>」
チャーチルが回復して元気になる。
「ユニットも回復できるんだ」
「よし、どんどん行こウ!」
休み休み、2時間くらい戦うと、ユニットもそれなりの強さになってくる。
ヤキニクは魔法使いだけど、エクスバーンを覚えるまで、まだまだかかりそうだった。
 




