第百五十七話 100年後
「んっ……」
目が覚めると、わたしはマイルームにいた。
いつもの見慣れたマイルームだ。
部屋の隅に、ダイフク達の部屋もある。
「あれ……?」
わたしは、タイムマシンに乗ったはずじゃ……。
ふと見ると、タイムマシンが、マイルームの壁に立てかけてあった。
なんかおかしい。
ゲームの中に、タイムマシンがあるんだったら、まだいいけど……。
「……夢?」
どこから?
立て続けに、色々なことがあったから、もはや良くわからない。
「いや、タイムマシンがあるんだから夢じゃない」
でも、マイルームってことは、ここはゲームの中なんじゃ……。
ステータス画面を呼び出すと、システムが現れる。
「やっぱりゲームじゃん」
どうなっているんだろう?
やっぱり夢だったのかな?
いや、タイムマシンに乗る前、優がステータス画面を出していた。
あそこも、ゲームの中ではないらしいけど……。
色々なことがごっちゃになって、整理が付かなかった。
「うーん……」
誰か、ログインしてないかな。
システムからプロフを出してみると、優がログインしていた。
優に事情を聞いてみよう。
「優、今、大丈夫?」
「えっ! 砂緒ちゃん!?」
「ど、どうしたの、そんなに驚いて」
「本当に、砂緒ちゃんなの!?」
なんだか、ものすごく驚かれている。
さっきまで、一緒にいたのに……。
でも、こうしてプロフで話ができるということは、ここはゲームの中だよね?
それは間違いないと思うんだけど……。
「ど、ど、どこにいるの!?」
「え、マイルームだけど……」
「マイルーム!?」
なんだろう、ちょっと変な感じだ。
さっきから、何を驚いているの?
「砂緒ちゃん、今何歳?」
「そんなの優と同じだよ」
「いいから教えて!」
ちょっと怒りっぽくなってる?
服も、見たことないの着てるし……。
「今は12歳だけど、誕生日が来たら13歳だよ」
「えええええええっ!?」
「ど、どうしたの?」
なんか、ちょっと圧が強くなっている気がする。
優は、もっと大人しい方だと思うんだけど……。
「砂緒ちゃん! ここは、100年後の未来なんだよ!」
「100年後……100年後ぉっ!?」
やっぱり、タイムマシンはあったんだ。
いや、今現在、壁に立てかけられてるけど。
そういえば、お父さんは、取りあえず100年後でいいかとか、なんかそんなことを言っていた気もする。
でも……。
「どうして優は生きているの?」
100年後でも生きているかも知れないけど、そうしたら、すごいお婆さんになっているはずだ。
なのに、姿形も声も、昔見た優のままだ。
「うんとね……砂緒ちゃんには、隠してたんだけど……」
ちょっと言い難そうにしている。
なんだろう、どんな秘密があったのか。
「私は小さい頃に、事故で両親を亡くして、私自身も瀕死の重傷だったの」
「そうなんだ……」
それは知らなかった。
三神さんというのは、親戚の人とか、そういうのかな。
「それでね、身体の80%を人工の機械や人工の皮膚と入れ替えて、250年は生きる身体に変わったんだよ」
「なにそれ! わたしと一緒にいるときもそうだったの!?」
「そうだよ、でもね、私は昔の記憶がなかったし、三神さんも優しかったし、別に不満はなかったんだ」
「そ、そうだったんだ……」
割とあっさり、優はそう言う。
このことを、この時代のわたしにも話したことがあるんだろう。
抵抗がない感じだった。
「砂緒ちゃんのお父さんの計画で、タイムマシンを使うというのがあって、未来に行ったときに、その生活をサポートできる存在として、期待されていたんだよ」
「サポートってなに?」
「これは、政府のプロジェクトでもあったんだけど、いつどんな形で干渉されるかわからないから、極秘に私が作られて、未来の常識がどうなっているとか、身分証明書を偽造するとか、当面の住むところとか、そういうのを用意する役割だったんだ」
はえー。
そういえば、優に関してはいくつか疑問があった。
たまたまアリス学園の近くに住んでいたり、ナイフが首に当たっても切れなかったり、今思えば、そういうことだったんだ……。
「砂緒ちゃん、マイルームから外に出てみて」
「外って、いつものアパートじゃないの?」
「違うよ、きっと驚くから」
わたしは、玄関からマイルームを出てみる。
あまり使わない玄関だけど、きれいだった。
扉を開けてみる。
すると、そこは……酒場の最上階だった。
「ここって、酒場の最上階?」
「砂緒ちゃんのマイルームはシークレット扱いで、誰もいじれなかったんだよ」
「え、どういうこと?」
「100年前、砂緒ちゃんは……ゲームの世界と現実の世界をごちゃ混ぜにしてしまったの」
「え!?」
いつ?
そんなことをした覚えはなかったけど……。
わたしは、考えていった。




