第七十八話 初めての集団戦
建物には耐久値があって、攻撃したら壊れる。
コップや椅子と同じオブジェクト扱いだ。
この押し寄せてくるモンスターは、酒場を狙っているんだろうか?
酒場というか、ランドマーク?
「パーティー単位で戦ってくれ!」
「負傷者は一旦下がれよ!」
「無理しないで他のパーティーと代われ!」
「右のパーティーが決壊したぞ!」
割と阿鼻叫喚だった。
こんな集団戦はしたことがない。
もうモンスターとの戦争だった。
「あの、決壊したところを埋めよう」
「わかりました!」
わたし達のパーティーにタンクはいない。
必然、わたしが敵を引きつけることになる。
敵は、見たことのない亜人タイプ8体だ。
二足歩行で武器を持っている。
肌が硬そうにテラテラ光っていた。
なんとなく強そうだ。
ウォークライを使えないから、敵を集めることはできない。
上手くタゲを取らないと。
決壊したパーティーが入れ違いになって、後ろに逃げて行く。
「スマン! 頼む!」
「任せテ!」
そして、わたしとエミリーが突っ込んで行った。
優と名塚さんは、後衛だ。
「<トルネードクレスト>」
エミリーは、すっかりこの技が気に入ってしまったみたいだ。
槍を頭上で振り回して竜巻を発生させるのは、見てても格好いい。
8体に満遍なく、ダメージを与えていた。
「ヨシ!」
でも、8体は動じずに、行く手を塞ぐわたし達に攻撃してくる。
剣や斧、槍、接近戦主体の亜人のようだ。
「グオオオォォォッ!」
わたしは、剣と槍の攻撃を四回避ける。
二回完全回避が混じっていたけれども、二回は自力で避けた。
やっぱり、小さいバックラーでも、あれば断然防御がしやすい。
エミリーの方に二体の敵が行っていた。
斧の攻撃を槍で弾いたけど、メイスの攻撃を喰らっている。
「うグッ!」
結構痛そうだ。
この亜人は、強い敵かも知れない。
残りの二体は、後衛なのか少し距離を取っている。
「<分身>」
「<エアリアルレイブ>」
二体を宙に浮かべて、六連撃の二回攻撃をおみまいする。
「ギャオオオォォォッ!」
二体がデータの藻屑と消えた。
「<クアドラブルエアブレード>」
そして、すぐに、もう一体も倒す。
「ん?」
そこで、大剣の固有スキル、ライドストライクが発動した。
敵に攻撃を当てると、確率で発動っぽい。
これで、全ステータスが33%アップだ。
「<ヒール>」
優が、エミリーをヒールした。
バフをかける間もなく戦闘が始まってしまったので、優はやりにくいだろう。
「<エクスバーン>」
名塚さんの爆発魔法だ。
古代語魔法の定番威力魔法で、魔法使いは、取りあえずこれを目指してレベルを上げていくらしい。
全てにおいてバランスの取れた、いい魔法らしかった。
エミリーの方の二体が爆発に巻き込まれている。
ほどほどにダメージが蓄積しているようだ。
エミリーは、盾がない分、鎧はちゃんと着ている。
重武装というほどではないけど、結構カチカチだった。
「<トリプルアタック>」
エミリーが目の前の敵を、三段突きで攻撃する。
グサグサズバッと、小気味のいい音がした。
アルケミストでランサーで軍師。
エミリーは優秀だ。
「<グランディア>」
わたしは、残りの一体を乱数上の最大ダメージを出せるスキルで倒していた。
「グオオオオン!」
割と、えぐいダメージが出ていると思う。
使う前は最大値とか誤差かなと思ったけど、ちゃんと使える技のようだ。
「あっ」
亜人の後衛が呪文を唱えている。
何かわからないけどマズイ。
「<オブストラクション>」
「!!」
スカウトのスキルで、魔法を阻害した。
そしてもう1匹に新装備のバックラーを飛ばす。
「フォーチュンバックラーオン!」
腕をそちらに向けると、バックラーがビュンと音をさせて飛んでいった。
そして、亜人の頭を破壊して戻って来る。
「…………」
思っていたよりもすごいミサイル攻撃だ。
割と強めだと思う亜人を、一撃で倒してしまった。
「<エクスバーン>」
名塚さんの二発目のエクスバーンで、エミリーの前の一体が倒れた。
「<ブリッツフォース>」
とどめは、優の攻撃魔法だった。
宝箱が落ちる。
わたしは、さっと宝箱を調べた。
罠はない。
中を開けると、秘宝石という知らない宝石が入っていた。
「結構モンスターが強いネ」
「見たこと無いモンスターばっかりです!」
周りを見ると、確かに見たことのないモンスターが多かった。
これから地下に潜れば出会うんだろう。
「ぼさっとしてんな! すぐ次のモンスターを倒せ!」
隣のパーティーから文句を言われてしまった。
うーん、割と劣勢かな?
敵はまだまだ押し寄せてくる。
でも、酒場にポータル移動してくるプレイヤーもどんどん増えていた。
「よし! 次にいこうカ!」
それから、名塚さんのMPが尽きるまで戦って、酒場の中に避難した。




