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第百四十九話 研究の成果


 優がカジノで借金をして、地下ダンジョン送りになった。


 そして、翌日の朝、ふたりでログインして、ホテルに復帰する。


「おはよウ」


「エミリー、早いね」


 優は、まだ地下だろう。


 9時に解放と言っていたので、まだもう少し時間があった。


「朝食ができてるってサ」


「そうなんだ、優が帰ってきたら行こうか」


「帰ってこられるノ?」


「うん、9時に解放だって」


「じゃあ、ロビーのラウンジで待ってよウ」


 ラウンジには喫茶店があった。


 飲み物くらい出るだろう。


「じゃあ、行こうか」


 エミリーとふたりで部屋を出る。


「朝食は何?」


「ビュッフェだっテ」


「ふーん、ビュッフェなんて初めてだよ」


「取りすぎて、食べられないと恥ずかしいヨ」


 それは注意しよう。


 まぁ、ゲーム内だからお腹がいっぱいになることはないんだけど。


 そこに、向かいから近づいてくる人がいた。


 このリゾートホテルに泊まっている人が、他にいたんだ。


 軽く挨拶して別れようと思っていると、向こうから声をかけられた。


「砂緒か?」


「え……お爺ちゃん!? どうしてここに!?」


「どうしても何も、このMAPを開拓したのは私だ」


 意味がわからない。


 お爺ちゃんが、なんでゲームしてるの!?


「おお、すごいネ、さすがはスナオのお爺さン」


「いや、そういうことじゃなくて、お爺ちゃんゲームしてるの!?」


 確かに、MAPを開拓したのはすごいけど。


 そういう問題じゃない。


「上野先生と、三神君が一緒にプレイしているぞ」


 上野先生……お爺ちゃんのとなりにいる、ギターを持ってサングラスをかけた、やんちゃそうなお爺さんだろうか?


 そして、なぜか三神さん……優のお母さんがいた。


「砂緒は、元気にやっているようだな」


「う、うん、おじいちゃんも元気そうで良かったよ」


「砂緒も、特賞当てたのか?」


 『も』ってことは、お爺ちゃんも福引きで特賞を当てたんだ。


「うん、なんだか運が良くって当てちゃった」


「そうか、それは良かった」


 聞きたいことが色々とある。


 この機を逃したら駄目だ。


「お爺ちゃん、家に男の人が行かなかった?」


「男の人?」


 覚えがないように首をかしげている。


 あれ、買い取り商人さんが行ったはずだけど……。


「お父さんと、わたしの関係を聞きに来た人が居たと思うんだよ」


「ヒャッハー! それは俺だ! ロックンベイベー!」


「ひっ!?」


 上野先生が、突然、ギターをかき鳴らして叫声を上げた。


 いきなりだったから驚いてしまう。


「先生、音が迷惑ですから部屋から出てこないで下さい」


「このゲームはいい! ギターなんざ縁もゆかりもない俺が、滑るように演奏できちまう、ヒャッハー!」


 上野先生が叫び声を上げる度に、エミリーがビクッとしている。


 ちょっと怖い……。


「俺ってことは、上野先生がお父さんとわたしのことを、男の人に教えたんですか?」


「そうだぜ、有望そうな若者だったからな、和利君と娘のことを話してやったんだぜーい!」


「先生……なんてことをしてくれたんですか……」


 お母さんは、お爺ちゃんが呆けたみたいなことを言っていたけど、上野先生が話したらしい。


 そういうことだったのか。


「秘密なんて無駄無駄、麻理江ちゃんの研究も大詰めだろう? 世界をひっくり返そうぜぇぇい、いぇい、いぇえぃやぁっ!」


「大詰めだからこそ、慎重にしなければ……」


「なんの研究をしているノ?」


 エミリーが、ずけずけと聞いていく。


 こういうときのエミリーは、物怖じをしない。


「砂緒の友達かね」


「キミのことは知ってるぜぇい! エミリー・グラヴェットだろぉぉん!」


 今のところ、このホテルにはわたし達しかいないみたいだからいいけど、ずっとギターを弾いてる。


 お爺ちゃんも、やれやれみたいな顔をしていた。


「お久しぶりでス、プロフェッサー上野」


 え!?


 エミリーと上野先生は知り合いなの!?


「エミリー知ってるの?」


「昔、講義を聴いたことがあるヨ」


 世界は広いようで狭い。


 知り合いの知り合いみたいに話を聞いていくと、6人くらいで大体の人が繋がるという、コミュ障には申し訳なくなる実験だ。


 スモールワールド実験とか聞いたけど、コミュ障が混じっていたら、その実験は上手くいってなかっただろうから、本当に申し訳ない。


「なんの研究かって!? 決まってるだろぉぉぉん! 時間遡航だよ!」


 謎のパーティーの人達の話に似てる。


 あの人達は、未来視だって言ってたけど。


「時間遡行って、昔に戻ること?」


「そうなんだけド、翻訳では違うことを言っているネ、遡航だっテ」


「そこは先生の言葉遊びだよ、要するにタイムマシンさ」


「はー、どうやっテ!?」


 謎のパーティーの人達が言っていたよりも、ずっと真面目な研究っぽい。


 タイムマシンなんて、ちょっとオカルトっぽくも感じるけど。


「砂緒は驚かないのかい?」


「うん、多分そうだろうって、言ってた人達がいたから」


「だだ漏れじゃないか……」


 お爺ちゃんは、頭を抱えていた。


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