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第七十四話 母親の研究


「お母さんは発掘とか行ってなかったけど、してないの?」


 考古学でお金がかかるって、発掘とか、品物の復元とか、そういうところだと思っていた。


 でも、ほぼ毎日家にいたし、海外出張なんて滅多に無い。


「発掘もしてるぜ、『On Sphere Making』を手に入れたところに、まだ何かありそうだからな」


 それにお金がかかっているのか……。


 わたしの家は、巨大なビルの地下にある金庫みたいな家だった。


 そのセキュリティにもお金がかかっているんだろう。


 というか、あの家、家賃いくらなんだ?


「じゃあ夫婦揃って、誰かに狙われている可能性があるんだ」


「そういうことだな、あたしの研究は誰にも知られていないけど、和利さんといることで発覚する恐れがあった」


「ふーん……」


 お父さんの仕事は、世界中から注目されていたみたいだ。


 その奥さんともなれば、色々調べられてしまうだろう。


 そこで、そのなんとかいう書物のこともバレてしまう可能性があったわけだ。


「…………」


「なんだよ?」


 わたしは、じっとお母さんを見る。


 世間に言えない研究か。


 悪いことじゃないよね?


「その解読が終わると、どうなるの?」


「世界が変わる」


 フヒッという感じでお母さんが笑った。


 大きく出たなぁ。


「悪い方に?」


「それを決めるのは、あたしでも技術でもない、使う人間だ」


 なんか詭弁のような気がする。


 悪い成分も、ちょっぴり混ざっていそうだった。


「そんなすごい研究なら、パトロンを見つけた方がいいんじゃないの?」


「和利さんからもらっていた仕送りが途絶えてしまってな、砂緒が稼いでくれないと、そうなるかも知れない」


 お母さんはとても残念そうだ。


 パトロンにお金を出してもらったら、研究の成果は取られてしまうんだろう。


 全部じゃなかったとしても、かなりの割合で。


「まぁ、出来る限りは頑張るけど……」


「あと、和利さんは行方不明じゃない、ちゃんと居場所はわかっている」


「そうなんだ」


 給仕ロボットが運んできた水を飲む。


 行方不明じゃないならよかった。


 誘拐とかされていたら大変だったけど、自分から隠れているみたいなことだろう。


 そして、お母さんには連絡も行っているわけだ。


「淡々としてるな」


「だって、お父さんとか言われても、ピンと来ないよ」


 それもそうかと言って、お母さんも水を飲んだ。


「お金のやりとりをすることで、あたしとお父さんとの繋がりがバレそうでな」


 相手は、そういうことを調べられる人達か。


 銀行の口座とかチェックできるのって、相当にすごいよね。


 それでいいのか? 日本の銀行。


 でも、まぁ、お父さんの開発したものは、すごい利益を生むんだろう。


 実際、そのゲームを体感しているわたしとしては、頷くほか無かった。


「でも、マギウスはもう開発されていて、会社の物になってるんでしょ? まだお父さんは狙われてるの?」


「いや、お父さんはマギウスを会社に貸してる感じだな」


「そうなんだ」


 それじゃあ、狙われるわけだ。


 誰かに売っちゃえばいいのに。


 お金の問題だけじゃないのかな?


「そういえば、お爺ちゃんの家に、変な若い男の人が行かなかった?」


「さあ? あたしは聞いてないけど、どうした?」


 買い取り商人さんが、お爺ちゃんの家に行ったと言っていた。


 よく他人の家の実家の場所なんて調べられるよね。


 お爺ちゃんは、有名メーカーの技術者だから、ネットに情報があるのかも知れないけど。


「えーとね、わたしが、一橋和利の娘だって、お爺ちゃんに確認して来たって言ってた人がいたから」


「えっ? マジか……父ちゃん、もうろくしてんのかな……」


 一橋和利からたどると、わたし達のことはわからないけど、わたしから辿れば一橋和利のことは簡単にわかってしまうわけだ。


 まぁ、行方不明なら脅迫することも誘拐することも出来ないからいいんだけど。


 そこに給仕ロボットがやってきて、パスタが届いた。


「アラビアータだから、ちょっと辛いよ」


「おお旨いな」


 お母さんが、美味しそうにパスタを食べている。


 我が家は、あまり外食をしない家だったから、美味しく感じるんだろう。


 そういえば、寮の部屋に手作りマフィンがたくさんある。


 おみやげに持って帰ってもらおう。


「家のこととか、大丈夫?」


「大丈夫だよ、都会にゃなんでもあるんだから」


「掃除とかしてる?」


「してないから、夏休みにでも帰ってきて、掃除してくれ」


「当分先の話だよ……」


 それから、寮の部屋で学校のこととか、たわいのないことを話して、お母さんは帰っていった。


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