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第百六十一話 ダイフクを貸す


 GMを呼び出して事情を説明すると、運営の方でも不穏な動きがあるとわかった。


 どうやら、わたしのGMコールには出るなという指示が出ているらしい。


「こちらの動きを読まれていたみたいだネ」


「巻き込んじゃったのかな? ごめんなさい」


 優が頭を下げたところで、わたし達も頭を下げる。


 クビだなんて、深刻な話になっているとは思わなかった。


「でも、GMには、マギウスを止めて欲しいんです」


「マギウスを止める?」


 GMは、更に怪訝な表情になっていた。


「GMはマギウスと話をしたことはあル?」


「マギウスとは何度か話をしています」


「マギウスは、砂緒の全能化を目的としているノ」


「全能化? その創造器というものですか?」


「それも関係あるヨ、だから、それを止めて欲しいノ」


「ど、どうやって!?」


 マギウスは、あまり話の通じるタイプじゃないんだろう。


 GMの人が困っている。


「マギウスには1000の意志があるんですよね?」


「そ、そうだ、マギウスと話しをすると、圧迫面接みたいになる」


 圧迫面接?


 言葉の意味はわからないけど、なんとなく話し難そうなイメージは沸く。


「その中に、わたしの味方がひとりだけいます」


「君の味方?」


「どうして、その意志だけがわたしの味方をしてくれるのかはわからないんですが、突破口になれるはずです」


 GMは、困ったように考え込んでいる。


 大人には大人の事情があるんだろう。


「君の全能化を止めさせれば、それでいいのかい?」


「はい、それで上手くいくと思います」


 フッと、GMが自嘲気味に笑う。


 なにか、決心が付いたみたいだ。


「わかった、やってみよう」


「おおっ! 話がわかるネ」


「ありがとうございます!」


「でも、マギウスのところまでたどり着けるかわからない、すぐに取り押さえられてしまう可能性もある」


 それなら……。


「この指輪を使ってください」


 わたしは、GMにダイフクの指輪を渡す。


「これは……?」


「セキュリティゴーレムでも倒せました、最下層のボスも一撃です」


「セキュリティゴーレム? やっぱり出現していたのか!」


 なにか、運営の方で揉めていたんだろうか。


 セキュリティゴーレムは、確かに倒していた。


「名前はダイフクです」


「……ダイフクオン」


「ぴゅーい!」


 ダイフクが現れる。


 でも、指輪を着けているのが違う人だからなのか、ちょっとモジモジしていた。


「ダイフク、この人のお手伝いをしてあげて」


「ぴゅーい!」


 大きく鳴いて、わたしにすり寄ってくる。


 それを、コネコネするように撫で回してあげた。


「これか、これで強い敵を倒していたのか」


 なにかわからないけど、納得している。


 GMも、ダイフクをちょっと撫でていた。


「じゃあ、どうなるかわからないけど、やってみるよ」


「お願いします」


 GMは、来たときと同じように、静かに去っていった。






 荒井は、鎧姿のままスタッフルームに戻る。


 すると、スタッフルームには、チーフと警備員が待っていた。


 他のスタッフは、おろおろしているか、緊張している。


 状況が飲み込めていないので、解決策は提示できない。


「ち、チーフ、お、落ち着いて話を……」


 オペレータの女性スタッフが、チーフに声をかけている。


 もちろん、チーフに取り合う様子はない。


「荒井君、君を強制排除する」


 腕時計型の便利アイテムを見せられる。


 この世界で、とんでもない威力を発揮する時計だ。


 チーフの腕時計は、荒井より強力な権限を持っているだろう。


 おそらく、強制ログアウトだと荒井は悟る。


「ダイフク! いけっ!」


「ぴゅーい!」


「なにっ!?」


 ダイフクの強力な範囲攻撃に、チーフと警備員が消滅した。


 スタッフルームで死ぬと、どこにリスポンするのか、ログアウトするのか、わからない。


 近くにリスポンしているなら、すぐにスタッフルームにやって来るだろう。


 急がなければいけない。


 しかし、と荒井は思う。


 チーフというよりも、ガンマプラスそのものが、政府と協力関係にあったんだろうと推察した。


 創造器の話は良く理解できないが、国家レベルの企みだったというわけだ。


 それに、荒井は巻き込まれたのだ。


「最後の大仕事だ」


 荒井はスタッフルームを出て、マギウスの部屋に赴く。


 扉に行き先を入力すれば、どこにでも繋がるのがVR空間だ。


「マギウスに面会を求めます」


 マギウスの拒絶を象徴するかのような、分厚い扉の前で、荒井は面会を求めていた。


 そして、分厚い扉が開いていく。


 荒井は、少し緊張しながら、部屋の中に入っていった。


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