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第百六十四話 全てが終わった後


「ん……」


 目を覚ますと、そこはホテルの中だった。


 ゲームの中?


 どうして?


「あっ、砂緒ちゃんが起きた」


 優が隣にいるようだ。


 わたしはベッドから起き上がる。


「砂緒ちゃん、具合はどう?」


「うん、特に異常はないかな……」


 腕をぐるぐる回してみるけど、ホテルの中ということはゲーム内だ。


 あんまり、意味はないだろう。


 部屋の中には、優とエミリーとお爺ちゃんがいた。


 お母さんは、いないみたいだ。


 現実のわたしの近くにいるのかな?


「どうして、ゲームの中にいるの?」


「今、砂緒の身体は治療中だっテ」


 治療中?


 意味がわからないけど……。


「上手くいったんだってね、良かったよ砂緒ちゃん」


「上手くいったのかな? わからないよ」


 お父さんを、100年後の未来に飛ばして、そこから先の記憶がない。


 気を失ったんだろう。


「今は、MPが切れたような状態だ、すぐに回復するだろう」


 お爺ちゃんが、そう言ってわたしの頭を撫でる。


 少し安心した。


 でも……。


「お父さんは……?」


「和利のことは、もう考えなくてもいい、後はお爺ちゃんに任せなさい」


「そうなんだ……よかった」


 いつもは私とか言っているのに、自分のことをお爺ちゃんなんて言っている。


 わたしを和ませるために、気を使ってくれてるのかな。


「マギウスはどうなったの?」


「GMが報告に来たヨ、上手く説得できたっテ」


「そうなんだ、それも良かったよ」


 報告に来たんだ。


 なら、クビにはならなかったのかな?


「GMさん、クビのことは言ってなかったよ」


「ちょっと心配だね」


「それも、お爺ちゃんが掛け合おう、今回の被害者のひとりだろうからな」


「そうなんだ……」


 でも、これで全部が終わったと思う。


 マギウスは、わたしのことを諦めたみたいだし、お父さんもいなくなった。


 お母さんの研究も無事に完成して、被害もない。


 後は、もしかして、政府の関係者が諦めてないかも知れないけど、わたしが隙を見せなければ大丈夫だ。


「これで、ゲームに集中できるかな」


「ワタシ達が、ジャックポットしたって話で持ちきりだヨ」


「やっぱり、話題になってるんだ」


 あんな、テーマパークの中で戦って、宝箱を開けて、演出付きでジャックポットしたんだから当たり前か。


 変な噂が流れてたら嫌だから、ネットは見ないようにしよう。


「イベント、頑張ろうね」


 なんか、ちょっと眠いけど、MP切れのせいかな。


「うん、頑張ろう」


 夏休みはまだまだ、始まったばかりだ。


 今日からの冒険に胸を躍らせて、わたしはちょっと休んだ。






「うん? 一橋砂緒か? 私の友人だぞ?」


 中東の大国。


 その王族が住まう邸宅で、ひとりの青年が家来の報告を聞いていた。


「日本政府が、タイムマシンや万物の創世を可能にする装置を開発しているようです」


「それは面白いな、是非協力させてもらわねば」


 青年は、興味深そうに頷く。


 家来も、青年の興味を引けたことに満足しているようだった。


「捕らえて、以後の研究はこちらで行うことも可能ですが」


「駄目だ、私の友人とは特別な者だ、他国でそのような者がいたら排除せよ」


「御意に」


 家来はうやうやしく礼をし、退出していった。






「お兄様、砂緒が現実世界でタイムトラベルのスキルを使ったそうです」


 少し薄着のリサが、パトリックとふたりでいた。


 パトリックは、ベッドの上に伏せっている。


「こほっ、こほっ、そうか、タイムトラベルという手もあるか」


「日本政府は『WORLD IN ABYSS』の運営に、直接乗り出す公算が高いですよ」


 リサの予測ではなく、このために動いてきた、会社の人間達が出した予測だ。


 パトリックは頷く。


「残された時間は少ないか」


「しかし、どこの国も日本の技術独占を憂いているはずです」


「ライバルは増えるだろう……少なくとも、ギルド員10000人は身内で確保しなければならないな」


「『WORLD IN ABYSS』の中で、国家間、企業間の争いが始まります、私達もアドバンテージを生かさねば」


「大丈夫だ、一橋砂緒の身辺に人を配置させている、このことに関して、後発に後れを取ることはない」


「そうですね、砂緒は人見知りですから」


 リサはそう笑いながら、パトリックの背中を撫でていった。






「アンドレア殿、シッカリアの発掘の件で、日本政府が交渉を持ちたいとのことですが……」


 キッチリとしたスーツに身を包んだアンドレアが、年上だと思われる男から相談を受けていた。


 ここは、南米にある国の大統領府。


 アンドレアは、それなりの存在感がある人物であるようだった。


「アホな大統領様は、ホイホイと乗るんだろうな、だが、祖国の資源は俺が守る、ギルマスには悪いが、思い通りにはやらせないぜ」


 元が粗野なのか生まれが悪いのか、アンドレアは厳つい笑みを浮かべる。


 年上の男は、安心したように頷いた。


「しかし、ゲームで超能力を得るなど、本当なのですかな?」


「そのゲームの中でもギルマスは別次元だが、普通にプレイしていても、そうはなるまいよ」


「おお、それでは、心当たりがあると?」


「なくもないが……今は信頼関係を結ぶところだ、焦っても得はない」


「大統領の首が変わっても、アンドレア殿がいれば百人力です」


 年上の男は、不穏なことを言う。


 まるで、自分が大統領の首を切るような言い方だ。


「さて、どうなることかね」


 各国、各組織の思惑は重なっていく。


 砂緒の知らないところで……。






「こ、これが……100年後の未来」


 和利の目には、信じがたい光景が広がっていた。


 自分がいた現実の延長に、この未来がある。


 その事実に、和利は身を震わせて悦びの絶叫を上げた。


 END。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


ちょっとキレの悪い終わりですが、この物語はここで終わりとなります。


去年の明日、この物語はスタートしたので、丁度一年間連載したことになります。


200話書くぞと意気込んでいたのですが、結果は、164話でした。


不甲斐ないです。


でも、ポイントは、自分史上ベストです!


みなさまの応援のおかげで、ここまで到達できました。


回収できていない伏線も多々ありますが、ご容赦下さい。


それでは、また、別の作品でお会いできることを願いまして!

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