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第百四十一話 悪ですか?


 GMコールをした翌日。


 わたしと優と名塚さんは校長室に呼ばれていた。


 にこやかな校長先生のとなりに、40代くらいの優秀そうなおじさんがいる。


 なにこれ……パパに言い付けられちゃった感じ?


 息子がアカウント停止されて、怒ってるとか?


 エミリーの見立てだと、パパはまともな人だろうって言ってたけど……。


「昨日は、息子が大変失礼いたしました」


 謝っている。


 怒っているわけではなさそうだ。


「あの人のパパですか」


「砂緒ちゃん、あの脅迫した子のお父さんだよ」


 名塚さんと優が、小声でわたしにそう言ってくる。


 ど、どうしてわたしに言うの?


 わたしに反応しろってこと?


「いえ……こちらは、気にしていませんので……」


「不快な思いをさせてしまいました、謝罪させていただきます」


「えと、別にいいんですけど……」


 わたしはそう言うけど、名塚さんの正義の心は、簡単に許しはしないみたいだった。


「本人はどうしているんですか?」


「もうこのゲームはさせません、少し厳しく躾けようと思っています」


 そうなんだ……。


 でも、高校生くらいだよね? 今から躾けても、直らないんじゃないかな。


「厳しくするのは賛成です! 自分に自信がないから、父親の威光を借りて脅迫したりするんです!」


「葉月ちゃん、あんまり……」


「いえ、ごもっともなお話です、参考にさせて頂きます」


 名塚さんはすごいな。


 こんな大人の優秀そうな人に、自分の意見をぶつけられないよ。


「甘くするのは、本人のためにもなりません」


 名塚さんのご家庭は、どんななんだろうか。


 やっぱり厳しめだったのかな?


「本来ならば、私の方から謝りに行かなければならないところですが、大事になることは望まないでしょうから、こういう形にいたしました」


「さて、一橋さんも小島さん名塚さんも、水に流すということでよろしいですか?」


 50~60代の、ちょっと頭が寂しい校長先生だ。


 いつもにこやかに笑っていて、話も長くないし、元はガンマプラスで人事をしていた人だと聞いた事がある。


 中学生の話なんて、まともに取り合いたくないだろうに、偉いなぁ。


「はい、かまいません。い、いいよね?」


「私はかまわないよ」


「ボクも、厳しく躾けるということであれば、問題ありません」


 エミリーはいないけど、まぁ、仕方がないか。


「では、これだけではなんですので、私と樋口さんから、情報をひとつずつさしあげます」


「情報?」


「お詫びの気持ちということです」


 なんだろう? お高い情報なのかな?


 知らない方がいい情報というのもあると思うけど。


「では、まず校長である私から」


 なんだろう?


 校長先生から、ゲームの情報を聞くんだろうか?


 カジノ実装の時期とかだったら、優が喜ぶかも。


「一橋さんと小島さんのクラスで担任をしている川口先生ですが、不審な動きがあります」


「え!?」


 いきなりな話だった。


 ゲームの情報じゃない。


「エミリーちゃんの言ってた通り!?」


 そうだ、エミリーはスパイじゃないかって言ってたけど、まさか本当に!?


「ははは、もうこの情報は掴んでいましたか、さすがですね」


「校長先生、それは悪ですか?」


 名塚さんはブレない。


 悪なのか、そうではないのか、世の中はこの二種類に分かれているんだ。


「そうと決まったわけではありません」


「そうですよね……」


 解雇もされずに、担任をしているわけだし。


「ですが学園側は、すでに監視対象として注意を払っています」


 あの森の廃屋で会った3人は、どういう人なんだろう?


 それがわかれば、先生を信用できるのかどうかもわかりそうなんだけど……。


 あの時点で符丁を使っていたんだから、先生が怪しまれるのは、もうわかっていたと思う。


 それでも、なにもアクションがないんだから、きっと悪ではない。


 ……と思う。


「そして樋口さんからもひとつ」


「『WORLD IN ABYSS』の運営で、みなさんの前に現れたゲームマスターを覚えていますか?」


「はい、覚えていますけど……」


 ちょっと繊細そうな人だった。


 あまり鎧が似合っていない感じの人だ。


「悪ですか?」


 名塚さん、まだ良いも悪いも話を聞いていないのに。


 もはや、悪を望んでいるようにも聞こえてしまう。


「いえ、悪かはわかりませんが、彼、荒井君にも不審な動きが見られます」


 荒井さんっていうのか……。


 担任の先生なら注意のしようもあるけど、ゲームマスターじゃ注意できない。


 こっそり、何をされてもわかりようがなかった。


「彼は、一橋さんの担当ゲームマスターですから、呼び出せば、必ず彼が現れます、聞きたいことがあるならば、GMコールをするといいでしょう」


「わかりました……」


「一橋さんすごい、羨ましいです!」


「ど、どうしたの葉月ちゃん」


 ホントに、突然どうした。


「ボクも陰謀とかに巻き込まれてみたいです!」


「わ、わたし? わたし陰謀に巻き込まれてる?」


「巻き込まれてるじゃないですか! いいなぁ、羨ましいなぁ」


 全然嬉しくないんだけど……。


 名塚さんは、そんなことを思っていたんだ。


 ちょっとびっくりだ。


「では、午後の授業が始まってしまいます、もういいですよ」


「はい、失礼します」


 わたし達は、3人で教室に戻った。


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