第三話 天運精霊獣 ※
マイルームに戻ると、貯まった経験値でレベルを上げる。
ソロでやるならフェンサーを上げたいところだけど、どこか他のパーティーに入るなら、シャーマンを上げた方がいいだろう。
「よし、シャーマンを上げよう」
シャーマンをレベル3にできれば、拾ってくれるパーティーもあると思う。
コミュ障なわたしとしては、パーティーが怖いんだけど、やっぱりソロは色々と厳しかった。
また追放されるかも知れないけど、実家に仕送りをするためには、しっかり稼がないといけない。
「レベルの低いパーティーなら、大丈夫だよね」
わたしが追放されたパーティーは永遠の風という名前で、現在進めるダンジョン階層の一番深いところまで行っていたパーティーだった。
そんなガチなところに入らなければ、嫌がられることもないだろうし、今日だけのパーティー募集に入るという手もある。
「じゃあ、上げよう」
シャーマンのレベルを上げる。
「あれ?」
すると……部屋がガタガタと揺れ始めた。
ゲームの中で地震? なんかイベントが始まるのかな?
少し緊張してベッドに座っていると、空間が割れる演出のようなものがあって、真っ白な動物が姿を現した。
「ぴゅーい!」
「なにこれ!」
小さなモフモフとした動物が、わたしにじゃれついてくる。
実際の動物じゃないから、すごくいい匂いがして、毛もわさわさだ。
「なんだお前! なんだお前!」
「ぴゅーいっ!」
わたしも、その動物を抱き締めるようにしてわしゃわしゃとした。
角が生えた小さなペガサスみたいな動物だ。
基本形としては馬っぽいけど、小さくて毛がモフモフだ。
伝説で描かれている麒麟みたいな感じかな?
良くわからないけど、この子は子供だ。
ぴゅいーと鳴いて、わたしにすり寄ってくる。
モフモフで気持ちいい。
これがイベントなのかな?
ペットテイミングなら、アイテム欄に呼び出す道具が入っているはずだ。
「うーん」
見てみるけど何もない。
ワールドチャットを覗いてみるけれど、他の人達には何も事件が起こっていないようだった。
地震も起きていない?
シャーマンを上げたから?
ステータス欄を良く見てみると、わたしの加護が、ガチャ運向上から天運精霊獣に変わっていた。
条件はわからないけれども、どうやら、加護が変わったらしい。
自分の加護と職業レベルにはシナジーがあるんだ。
そういう報告は、SNSなんかでもあったけれど、どうやら本当らしい。
「そうか、この子は、わたしの加護かぁ」
「ぴゅーい」
かわいいもの好きのわたしとしては、これは嬉しいサプライズだった。
ちょっと減退していたやる気が、ググッともたげてくる。
「名前を付けよう」
ぴゅーいと鳴くからぴゅーい? 真っ白だからシロ?
天運精霊獣なんだから、ラッキー、ハッピー、ビンゴ? 大福?
よし、ダイフクにしよう。
「ダイフク、君の名前はダイフクだよ」
「ぴゅーい!」
また、じゃれてくる。
モフモフで気持ちがいい。
生の生き物じゃないけれど、確かに温かかった。
そして、ぴゅーい、と鳴いて部屋の隅に行くと、マイルームに穴が空いていた。
ダイフクは、そこを巣にしているみたいだ。
「なにこれ……」
マイルームに穴っておかしい。
ここは、プレイヤーひとりにひとつ与えられる空間だ。
拡張とかでハウジングも出来るけれど、こんな穴が空いているなんて初めて聞いた。
さっきの地震はこれのせいなのかな?
穴を覗いてみると、バグっているような空間に扉がある。
「扉ってことは……先に何かあるんだよね」
わたしは、装備を調える。
「ぴゅーい」
そして中に入ろうとすると、ダイフクも着いてきた。
扉には罠も鍵もかかっていない。
そして……扉の向こうは、ダンジョンだった。
取引商売の雑談スレ227
343.今日、珍しいガチャ屋っていうのが出てたな
344.ガチャ運が上がるアイテムとか加護があるのかな?
345.ガチャ運が上がる加護はあるらしい
346.廃課金がその加護出るまでサブキャラ作ってそう
347.リセマラはなぁ、ソフト一本買い直さないと駄目だし
348.加護の種類は100万種類超えるって話だぞ? レア加護なんてムリムリ
349.一本で10回キャラ作成できるんだから、100万種類とすると、10万本ソフトを買えば60%くらいは手に入れられるのか……
350.握手券のCDみたいになるな
351.さすがにDLやろ
352.俺もガチャ屋をやりたい人生だった
353.ずっと見てたけど、外人のおっさんが女神の涙出してたぞ
354.MAJIKA
355.オレもイベントまでに☆6装備欲しいな