表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/164

第八十六話 第三回イベント決着 ※


 悔しい。


 ここまでやったのに……。


「…………」


 でも、今の状況は、割と奇跡的なものだった。


 蒼天騎士団側と、レッドプレイヤー側が、きれいに別れている。


 そして、レッドプレイヤー側の最前線にわたし達……。


 これなら、味方を巻き込むこともない。


 やれる。


 やろう。


 わたしは、装備を着替える。


「ステルスマントオン」


 これで姿が消えたはずだ。


「えっ!?」


 優が驚いている。


「何をするの、砂緒ちゃん!」


「大丈夫、全部倒すから」


「砂緒ちゃん! 危ないことしたらダメだよ!」


「やるなら、私もやりますよ!」


 へろへろのリサが立ち上がる。


 MPは回復したけど、まだ疲れているようだ。


「ワタシ達は下がろウ!」


 エミリーが優とリサを引っ張っていく。


 これで、後顧の憂いもない。


 レッドプレイヤーが迫ってくる。


 時間は、10秒あれば足りるはず。


 配信者の悲鳴が聞こえてくる。


 後ろの喧噪も、酷くなっていた。


 立ち向かおうとする声、いったん退避しようという声。


「落ち着いてください! まだ戦えます!」


 名塚さんが、必死にみんなをまとめようとしている声……。


 でも、大丈夫。


 わたしに……任せておいて!


「<魔法少女変身>」


 空中に浮かび上がって、きらびやかな演出が始まる。


 わたしの着ているアバターが、違うものに書き換えられていく。


 手のグローブ、足のブーツ、そしてスカートと上着、背中の羽根っぽい飾り、どんどん輝きが増していく。


 そして、五秒ほどの時間が経過したあと、わたしは魔法少女になっていた。


 ステルスマントの性能が勝つか、魔法少女変身スキルが勝つか。


 でも、レッドプレイヤーの動きが止まっていた。


 少し、惚けるような感じでこっちを見ている。


 ステルスマントさん負けたかな……。


 こんな、配信もされている中で目立つなんて……。


 手には弓が握られている。


 初めて使うスキルだ。


 どうせなら、思いきりいけ!


「<シャインソウルブレイク>」


 その弓を引き絞り、レッドプレイヤーの集団を目がけて発射した。


 辺りが真っ白になる。


 光の奔流がレッドプレイヤーを飲み込んでいく。


 そして……。


 悲鳴も聞こえないそこには、何もなくなっていた。


 あれだけいたレッドプレイヤーが、ひとりもいなくなっている。


 そして、唐突に、宝箱が大量ドロップした。


 強奪の上位版スキル、略奪のスキルだ。


「やったあああああぁぁっ!」


「勝ったぁぁぁぁっっ!」


 歓声が聞こえてくる。


 蒼天騎士団も、配信者も、みんなも……。


 わたしは着地すると、後ろを確認する。


「み、見えてた?」


「大丈夫だヨ。真っ白な人がいただけで、誰だかはわからなかっタ」


「砂緒ちゃん、すごーい!」


 わたしの居るところに、優が抱きついてくる。


「揺らさないで! 見えちゃうから!」


 ステルスマントからはみ出した魔法少女のコスチュームが、チラチラと見えていた。


 リサが、呆然とわたしを見ている。


「砂緒は本当にすごい、お兄ちゃんよりもずっと……」


 それは本当に神妙な顔だった。


 どうしたのかな?


「また来るかも知れんぞ!」


「体勢を立て直せ!」


 そこに、配信をみていたのか、援軍がポツポツと駆けつけてくる。


 ランドマークの方で、モンスターが枯渇したのかも知れない。


「もう大丈夫かな?」


 10分以内にレッドプレイヤーが来ないなら、変身を解いても同じだよね?


 魔法少女変身スキルは10分間しか保たない。


 なら、もう変身を解いてしまおう。


 アバターが元に戻る。


 そして、ステルスマントを脱いだ。


「もう今日は、精神的に無理」


「ははは、ワタシも落ちようかナ」


「私は……もう少し戦っていきます」


「じゃあ、私も残るね」


 リサと優は残るみたいだ。


「でも、このドロップどうするの?」


 地面いっぱいの宝箱だ。


「みなさんで、宝箱を開けましょう! レッドプレイヤーの戦力を削ぐんです!」


 名塚さんの声だ。


 そして、みんながわっと広場にかけだしていく。


「じゃあ、落ちるね」


「お疲れ様ー」


「また明日ネ」


「明日は朝から?」


「うん、9時くらいにはインすると思う」


 何せイベント中の土曜日だ。


 やることはいっぱいあるだろう。


「私は、もっと早くにインしてるから、9時くらいになったら孤島に行くよ」


「ワタシも孤島にいるヨ」


「私も、パーティー抜けちゃおうかな」


 リサがそんなことを言う。


 せっかくのトッププレイヤーなのに。


「じゃあ、イベント中は、一緒に遊ぼうよ」


「はい、そうします、それじゃあ、また明日」


「またー」


 それで、わたしはログアウトした。






第三回イベント配信をまったり見るスレ


614、あれ、砂緒ちゃんだよな?


615、配信者の動画を色々見てると、砂緒ちゃんが突然画面から消えるな。


616、姿を消すスキルかアイテムがあると。


617、そして、何かキラキラしてとんでもないエネルギーを出すと。


618、あれ、なんなんだろうな?


619、ちらっと見える動画あるけど、白っぽい衣装がチラチラ見えるんよな。


620、画像荒いけど、羽根っぽいのも見える気がする。


621、羽根っぽくて白っぽい……天使か?


622、妖精かも知れん。


623、砂緒ちゃん、人間やめたんか。


634、いや、変身したと考えれば説明は付く。


635、天才現る。


636、変身したんなら、魔法少女やろ。


637、待て、願望がだだ漏れだぞ。


638、魔法少女に変身って、何かに選ばれたんか?


639、マスコットキャラいる?


640、まて、まだそうと決まったワケじゃない。


641、でも、イベントは終わりだな。


642、この出口を押さえつづければ、勝負は決まっただろ。


643、運営が調整してくるか?


644、とんでもないボスが出て来たりしてな。


645、もう夜だから、スタッフは帰宅しています。


646、バイト頑張れ。


647、今回のイベント、割と絶望的だと思ったんだけどな。


648、どうしてこうなった。


649、レッドプレイヤーの襲撃は、これからもあるかも知れん。


650、蒼天騎士団、人増えるんだろうな。


651、入るなら今のうちか?


652、取りあえず、オレもイベントやるわ。


653、もう遅いけどな。


654、俺のイベントを返してくれ。


655、時計塔は人手不足になるぞ。


ここまでで「面白かった」「つづきも楽しみ」「砂緒頑張れ」など思ってくださった方は、ブクマや評価頂けると励みになります。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ