第百四十三話 テーマパーク
「キャーッ!」
「うわぁぁぁぁぁっ!」
優のかわいい悲鳴と、わたしの本気の悲鳴が聞こえる場所、それがジェットコースターだった。
長い並びを待って乗ったのはいいんだけど、そのジェットコースターが酷かった。
バーチャルなのをいいことに、線路が崩壊したり、地面の上を走ったり、土の中に潜ったり、滅茶苦茶なものだった。
これでかわいい悲鳴を上げられる優は、ちょっとただ者ではない。
「は~、面白かった~」
「ううっ……」
ジェットコースター苦手になりそう。
「これは、現実の遊園地が太刀打ちできなくなるネ」
エミリーは楽しそうだ。
まだまだやれる感を出している。
「燃えてきました! 乗り物全部制覇しますか!?」
名塚さんもノリノリだ。
わたしだけなのか……。
いや、おかしいでしょ。
「でも、さすが遊園地ですね、pvp禁止エリアとは思いませんでした」
「モンスターも出てこないから、戦うところじゃないんでショ」
レッドプレイヤーがいたら変な感じだけど、遊ぶのは自由だ。
蒼天騎士団が何か言うことじゃない。
「あれ?」
わたしのアバターのポッケに何か入っている。
「どうしたの? 砂緒ちゃん」
「鍵だ。13番だって」
「えー! なにそれ!」
ジェットコースターに乗っていたら、手に入れてしまった。
何に使うんだろう?
「このマップの攻略に必要な物かもネ」
「いや、待って、これをゲットするまで、乗り物に乗り続けないと行けないってこと?」
他にも絶叫系のマシンは、いっぱいありそうだ。
ちょっと苦手なんだけど……。
「スナオはゲットできたんだからいいじゃなイ」
「攻略要素もあるんですね! 燃えてきました!」
最悪なんじゃないだろうか。
このマップの制覇は、みんなに譲りたい。
「でも、鍵なんてどこで使うんだろう?」
「あっ、アンドレアさんからメッセージが入りました」
名塚さんが、みんなにも見えるようにプロフを出す。
すると、空中にアンドレアさんの顔が映し出された。
「カジノが見つかったぞ、そこをチェックして終わりだな」
「カジノー!」
優が喜んでいる。
四つ葉のクローバーを売りたくて悶えていたから、実装されて良かった。
これで、ストレスから解放されるね。
「カジノで喜んでちゃ駄目だぞ、子供なんだから警備だけにしておけよ」
アンドレアさんは、まともな大人のようだ。
口うるさい、おじさんキャラなのかも知れないけど。
「やっと、貯めてきた幸運アイテムを売れるね」
「やったー! やったー!」
「いつ売るのか、タイミングは需要だヨ」
優が絶望的な顔になる。
「ま、まだ駄目なのぉ……」
「も、もういいよ、売っちゃおう、わたしも売るから」
「ここまで我慢してきたんだから、最高のタイミングで売らないト」
「どこ? 最高のタイミングどこ!?」
「それがわかったら、投資のプロになれるヨ」
「エミリーは、からかっているだけだから……」
もう、気にしないで売った方がいい。
「俺は、このマップはもういい、第5階層の警備に戻るぜ」
「わかりました、こちらはお任せ下さい」
まぁ、確かに、アンドレアさんが楽しめるマップじゃないと思う。
もっと若者向けというか、子供向けというか。
家族連れなら、また違った見方もできると思うけど。
「カジノ案内しテ」
「こっちの方みたいです」
名塚さんに着いていくと、お城みたいなのが見えてくる。
まさかあそこ?
すごい広そうなんだけど……。
「あのお城がカジノみたいですね」
「リアルだと、昔のお城をカジノに流用したとか逸話があるんだけド、初めからカジノ用に造ったお城だから、ちょっと下品だネ」
荘厳なお城とか、かわいい感じのお城とかではない。
なんか、ちょっといかがわしい感じのお城だ。
「人がいっぱい集まってくるねぇ」
カジノの噂が流れているんだろう。
たくさんの人が集まってきていた。
「入ってみましょう」
中に入ってみると、やっぱりゴージャスというか、いかがわしい感じの作りだった。
内装がもう、わたしの行ったことがあるどのお店とも違う。
「プレイヤーがいっぱいですね」
「運営も、ウハウハでショ」
みんなお金を吸い取られてしまうんだろうか。
ギャンブルなんて、大元が儲かるようにできているんだから、冷静になればやりたくないんだけど……。
「何がもらえるのかが重要だよね」
「そこだヨ」
「交換できるアイテムがすごかったら、私は入り浸るかも」
「駄目だって、コツコツ貯めたのが無駄になっちゃうでしょ」
「話を聞いてみましょうか」
メイド服のNPCのお姉さんに、名塚さんが話し掛けていった。




