第四十二話 機械属性の敵
領主クエストの内容は、『狂った機械人形を五体倒せ』になっている。
やってみよう。
そもそもの話として、狂った機械人形がどれなのかわからないけど。
「やってみればわかるか」
ダイフクとタマもいる。
まだ外の敵と戦ったことがないけれど、大丈夫だろう。
わたしは、そのまま壁の外に出て、敵を探し始めた。
「…………」
すごく弱そうなスライムみたいなモンスターがいる。
でも、これは、環境生物的なものだろう。
日本で言えば、スズメが飛んでいるくらいのものだ。
スルーして歩いて行く。
「…………」
動くサボテンとか、砂の中になにか生き物がいるっぽいけど、襲いかかっては来ない。
空にも、鳥のようなものが飛んでいるけれど、モンスターでは無さそうだ。
悪魔が侵攻したって話だけど、元々は、危険な地域じゃなかった設定かな?
始まりの街的な、転職所もいっぱいあるし。
「んっ!?」
そこに、高らかなエンジン音が響き渡った。
砂山の向こうから何か来る!
この音からして、機械だ。
NPC? でも、クエストは狂った機械人形を倒せだ。
ダイフクとタマも気が付いているようで、音の方向を向いている。
すると現れたのは、バギーのような車の群れだった。
乗っている人はいない。
でも、車輪が付いていて走って来る。
敵で間違いないだろう。
「いくよ、ダイフク! タマ!」
「ぴゅーい!」
「みゅうみゅうー!」
わたしは、距離があるうちに魔法を唱えた。
ここなら風の精霊がいる。
「<スピリットストーム>」
バギーを持ち上げるような強烈な風が吹いた。
かまいたちが起きているのか、持ち上げられながらバギーが切り刻まれる。
そして、風が収まると、更に落下してダメージを受けていた。
でも、それでは仕留められなかったようで、着地したバギーが走って来る。
接近戦だ。
わたしは、剣を抜く。
「ぴゅーい!」
「みゅうみゅうー!」
無敵のお供がいるんだから怖くなんてない。
わたしは、轢き殺しに来るバギーをかわすと、すれ違いざまに攻撃を入れる。
「<クアドラブルエアブレード>」
キンキンという弾かれるような音が鳴る。
クリティカルしない!
あのセキュリティゴーレムと同じような感覚だった。
タンクの盾でも貫通するダメージだったのに。
クリティカル値が弱いのかな?
それとも、下方修正を受けた? 単純に敵が強い?
「ぴゅーい!」
「みゅうみゅうー!」
二匹は、一撃でバギーを倒す。
ダメージを受けていたとはいえ、あの堅い敵を一撃だ。
凄まじい火力と言えるだろう。
バギーは一度、こちらを通り過ぎると、Uターンして戻ってきた。
わたしは、剣を鞘にしまって魔法を唱える。
「<ワルキューレブラスト>」
シンプルな威力技だ。
扇状に広がった衝撃波がバギーを襲う。
更にダメージを受けているようだけど、それで倒れはしなかった。
「駄目か」
一撃というわけには、いかないようだ。
またバギーが突っ込んでくる。
わたしは剣を抜いてジャンプする。
今度は手数技じゃなくて、一撃の強いのだ。
フェンサー技には少ないんだけど、無いこともない。
「<ペネトレート>」
走って来るバギーと、すれ違いざまに剣を貫通させる。
今度はガシッと手応えがあった。
上手くエンジンを狙えたようで、バギーは爆発しながらよろよろと走って、がらくたになる。
「ぴゅーい!」
「みゅうみゅうー!」
ダイフクとタマは、問答無用とばかりに倒してくれていた。
さすがは最強のペット。
一人だったら、相当に苦労しただろう。
「これは駄目だ、スキルも装備も見直さないと」
バギー五体が破壊されて、煙を上げている。
そしてそれは、データの藻屑と消えた。
宝箱は出なかったけど、ドロップはある。
機械の部品みたいだけど、これが報酬で売れるんだろう。
クエストの狂った機械人形を五体倒せもクリアだ。
「ふぅ……」
取りあえず街に戻ろうか。
帰りは敵に遭遇することもなく、無事に帰還した。
さて……。
今日の冒険は、ここまでにしよう。
やらなくちゃいけないことは、スキルと装備の見直しだ。
今取っているスキルは、ドルイド3、セイバー1、ファントムシーフ1だ。
セイバーを3まで上げよう。
それと、ドルイドのスキルをもっと使って慣れていかないと。
ここら辺の敵は、多分、上級職を取ったばかりで丁度いい強さの敵が多いんだろう。
パーティ前提だろうけど。
雑魚敵でこんなに苦労していたら、ボスなんて到底無理だ。
無理矢理突破する方法はあるけれど、今は成長を見直そう。
「ポータルオン」
わたしはマイルームに戻った。
 




