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第六十七話 盗賊団の台頭


 今日は、エミリーの領主クエストが釣りだったので、三人で一緒に釣りに来ていた。


 わたしにも、そのうち釣りクエストが来るかも知れないので、今の内に慣れておかないと。


「うわぁ~、いっぱいいるねぇ」


 優が驚いた声を上げている。


 岩場らしき場所に、人がずらっと並んで釣りをしている。


 それが、ずーっと奥までつづいているのだ。


 どうやらここは、人気スポットらしい。


「磯釣りはプロ用だヨ、ワタシ達は砂浜で釣ろウ」


「そうだね、竿とかもいいの無いし」


 岩場で釣っている人達を横に、わたし達は砂浜で投げ釣りを始めた。


「モンスターとか釣れるのかな?」


「色々な魚が釣れると思うけど、現実の魚だけじゃないと思う」


「釣り好きにはたまらないだろうネ」


「このリールって、どうするの?」


「これはネェ……」


 エミリーが釣り得意で助かった。


 仕掛けとか投げ方とか色々教えてもらう。


 それから、十分くらい経ったか。


 初めての釣りは、いい日光浴になっていた。


「釣れないよぉ」


「まだ十分くらいだヨ、釣りは根気が大切なんだからネ!」


 ゲームなんだからサクサク釣れて欲しいけど、変なところで凝っているようだ。


「あっ!」


 わたしの竿が、くくっと引き込まれる。


 手に、明らかな重みを感じた。


「掛かってるよ! スナオ!」


 わたしは、竿を立ててリールを巻いていく。


 結構すごいヒキだ。


「すごーい! 頑張って!」


 優が生き生きとし始める。


「すごい引いてるヨ! 大物かも知れないネ!」


「ど、どうなんだろう! 重いのは確かだよ!」


 竿を立てて引っ張って、下ろすときにリールを巻いていく。


 その繰り返しをしていくうちに、獲物が砂浜まで引っ張られてきた。


「よし!」


 でも……掛かっていたのはフグみたいな生き物だった。


 なんか、ちっちゃいなぁ。


「こんなちっちゃいのに、あんなに強く引くのぉ!?」


「まぁまぁ、初めてだからグッドだヨ、次行こう次」


「ぎゃあぁぁぁっ!」


 そのとき、岩場の方から悲鳴が聞こえてきた。


 モンスターでも出たんだろうか?


「あれ……プレイヤーがプレイヤーと戦ってる?」


「オーラが赤だネ、犯罪者だヨ」


「レッドプレイヤー!」


 悪いことをしてリライアビリティが下がると、オレンジのオーラをまとうようになる。


 この時点で、パーティーや取引なんかが厳しくなるんだけど、赤のオーラということはかなりの重罪人。


 おそらく人殺しだろう。


「助けよう」


 釣りをしている人達はあまりレベルが高くない傾向があって、襲われることは滅多にない。


 経験値もドロップもあまり期待できないからだ。


 でも、楽しみで殺人をやっている変人ならわからない。


 わたし達は竿を置いて武器を抜くと、そちらに走っていった。


「やめロ!」


 釣り人は逃げ惑っている。


 赤いオーラをまとっているのは三人だった。


「なんだ? お嬢さん達、pvpは立派なゲーム内の権利だぜ?」


「相手が了承していないから、リライアビリティが下がっているじゃないですか!」


「そんなの下がればいい、オレ達の知った事じゃない」


「話し合いなんて無駄だヨ、こういう手合いは実力で排除するだケ」


「<セイクリッドヒール>」


 優が襲われていた人達のHPを回復する。


 それを皮切りに、戦闘の火ぶたが切って落とされた。


「<トルネードクレスト>」


 エミリーが問答無用で技を仕掛ける。


 この前のイベントでゲットした新技だ。


 槍を頭上で振り回すと、竜巻が発生して三人を飲み込む。


「くっ! 結構やるぞ!」


 範囲攻撃で、三人はまぁまぁダメージを受けていた。


 それ程は強く無さそうだ。


 オーラが赤くなっているプレイヤーを攻撃しても、リライアビリティは下がらない。


「やるぞ!」


 相手が気合いを入れている。


「<ブリッツフォース>」


「ぐううっ!」


 優も、イベントで覚えた攻撃魔法を使った。


 回復力参照なのか、結構な大ダメージを与えている。


「な、なんだこいつら、強いぞ!」


 わたしも、新技というか、新武器を試してみよう。


 ☆12のティタニススタッフだ。


「<分身>」


「<ワルキューレブラスト>」


 扇状の範囲攻撃がレッドプレイヤーを襲う。


「くっそう……」


 分身をしてからのダブル魔法攻撃で、敵は塵と消えた。


 宝箱が落ちる。


「いやぁ、助かったよ、お嬢さん達強いねぇ」


「いえいえ、それよりも、怪我をした人はいませんか?」


 優が怪我人をヒールしていく。


「こういうことは良くあるんですか?」


「いや、割と最近のことなんだよ」


「最近ですか?」


 冒険の途中でソロプレイヤーが襲われることはたまにあった。


 盗賊プレイをしたい人もいるんだなという程度にしか考えなかったけど、今回のレッドプレイヤーはなんか違う気がする。


「スカウトの3レベルに強奪というスキルがあってね、pvpで倒すとアイテムとお金をドロップするというスキルが判明したんだ」


 わたしも持っている。


 情報自体は前からあったと思うけど、スカウトのレベルを上げて、実際に利用し始める人が出たのが最近なんだろう。


 ちなみに、闘技場とかのpvp専用マップでは、強奪のスキルは働かない。


「イマイチ儲けられないプレイヤーが、盗賊になっているのかナ?」


 野良のpvpが流行し始めているのか……。


 盗賊団の台頭なんて、ちょっと物騒だ。


「今は、オーラが赤くなったリライアビリティ違反の者が、徒党を組んでプレイヤーを襲っているよ」


 ちょっと、ゲームの情報集めがおろそかになっていたかも知れない。


 そういう流行に疎かった。


「pvpが好きと言うよりも、盗賊団なんですね……」


 和気藹々(わきあいあい)な雰囲気はどこいった。


「そうなんだ、赤いオーラの集団が、地下七階に独自に街を作っているらしい。近づいたら駄目だよ」


 レッドプレイヤーだと、街で取引は出来ないだろう。


 擬似的な街を自分たちで作っているのか。


「まぁ、そういうプレイがしたいのなら仕方が無いけどネ」


「私はなんか嫌だよ、盗賊なんて……」


 でも、やめさせることは出来ないし、赤オーラを元に戻すのは大変だろう。


 もう、その道を進むしかない。


「これからは、護衛でも雇うしかないかね」


「ここらにも、カニやら貝やらモンスターが出るからな」


 お金で護衛募集すれば、やる人もいるだろう。


 狩りに行くよりも実入りが良ければ、いくらでもいるはずだ。


「じゃあ、気をつけてくださいね」


「おお、ありがとうな」


 わたし達は、エミリーのクエストがを終わるまで釣りをして、その日は別れた。


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