第百四十四話 乗り物解禁
名塚さんが、メイド服のお姉さんに説明を聞いている。
「こういうところなのに、バニーじゃないんだネ」
バニーガールは、ちょっと全年齢的にどうなんだろうか……。
「ここでは、どうやって遊ぶんですか?」
「お金をチップに替えて、そのチップで遊ぶことができます」
お姉さんが、何か表を出してくれた。
「レートはこうなっております」
見やすい映像だ。
最低のレートが100(100円)イヤで白チップ。
2500(2500円)イヤで緑チップ。
10000(1万円)イヤで黒チップ。
250(25万円)ルピで黄色チップ。
1000ルピ(100万円)でオレンジチップだった。
「せ、1000ルピ~!?」
しかも、それを何枚も賭けるとかあるんでしょうね。
絶対にやったら駄目なやつだ。
「普通のカジノだと、250万円でオレンジだヨ」
「はー、富豪の遊びですねー」
名塚さんは、冷静っぽい。
元々からして、ギャンブルにはまるタイプではないだろう。
エミリーも、多分大丈夫だ。
熱よりも理が勝るタイプだと思う。
でも……。
「せ、1000ルピ……」
駄目だ、優がおかしくなっている……。
「こんなのはまったら、破産までまっしぐらだよ」
「それで、チップを集めると、何がもらえるんでしょうか」
それが大事だけど、まさか、現金じゃないだろう。
現金だったら、怒られそうだ。
「はい、今月は、オレンジチップ1000枚で、☆9アイテムのはやぶさシリーズを提供しております」
「オレンジチップ1000枚~!」
ということは10億円だ。
もうおかしな世界に入っている。
「素早さ特化デ、移動速度アップ、連続攻撃、連続魔法、回避超特化の装備みたいだネ」
「10億円とかだと、現実的ではないので、目がくらむことはありませんね」
名塚さんはそう言うけど、ひとり目がくらんでいる人がいる……。
「これは、ジャックポットとかしないと無理だネ」
「ジャックポットって何!?」
「スロットマシンで、みんなが負けた分を集めているんだヨ、特別な当たりを引くと、それが全部もらえるノ」
「天文学的な確率だよ、きっと」
「それはそうでショ」
優を煽っているけど、自分は冷静という。
わたしは、ちょっとハラハラしていた。
「他には、何がもらえるんですか?」
「はい、人気のアイテムは、装備にスロットを空けるアイテムです」
「来たね、これにカードを挿すんだ」
カードは使いきりなんだろうか?
それだったら、レアリティとか厳しいと思うけど……。
「じゃあ、最低限はカジノやらないと駄目なんですねぇ」
「競売に出す人もいるでショ、安くなってから買えばいいヨ」
そうか、換金したい人もいるから、こういう人気アイテムは競売に出るだろう。
なにも、カジノをやらなくてもいいんだ。
「装備スロットは、黒チップ1枚ですが、ふたつ目のスロットを空けるには、オレンジチップが1枚必要です」
「そもそも、カードを挿すような装備がないですよ」
「でも、これは人気になりそうだネ」
他にも、未開封のカードが白チップ10枚で交換できるみたいだ。
一枚千円と考えると、これも競売で狙った物を買った方がいいだろう。
「それから、乗り物もありますし、豪華な一戸建てのマイルームもございます」
「乗り物がある!」
わたしは、思わず声を上げた。
「ということは、孤島の乗り物も解禁かナ?」
「孤島に乗り物が売ってるんでしたね」
「じゃあ、ポータルしようか」
わたし達は、孤島にポータルして村まで行った。
「これはこれは領主様、やっと乗り物が仕入れられたんですよ」
やっぱり解禁されている!
今のうちに儲けたいところだった。
「は~、結構高いですね~」
名塚さんが変な声を上げている。
でも確かに、乗り物ひとつ100ルピからだった。
「スナオ買えるでしょ? 買ってみテ」
「どれがいいかなぁ……」
わたしは、キョロキョロして周りを見てみる。
ハングライダーみたいなのとか、自転車とか、色々な乗り物があった。
「安いよ安いよ~、乗り物大セールだよ~」
「ん?」
そこに売っているものを見てみると、それは魔法のじゅうたんだった。
「魔法のじゅうたんだけ安い!」
結構ボロボロだけど、10ルピだ。
「これなら買えますね」
「プレイヤーがひとり一台は乗り物を持つ時代が来るネ」
「魔法のじゅうたんひとつください」
「あいよ……て、領主様、すでに乗り物をお持ちですね? 乗り物はひとり一台までって決まってるんですよ」
「そ、そうなの~?」
そんなルールがあったんだ。
ガチャから乗り物を引いたらどうなるんだろう?
「乗り物は、ひとりひとつみたいだよ」
「じゃあ売れないんですかね?」
「売って、無くなったらまた買えるでショ」
エミリーが、魔法のじゅうたんを買う。
そして、すぐに競売に出していた、
「20ルピにしたから、みんなで値段を統一しよウ」
「そうですね、そうしましょう」
みんなで魔法のじゅうたんを競売に出す。
わたしは、魔法のアザラシがあるので、参加できないけど。
「取引掲示板に、乗り物(魔法のじゅうたん)仕入れました! って書いておくね」
「頼むヨ」
わたしは、ささっと掲示板に書き込んでいく。
コミュ障だけど、匿名なら割と大丈夫なのがわたしだった。
「あっ! 売れタ!」
「もう!?」
「これは、大もうけかも知れないネ」
エミリーが、また魔法のじゅうたんを買おうとする。
「領主様、申し訳ありません、手続きがありまして、乗り物はお一人様、一日一台の購入なんですよ」
「そういうオチがあるのかヨ」
これは、運営に対策されてしまった感がある。
一部のプレイヤーに、大もうけさせるつもりはないんだろう。
「でも、一日10ルピが確実に儲かるのはいいですね」
「そうだね、高くても売れそうなら、高いやつを売ればいいし」
「乗り物を売る場合は、元値の倍で統一しよウ」
わたし達で競合しても意味ない。
こういう談合は必要だった。
「わたしは、高いの狙ってみようかな、でも、カジノで使うお金が無くなっちゃうし……幸運アイテムを売ってから考えようかなぁ」
「取りあえず、魔法のじゅうたんを売っておけバ? 一日一台だから、また明日考えればいいでショ」
「そうしましょう、ボクも魔法のじゅうたん買います」
そうして乗り物を競売に出した後、カジノに戻った。




