第三十五話 新しい仲間
夜、寮の部屋からログインすると、マイルームでステータス画面とにらめっこを始めた。
「うーん……」
上位職業のレベルを上げられるけど、方針をどうしようか?
全部手探りだから、何もわからない。
もちろん、情報もない……。
「しばらくは、一本伸ばしの方がいいのかなぁ……」
全部伸ばすなら、それ相応の計画が必要だ。
でも、どのレベルで、どんな役に立つスキルを手に入れられるのか、あまり情報がないので、行き当たりばったりにしかできなかった。
シャーマンをレベル3にあげたら、加護が天運精霊獣に変わったから、取りあえずドルイドを3まであげてみようか?
ガッツリと消費する経験値に名残を惜しみながら、ドルイドを3まで上げた。
すると……。
「ゆ、揺れてる……?」
また地震だ!
マイルームからしか見えないワールドチャットを覗いてみると、他に、異常を感じている人はいないようだった。
ここでだけ、起きている地震だ。
そして……パリーンと、空間の割れる演出が起きる。
「みゅみゅうー!」
また、妙ちくりんなもふもふが現れた。
「なんじゃお前は!」
「みゅうみゅうー!」
わたしは、それをわしゃわしゃとする。
ダイフクとは、また違ういい匂いがした。
形としては、うさぎに羽が生えたみたいなモフモフだ。
そして、この子も角が生えている。
馬+角+羽根だったのが、うさぎ+角+羽根になってるのか。
まぁ、なんにせよかわいい。
モフモフで気持ちいいから何でもいい。
「みゅうみゅうー」
「お前も強いのか、こんなにモフモフのクセして!」
「みゅうみゅぅー!」
すると、ダイフクも飛び出してくる。
「ぴゅーいっ!」
ぐはーっ! モフモフ地獄だー!
わたしは、2匹のモフモフに挟まれて、揉みくちゃにされる。
「あ……ああぁ……」
温かい……日向ぼっこの匂いがする。
これは、人間が駄目になる感触だった。
「みゅー!」
「ぴゅーい!」
「そうだ、名前を付けないとね」
さて、なんにしようか……。
「うーん……」
まず加護を見てみよう。
加護が、天運精霊獣から星運聖霊獣に変わっていた。
なんか、グレードが上がってる? やっぱり、運が上がったのかな?
もしかして、セイバーを先に3にあげてたら、違う変化があったのかも知れない。
まぁ、もういいけど。
「名前はどうしようかな……」
「みゅうみゅうー」
ちょっとぷっくりしてるかな。
ころころ転がりそう。
うーん、玉? 珠? 幸運っぽいしタマでいいか!
「タマ! お前はタマだよ!」
「みゅうみゅうー!」
「ぴゅーい!」
「あはは、もう、ふたりとも甘えん坊だなぁ」
そのうちに、ふたりは、お互いでじゃれ合い始める。
ダイフクも仲間が出来て嬉しそうだ。
「ふふふっ……」
モフモフがじゃれているのは、見ていてとろけるような幸せだった。
すると、ダイフクとは反対の位置にある部屋の隅に、また裂け目が出来ていることに気が付いた。
「え……? また……?」
タマがそっちに転がってく。
ま、まさかとは思うけど……そこにはタマの巣があった。
そして、バグったような空間に扉がある。
「うっ……ううっ……」
手が震える。
まさか、という気持ちと、もしかして、という気持ちが交差していた。
「…………」
わたしは、無言でドアを開けてみる。
するとそこは、すごく未来の宇宙船の艦内みたいな場所だった。
「…………」
ローケーションしてみると……最終MAPと出ている。
「駄目じゃん……」
これはヤバイ……すっ飛ばしすぎている。
わたしは、敵が出てこないうちに、メモだけして扉に戻った。
「…………」
この子達、なんなんだろう?
部屋に戻って、ベッドに腰掛ける。
ナデナデすると、ダイフクもタマも喜んだ。
「ふぅ……」
昨日の今日だけど、買い取り屋さんが何か掴んでるかなぁ。
「タマは指輪になれる?」
「みゅうみゅうー!」
ダイフクが指輪に戻ると、真似をするように、タマも指輪になってみせた。
わたしは、それを装着する。
「よしよし、それじゃあ街に行ってみよう」
わたしは、ステルスマントを羽織ると、街に繰り出していった。
 




