第七十五話 鑑定君にお願い
お母さんが帰った日の夜。
わたしは、お風呂に入ってダラダラとしていた。
マフィンは大量に持って帰ってもらったので、今度は違うものを作るようにしよう。
「何がいいかな?」
やっぱり好きな物がいい? パスタ?
喫茶店で出せるシリーズにしようかな。
いや、その前に、わたしはコーヒーの美味しさがあまりわかっていなかった。
どっちかと言うと苦くて飲みにくい。
さっぱりしてるのはわかるんだけど……。
「喫茶店の道は遠いな」
お風呂から上がって、冷たい麦茶を飲む。
水出しの簡単なやつだけど、これも煮出したものに変えてみようか。
いや、そもそもアイスコーヒーを作る?
「それは辛そうだな……」
飲み物がコーヒーばっかりっていうのは、健康的にもどうなんだろう。
髪を乾かして一息吐くと、取りあえずは、なにかパスタを作ろうと思いながらも、ログインしていった。
「…………」
先にドロップ品の鑑定をやってしまおう。
この前、高級ガチャ券の旅をしたときにいくつか拾っていた。
最終マップの宇宙船の中で拾った鎧もある。
「鑑定君、来て下さい」
すると、お金で鑑定をしてくれる鑑定君が現れた。
パーティーに賢者がいたりすると、その人にタダでやってもらったりするんだけど、それはもう遠い昔だ。
「ボクは何でも鑑定できる鑑定君だよ、必要なお金を払ってくれれば、アイテムを鑑定済みにしてあげる」
鑑定君に、胸当てのような鎧とお金を渡す。
「ありがとう、ちょっと待ってね」
鑑定君が鑑定し始めた。
ルーペを使ったり細部を眺めてみたり、結構時間が長い。
この時間が長いと、レア度が高いという噂だけど、誰か検証してるかも知れなかった。
うーん、確かに長い。
すると、鑑定が終わったのか、ピロリロリー♪ とSEが鳴った。
なんか、いつもと違うSEだった気がする。
ちょっと豪華な音……?
「鑑定できたよ、はい」
その鎧は……。
☆11バルキリーの胸当て。
物理攻撃に魔法威力が乗るようになる、勇気が上がる。
☆11またきちゃったか……。
しかも、なんだ勇気って、隠しパラメータ?
今まで見たこと無いし、噂にも聞いたことがない。
一時的に能力を上げることが出来るバフみたいな感じ?
それとも抵抗力が上がるとか、メンタル的なところ?
取りあえず装着してみると、攻撃力と防御力が爆上がりしているのがわかった。
勇気というパラメータは、総合的な底上げをしてくれるパラメータなのかな?
防御が課題だったけど、これでいくらかはマシになった気がする。
二回攻撃の両手剣と合わせて、本格始動できるかも。
分身と二回攻撃の剣を合わせて、クアドラブルエアブレードを撃ってみたいところだった。
次に鑑定してもらったのは、小さな盾だった。
☆8フォーチュンバックラー。
「おおっ」
両手剣でも使えるバックラーだった。
防御力はわずかに上がるくらいだけど、飛ばして攻撃できるようだ。
誘導、追尾、帰還の能力があるらしい。
それに、幸運があがる。
「ミサイルかな? 飛び道具はありがたいけど」
次は布っぽい軽めの靴だ。
☆7メンタルブーツ。
歩くとMPが回復するらしい。
魔法抵抗力が上がるのもいい。
意外な効果として、蹴りに魔法抵抗力が乗るみたい。
優にプレゼントかな? それともリサ?
素直に売ってもいいし、もしものために取っておいてもいい。
次は、変な形をしたネックレスだ。
☆6タブレットネックレス。
一時的にバフがかかる薬を精製できるネックレス。
MPを消費する。
いらないかな?
売り?
どんな薬を精製できるかにもよるかな。
でも、競売で値段を見てみたら結構すごい値が付いていた。
☆6というだけでも、十分に価値があるんだろう。
次は、禍々しい感じのあるコンタクトレンズだった。
こんなアイテムもあるんだね。
一応、ファンタジーっぽい世界観だけど、銃とかも出て来るし、未来と繋がってるし、コンタクトくらいはありなのかな?
☆9開眼の魔眼。
魔眼って装備できるんだ。
不可視のものを見ることが出来る。
相手の魂を抜くことが出来る。
なんだこれ、強制ログアウトさせられるってこと?
対人戦は始まったらログアウトできないけど、どうなるんだろう。
一応装備しておこう。
未鑑定品はこんなところだった。
「鑑定君ありがとう」
「じゃあ、いつでも呼んでね、さようならー」
鑑定君が消え去った。
ふう、結構いい装備が出たんじゃないだろうか?
まだ効果が不明な装備も多いけど、追々検証していこう。
イベント前に、いい戦力アップができたことに満足して、わたしはパスタのレシピを漁り始めた。




