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第十九話 孤島の秘密


 ボートを海岸線に着けると、砂浜に引き上げて流れないようにした。


 ポータルでマイルームには帰れるから、遭難することはないんだけど。


「ここが、NPCの言ってる何か?」


 乗り物のアザラシをしまうと、島を見渡してみた。


 近くに集落が見える。


「漁村かナ? 村があるみたいだネ」


「行ってみようよ!」


「行こウ! 行こウ!」


 割と、優は好奇心旺盛だ。


 エミリーも似たもの同士という感じかな。


 わたしは、何かありそうな感じがして様子見したいんだけど……。


 ふたりに連れられるようにして、村に向かった。


「うわぁ~」


 その村では……なんと、色々な乗り物が売られていた。


 今のところ、乗り物はガチャでしか得る事が出来ない。


 でも、誰かがここまでこられれば、その流通元になれる、そんな場所だったみたいだ。


「おじさん、これいくらなノ?」


「いやあ、すまないね、これは今売り切れなんだ」


「じゃあ、こっちハ?」


「すまないねぇ、こっちも売り切れなんだよ」


「なんだ……」


 どうやら、ここはまだ開放されていない場所だったみたいだ。


 運営の予定よりも、早く到着したみたいだった。


「乗り物全部買えないよ~」


「セーフティネットだネ、島は作ってあるけど、物は売ってくれないんダ」


 サーカスの空中ブランコで、落ちても大丈夫なように作られているネットのことだ。


 念のための安全対策みたいな意味で使われる。


「せっかく遠くまで来て、いいところ見つけたと思ったのに~」


「そう上手くはいかないってことだよ、この分だと、海のMAPが見つかったのも、たまたまかも知れないね」


「そうだネ、プランとしてはまだ先だったのかも知れないヨ」


「先ってどれくらい?」


 うーんとエミリーが考えている。


 夏休みに合わせて、海が解放とかありそうだったけど……。


「多分、みんなが乗り物を手に入れられるようになってからかナ?」


「それじゃ意味ないよ~」


 簡単に儲けられる話しはないってことだね。


「でも、開放されてないエリアでも、こうして動かしているものなんだね」


「サーバの容量は、もう価格を気にしなくていいレベルだし、管理はマギウスがやってくれるから、人の手も予算もほとんど要らないんだヨ」


 おおっ、さすが、VRの専門家。


 運用のことまで考えたことはなかった。


「実際のデータ作成作業も、制作チームとマギウスの話し合いで作られていて、人間は方針を決めることと、世界観を作ることに特化してるんだっテ」


「じゃあ、こういうアバターも、マギウスが作ってるの?」


 優が自分のスカートの端を摘んでみせる。


 何故か、神官はスカートが多い気がするけど気のせいだろうか。


「人間が作っている物もあるんだろうけれど、ほとんどはマギウスが作っているはずだヨ」


「クリエイティブなものまで、AI任せなんだね」


 じゃあ人間は何をしているんだといえば、AIの管理をしているのかもしれない。


 もしくは、新しいAIの開発とか。


 全部をAIには任せられないだろうから、チェックとかはしているのかも知れないし。


「いつでも来られるようにポータルのメモをしておこうよ」


「そうだネ! まだこの島に秘密があるかも知れないシ」


 確かに、乗り物を売っているだけの島じゃ寂しいかな?


 もっと特別な、何かはあるかも知れない。


「これで、いつでも来られる」


 しっかりとポータルのメモをする。


 儲け損なったけど、定期的に見に来れば、いつかは解放されているだろう。


「アリス学園では、こういう情報を、情報屋さんに売ったりするノ?」


「わたしは、情報屋さんとは、お付き合いがないからなぁ」


「私も、情報屋さんと取引したことはないよ」


 エミリーが、ちょっと驚いた顔をしている。


 学園について、少し誤解があるんじゃないだろうか。


「でも、非合法な情報とかも売ってるんでショ?」


「かわいい女の子のプロフとか扱っている情報屋さんの話は聞いた事ある」


「男の子はネー、どうしてもそっちの情報がネー」


 エミリーはかわいいから、そういう苦労もしていそうだ。


 優も、わたしが知らないだけで色々あるのかも知れない。


「他にも、ちょっとしたバグとか、システムの裏を突いた利用の情報とかもあるみたい」


「バグなんて無いヨー、それは情報屋じゃなくて詐欺屋さんだネ」


 バグはないのか。


 ダイフクのこととか、ちょっと安心する。


「でも、ほとんどの情報屋さんが、加護や職業、スキルなんかのについての情報で、育成相談みたいなのが多いよね」


「そうだね、情報屋さんが情報屋さんを紹介したりとかね」


「うーん! いいなぁ、わたしもアリス学園に通いたイ!」


 目を輝かせているけれど、きっと誤解だ。


 エミリーが想像しているものとは違うと思う……。


「もう大学卒業しちゃったんだから、学校行かなくていいのが羨ましい」


「ううん! ワタシは、もっとドキドキしたイ!」


 好奇心旺盛なんだなぁ、勉強の出来る人はやっぱり違う。


「そういえば、砂緒ちゃんは、ランキング一位になって、そういう声とか掛けられなかったの?」


「えっ! スナオはランキング一位なノ!?」


 エミリーが目を丸くして驚いている。


 まぁ、そうだよね。


「うん……パーティーのお誘いとか、情報を買うとか、いっぱい来たよ」


 大学生の人とかちょっと怖かったし。


 でも、中学校を出て、寮に行く通りでしか声を掛けられる場所がないから、危険は感じなかった。


 守られているのかな?


「リアルマネーがかかっているから、大変だよね」


「ウフフ、マフィアとかに狙われたりするかもヨ」


 何故、エミリーは嬉しそうなのか。


 マフィアに狙われるのって、楽しくないでしょ。


「そこまでかなぁ?」


「だって、砂緒ちゃんすごいお金持ちだって有名だよ。私のところにも、紹介して欲しいって何件かあったし」


「そうなの!? 断ってくれたんだ」


「うん、砂緒ちゃん、絶対に嫌がるのわかってたから」


 同じ中学生からの、そういうのもあったんだなぁ。


 やっぱり、わたしは守られている。


「でも、実際にはそんなにお金なんて無いよ、実家に仕送りしているし」


「偉いネー、月にどれくらい仕送りしているノ?」


「先月分で、2000万円送ったかな」


「エエエエエエエエッ!?」


「しぇえええええええっ!?」


 なんか優の声が裏返っている。


 2000万円が大金だというのはわかっているつもりだ。


「そんなに稼いでるのも驚きだけド、家の人は仕事してないノ?」


「うちは母子家庭で、お母さんが病気だからお金がかかるんだよ」


「そうだったんだね……」


 優が心配そうな目で見ている。


 でも、それを自分の手で何とかするためにアリス学園に入ったんだ。


「自分の学費もあるし、コツコツやらないと」


「この島でしか採取できないアイテムとか無いかナ? お金稼がないとネ」


「うん、ダンジョンの入口とかもないかな?」


 なんか、深刻にさせちゃったけど……ふたりが思っているような病気ではないんだよな……。


「あっ、でも、もう結構遅い時間だけど、ふたりは大丈夫なノ?」


「うーん、ちょっとお腹減ったかな?」


「そうだねー、晩ご飯の時間だね」


 優もお腹が減っているのか、胃の辺りを撫でていた。


「じゃあ、今日はここまでにしよう、明日また、日本時間の16時頃ニ」


「授業とかで、ちょっと遅れちゃったらゴメンネ」


「いいヨ、待ってるね」


「またねー」


「おつさまー」


 そして、わたしと優はログアウトした。


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