第百五十話 地下ダンジョン
夢のリゾートホテルでお爺ちゃんと会ってしまった。
色々話を聞いているけれども、ちょっと突っ込んだ話になってしまっている。
「マギウスを世に出した時点で、秘密なんてムリムリー! ベイベー!」
上野先生は、ちょっと時代がかったロックンローラーだ。
リアルでは、楽器を演奏できないみたいだけど。
「あのね、わたしはそれよりも、三神さんのことが気になるんだけど……」
三神さんは、冷静な顔でぺこりと頭を下げた。
悪い人では無さそうに見える。
すごく真面目そうな人だ。
「知り合いかね?」
「授業参観でお会いしました」
「アリス学園の授業参観なら、行かなくてもいいだろうに……」
「あの子にせがまれまして、いつもは聞き分けがいいのに、あんなに駄々を捏ねるのは、めずらしかったのです」
「優の、お母さん……ですよね?」
「そう思って頂いて構いません」
「それは、違うって言ってるのと同じだヨ」
離婚して名前が違うとか、そういうのじゃ無いっぽい。
やっぱり複雑なご家庭のようだ。
エミリーの言葉に、肯定も否定もしない。
「優ちゃんには優ちゃんの役割があるんだー! 計画にどうしても必要なものなんだぜぇぃ!」
「計画教えテ」
エミリーが、にこやかにすり寄っていく。
上野先生は満更でも無さそうだけど、何も言わなかった。
「砂緒は、朝食を取りに来たのかね」
「うん……お爺ちゃんは、しばらくここにいる?」
「ああ、ここにいるのも仕事だ」
「そうなんだ、わかったよ」
「計画聞きたいナー?」
エミリーは食い下がっている。
好奇心旺盛というか、そうでなければ学者なんてできないだろうけど。
「残念ながらー! キミは計画に組み込まれてない~!」
「いいじゃなイ、タイムマシンなんておもしろそウ」
「エミリー君だったかな、話せないこともあるんだよ」
「ケチ、もう色々なところに情報が漏れているんだからいいじゃなイ」
お爺ちゃんが、ちょっと苦笑いする。
そこは想定してなかったんだろう。
「あっ! 砂緒ちゃんいた!」
「え!? 優!?」
優がホテルにやってきていた。
もう9時を過ぎて、自力で戻ってきたんだろう。
「自力で戻れたんだ」
「9時を過ぎたら、ポータルでマイルームに帰れたよ」
「意味ない地下送りだなぁ」
「ゲームの中でも、閉じ込めたら拙いんだろうネ」
でも、地下施設のことがわかった、行ってみよう。
何かあるかも知れない。
「ポータルメモしてきたよ」
そこで、優は三神さんに気が付く。
ちょっと驚いたように目を丸くしていた。
「三神さん! どうしてここに!?」
「仕事でちょっとね、優はたくさん遊んできなさい」
「はい、たくさん遊びますよ」
なんか、親子っぽくない会話だなぁ。
仲はすごく良さそうだけど。
「じゃあ、行ってみようカ。お爺さん達は、まだホテルにいるみたいだシ」
「お爺さん? エミリーちゃんの?」
「ううん、わたしのお爺ちゃん」
「小島優君……」
お爺ちゃんが、複雑そうな顔をする。
でも、優には心当たりがないみたいだった。
「は、はい……」
「なんでもないわ、行ってらっしゃい」
「はい!」
「じゃあ、行ってきます」
「行ってきます」
わたしは優とパーティーを組むと、メモしてある地下ダンジョンにポータルしていった。
そこは、地下室と言うよりも、ダンジョンだった。
遠くから、モンスターのうめき声が聞こえてくる。
「夢の国の地下は都市伝説だからネ」
なんか、そんな話を聞いたことがある。
そして、装備が全部外れていた。
「装備がない……素手で戦うダンジョン?」
「きっとそうだネ」
「みんなもなるのぉ? 私は、カジノの人に全部装備を取られちゃったけど、マイルームに戻ったら、全部元通りになってたから」
装備は元に戻るらしい。
取りあえずは一安心だ。
「何があるんだろう?」
「多分だけど、生きて帰れればいいんじゃないかナ?」
そうすると、借金がチャラになる感じか。
そうすると、他に何かはないのかな?
「<ホーリーライト>」
優の手が光る。
いつもは杖が光っていたんだけど、ないから手なんだ。
部屋がたくさん繋がっている感じのダンジョンかな。
初めの部屋には何もいないけど、うめき声や動く音が聞こえてくる。
「なんかいるよ、気をつけて」
「魔法使いが3人いて良かったネ」
「そうだね、近接特化だったらこのダンジョンは厳しいよ」
ガンナーの人とかバードとか、どうしようもないかもね。
取りあえず三方向に通路がある。
「じゃあ、右手の法則で」
「行ってみよう!」
わたし達は、ダンジョン探索に乗り出した。




