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第百五十三話 15年前

連載再開となります!

23日で最終話となりますので、よろしければお付き合いください。

よろしくお願いします!


 買い取り商人さんが集めてくれた鍵のおかげで、プレイヤーボス討伐報酬のチップを、大量に集めることが出来た。


 地下ダンジョンの構成にもよるんだけど、大体6~7部屋でボスになるから、高速で回せば30分で1層をクリアできる。


 ボスを倒した後、地上に出ずに、下の階に行けば装備は維持できるから、敵は強くなるけど、こっちもやりやすかった。


 装備ドロップ運次第なところはあるけれど、わたし達は、着々とチップを集めていく。


 お爺ちゃんは、相変わらず上野先生と三神さんの3人で何かをやっていた。


 エミリーは気になるのか、手伝うよとか言って近づくけど断られている。


 テーマパークで測量や写真を撮っている感じだ。


 何をしているのかわからないけど、気にはならなかった。


 そして、ジャックポットの金額が、どんどんアップされている。


 上でお金を使えば使うほど、地下の敵が強くなり、クリア報酬も増えるようだった。






 ― 15年前 ―


「一橋麻理江くん、これは何だね」


 あたしは、大学の廊下で、プラネタリウムのゲリラライブをしていた。


 学生は、みんな面白がってくれたけど、職員や教授はそうでもなかったようだ。


 たっぷりと怒られたけど、みんな、これが世紀の大発見であることには気が付かなかったみたいだ。


 『On Sphere Making』


 上野先生のゼミの旅行で海外に行ったとき、あたしはそれを、盗掘街で見つけた。


 日本円で4万円ほど、それ程の価値はないと思われていたらしい。


 どこで見つけたのか聞くのに、更に一万円がかかったけど、とんでもない掘り出し物だった。


 それを解読して作ったプラネタリウムだったけど……まぁ、やはりというか不評だった。


『これ、面白いですね』


 でも、興味を持ってくれた人がいた。


『春分点が魚座と牡羊座の間にある、これは2000年前の星座ですね』


『よ、良くわかりましたね?』


 天文学とか、そういうのに興味がある人なのかな?


『それに、これだけ小さな装置で電源がない、どうやってこのプラネタリウムを投影しているんですか?』


『で、電池で……』


 男の人の目が本気になる。


 隠し通せないという焦燥と、あたしの研究に興味を持ってくれる人との出会いに、心が踊った。


『電池では、ありません』


 これが、あたしと和利さんとの出会いだった。


 あたしの時間は、『On Sphere Making』の解読に追われた。


 上野先生の助力がなかったら、大学は卒業できなかっただろう。


 父に相談し、和利さんに手伝ってもらい、研究は進んだ。


 そして、人工生命の解読と実験ができたところで、和利さんは、人工知能の開発に着手した。


 生体コンピュータを使用したそれは、爆発的な進化をとげていく。


 それまでのAIが玩具に見えるくらいに、革新的なものだった。


 そして砂緒が生まれた。


 和利さんと、あたしの子だ。


 幸せな日々が続いた。


 しかし、砂緒が3歳のときに、事件は起きた。


 父に椅子の作成を依頼していた和利さんが、砂緒の脳手術をすると言い出したのだ。


 ……父も賛成だった。


 あたしは、そんなことはしたくなかった。


 どんな障害を負うかもわからない。


 でも、和利さんの母親の脳外科医に安全であると説得されて、砂緒を差し出すことになった。


 父は、この頃から、政府となにかやりとりを初めていた。


 和利さんのAIや父の椅子も含めて、協力を取り付けていたようだ。


 その頃、あたしの研究は、創造器の作成に移っていた。


 万物を創造できるという、眉唾なものだ。


 しかし、父も和利さんも、この研究を頭から信じてるようだった。


 『On Sphere Making』のことは、誰にも話していないらしい。


 あたしのことは、どうやら秘密のようだった。


『麻理江、私はね、砂緒がいたる、創造する能力を解明したい』


『その現象を人工的に再現するのが私と政府の目的だ』


『そのためには砂緒が覚醒にいたる必要がある』


 それが父の思惑であるようだった。


 母としてのあたしと、研究者としてのあたし。


 そのどちらに訴えているのかは、明白だった。


 砂緒は、あたしが守らなければいけない。


 でも、和利さんは違った。


『タイムマシンを作りたい』


『そのためのゲームとマギウスだ』


 無邪気で一途。


 およそ研究者というよりは、子供の夢と言った方がいい、そんなことを考えている人だった。


 砂緒は成長していく、あたしは母と研究者との間で苦しんだ。


 何もなければいいが、砂緒に何かがあったらと思うと、胸が張り裂けそうになる。


 そして、マギウスと椅子の制作が終わった。


 後は、あたしの創造器に関する研究を待つだけだ。


 小学生の砂緒に、アリス学園の情報が、自然に入るようになる。


 父や政府と繋がりがある学校の先生、目に触れるところ全てに、アリス学園の情報がちりばめられていた。


 そこは素晴らしいところだと、砂緒を誘導している。


 そして、砂緒がアリス学園を受験したいと言い出すまでに、それ程の時間はかからなかった。


 VR空間で様々な経験を積ませて、椅子にフィードバックさせる。


 椅子は人生の後半を費やして父が制作したものだ。


 最後は、マギウスの助言を得て完成させていた。


 あたしの研究は、スフィアに書かれている創造器の生成法の確立だ。


 しかし、創造器の生成には、現実の奇跡が必要だとわかっていた。


 和利さんは、これでタイムマシンを作れると信じている。


 本当に、そんなことが可能なんだろうか?


 いや、あたしがそれを疑ってどうする。


 しかし、父は、大きすぎる力だと和利さんに警告していた。


 自分たちの好きには出来ないように、国を巻き込んだプロジェクトとして協力している。


 でも、内密に、和利さんの目的にも協力していた。


 ロボット技師である技術と『On Sphere Making』の人工生命の技術を生かし、交通事故で半身を失っていた少女に処置を施して、80%が機械の生体アンドロイドの手術に成功していた。


 脳の活動に限界が来る、250年ほどは生きるらしい。


 タイムマシンの実用化に向けて、必要なことのようだった。


 誰かがタイムマシンで未来に行ったときに、その補助をしてくれる人間を残しておく策らしい。


 ただ、ここに来て、あたしは不穏な空気を察していた。


 何度かマギウスと話をしたが、父や和利さんとは、違う目的があるように思える。


 父や政府は創造器の再現が目的だが、マギウスは砂緒を神にしようとしている、そんな風に思えてならなかった。


 そして、砂緒は無事に経験を積み、超能力の発動にいたった。


 そのことを知った父は、深くため息を吐いて、そうかと満足そうに頷いた。


 父はゲームにログインし、マギウスに作らせていたテーマパークを実装した。


 砂緒が創造の力を働かせやすい、夢の国だ。


 そして、父は現実にも、そっくり同じテーマパークをアリス学園の近くに再現している。


 このとき、あたしの創造器の研究は、完成を迎えていた。


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