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第六十八話 正義の味方


 アリス学園の授業は、実技のあるもの以外、すべてVRで行われる。


 それならもう、登校する意味も少ないと思うのだけれど、許可がされていないとのことだった。


 本当は、人間を一ヶ所にたくさん集めるための言い訳なんじゃないかと思っている。


 それで、交流という名のしのぎを削らせたいんだろう。


「授業参観日については以上になります、寮生の皆さんも含めて、家の人に、授業参観があると言うことを伝えておいて下さい」


 授業参観日か……あんまりお母さんには来て欲しくない。


 いや、ほとんどの子がそう思っているだろうけど……。


「それと、最近レッドプレイヤーが流行っているので十分に気をつけてください」


 先生から意外な注意の話があった。


「一人でダンジョンを歩かずに、なるべくパーティーで行動しましょう」


「貴重品は持ち歩かない、レア装備をひけらかさない、身を守るために必要なことです」


「犯罪者は赤いオーラなので、すぐにわかります。見かけたら近寄らないように」


「あと、学校の方で確認していますが、レッドプレイヤーに物や情報を売っている通常プレイヤーがいます」


「一見するとレッドプレイヤーではありませんので、十分に気をつけてください」


 どうやって気をつければいいんだろう……。


 でも、そこも含めて成績の対象なんだろうな。


 どうやら、思っているよりも盗賊団の被害が大きいようだ。


 学校側から注意が出たということは、学園内でも被害が確認されているのかも知れない。


 そして昼休み。


 優と学食でご飯を食べて、教室に戻ろうとすると話し掛けてくる人がいた。


「あの……」


 わたしも結構チビだけど、それよりも背の低い女の子。


 隣のクラスの、確か名塚葉月さんだ。


「な、なんでしょうか」


 知らない人だから警戒してしまう。


 何か情報を売ってくれとか、そういうのは困る。


「ボクは、自警団を設立しようと思っているんです」


 自警団? それはすごいことだと思うけど……。


「はい……」


「あの、その自警団の代表に……一橋さんの名前を貸して欲しいんです!」


 じっと、真面目な顔で見つめられる。


 思わず黙ってしまったけど……。


「え……嫌だけど……」


「そ、そんなこと言わないでくださいよぉ……」


 泣き付かれるように制服を引っ張られる。


「砂緒ちゃんも、いきなり断らないで、話を聞いてみたらどう?」


 まぁ、まだ昼休みの時間はたっぷりとあるけれど……。


 どうやら、教室の前でわたしが帰ってくるのを待っていたみたいだ。


 もしかしたら、ご飯を食べてないかも知れない。


 そこまで重い話なら、聞かないわけにも行かないか……。


「自警団って、何をするんですか?」


 優が名塚さんに聞いている。


「そ、それはですね!」


「ちょっと待って、名塚さんはご飯食べた?」


「ぼ、ボクは我慢するのが得意なので、一食くらい大丈夫です」


 わたしより背が低いのは、遺伝もあるだろうけど、その我慢強さにも関係しているんじゃないだろうか。


「どうせなら、喫茶店にでも行こうよ、何か食べた方がいいって」


「そうしたら、話を聞いてくれますか!?」


「わ、わかったよ……」


 優がニコニコしているけれども、気にしないようにしよう。


 喫茶店で飲み物と、名塚さんは軽食を頼んで話になった。


「自警団とは、困っている人を助ける組織です」


 割と自信ありそうに、名塚さんはそう言った。


「ゲーム内に、警察的なものを作りたいってこと?」


「そ、そんな大層なものじゃないです、盗賊団からみんなの身を守る組織を作れたらと思ったんです」


「うん、嫌かな……」


 正直に答えておく。


 変に期待させるよりもいいだろう。


「ど、どうしてですか!?」


「名前を貸すって言うけど、要するに責任者ってことでしょ?」


「せ、責任はボクが全部負います!」


 そんなに熱く言われても……。


 それにわたしが名前を貸しても、人は集まらないと思う。


「それに、こういう活動は、ランキングにも内申にも良いと思うんです」


 個人じゃなくて、組織を作ろうとする考え方はいいと思う。


 これから、そういうのが増えていくかも知れない。


「それが狙い?」


「いえ、人を集めるための方便です」


「じゃあ、何が目的なの?」


 まさか、本当にみんなの身を守りたいんだろうか?


「ボクは、成績とかそういうのいいんです、でも、正義の味方になりたい!」


「…………」


 承認欲求が強いんだろうか?


 それとも、正義の味方オタク?


「じつは、今までもひとりで活動していたんですが……昨日、レッドプレイヤーに返り討ちにされました」


 なんかシュンとしている。


 雨に打たれている子犬のようだ。


 いやいや、流されたら駄目だ。


 これは絶対に、面倒な流れなんだから。


「ひとりだと大変だよねぇ、レッドプレイヤーはパーティーだろうし」


 レッドプレイヤーは、当然群れる。


 その方が勝ちやすいからだ。


 それに、対人戦も経験値が入る。


 強奪のスキルを持っていれば、ドロップもある。


 迷惑なこと以外は、割と真っ当にプレイしていると言えた。


「でも……お恥ずかしながら、ボクはソロでして……」


 ソロなのか……。


 コミュ力はありそうなんだけど、揉めたのかな……。


 わたし達は、名塚さんの話を聞いていった。


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